手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

柳ケ瀬の一杯

柳ケ瀬の一杯

 

 21日(土)は、午前中から富士での指導。7月21日(金)には17時からロゼシアター(富士の市民会館)での公演があるため、各自工夫を凝らしています。

 富士はもう20年近く指導を続けていますが、途中でクラブが変わって、今のクローバーズの指導になったのは、5年目くらいでしょうか。初めは全く不慣れな会員さんが多かったのですが、最近では演技も手馴れて来ました。実績も出来て来て、周辺のアマチュアクラブのゲスト出演にもたびたび頼まれているようです。

 参加者も増えて、10数名いるようですが、今では午前11時から午後5時まで、みっちり指導をしています。お終いの一時間は、全員にカードマニュピレーションを教えています。80過ぎの人もいて、覚えるのは大変かと思いますが、皆さん熱心に学んでいます。いいですね。80過ぎても目的があると言うのは、心も体も健康になれます。

 と言うわけで5時まで富士で指導をして、5時40分の新幹線で名古屋へ、そこから在来線に乗って、8時少し前に岐阜着。駅に辻井さんと峯村さんが待っていました。かれこれ夜の8時です。今日のお店は駅前の「ぶらっ菜」二か月ほど前に一度行って、大変にいい酒の肴が出て来たので感動した店です。

 古民家風の造りで、この晩は二階に案内されました。私は駅からの道が寒かったので、燗酒を頼みました。肴の注文は、ブリの刺身、黒ムツの塩焼き、私はきびなごの刺身と酢味噌あえ。何しろ前回、岐阜できびなごの刺身が食べられるとは思いもせず、久々感動しました。

 鹿児島に行くと、鹿児島のマジシャン、瀬紀代功さんに何度かきびなごを食べさせていただき、その艶々とした鱗と、淡い脂の乗った新鮮な小さな身に感動しました。あの感動を又味わいたいと思いまがらも、東京ではあそこまで艶々したきびなごが食べられません。何とか食べたいと思っていたら、何と岐阜であの味が味わえたのです。恐らく錦江湾で朝とれたきびなごを空輸して岐阜に持って来たのでしょう。

 仕事を終えて、燗酒で、錦江湾のきびなごの刺身が食べられるなんて、あぁ、何て幸せ者なんでしょう。峯村さんは黒ムツ塩焼きを喜んで食べています。きびなごを勧めると、これも喜んで食べます。ハイボールを飲みながら、次々と箸が進みます。ぶりもいい具合に脂が乗っています。岐阜は背後に富山湾が控えていますので、寒ブリなどはいいものが届きます。

 「峯村さん、あなたは海のない県に育っていながら、随分魚を上手に食べますね」。と尋ねると、「海がない分憧れがあって、長野県民にとっていい魚はご馳走なんです」。なるほどなるほど、全く身を余さずきれいに骨からとって食べるさまは、手慣れたスライハンドを見る思いがします。こんなところに日ごろのハンドリングが生かされているのですね。

 思えば、辻井さんも岐阜県民ですから、海がありません。それにしては魚をよく食べます。辻井さんは「藤山さんと来た後、何度か又この店に来ていろいろ頼んだんですが、何を食べてもレベルが高いですよ。黒ムツは外側はこんがり焼けていますが、中はホクホクです。ぎりぎりのところまで焼いてあって、加減がうまいです」。

 前回頼んでうまかった、里芋を揚げたものにあんかけをした料理は、矢張り期待を外しません。厚揚げのポン酢掛けもいい出来です。魚がうまいと話も弾みます。いい加減満足して、次は柳ケ瀬入り口にあるグレイスです。

 一時期、柳ケ瀬は遊ぶ人がいなくて閑古鳥でしたが、この晩は少し復活してきたようです。お目当てのロシア女性はいませんでしたが、彼女は、今度2月4日、日本橋アゴラカフェで催す私のショウに辻井さんと一緒に来るそうです。

 何でも興味を示す女性で、手妻も習いたいと言っていましたが、さぁ、本気でしょうか。私のところには同じように弟子希望のロシア系高校生が来ていますが、こんなにロシア人手妻師が増えるのもどうなんでしょうか。日本伝統手妻などと言っておきながら、「スパシーバ」なんて言って手妻をされると、江戸の風情が薄れます。

 習うことはさておいて、日本文化を堪能していただけるなら幸いです。マジックの話などしているうちに、時刻は過ぎて、終電近くになり、一行は店を出ました。私は岐阜市内にホテルを取りました。

 翌日、22日は名古屋の指導です。今回は大阪の指導がありませんので、名古屋を終えて、夜18時30分の新幹線で東京に戻りました。大阪はかつては若いマジシャンが何人も習っていたのですが、このところのコロナの不景気で、若手が集まらなくなりました。それとは別に伝々さんや、高重翔さんも習いに来ますが、この二人はなかなかうまい具合に日にちが合いません。

 この若手指導が一日うまくまとまって、プラス翌日、奈良の某お寺さんが個人レッスンを受けたいと希望されると、関西はうまい具合に忙しくなります。そうなれば無論、あともう一泊しなければなりません。

 まぁ、泊まることは問題ないのですが、私の場合は個人指導ですので、指導の道具が増えるのが問題です。かつてはスーツケース2つ持つことも何でもなかったのですが、今では一つ持つのでいっぱいです。

 中にはシルク、ロープ、真田紐、ピラミッド、リング、カード、四つ玉、着物一式、などが入っています。これにテーブルや、蒸籠、引き出しなどが増えると、もう一人では無理です。今でも海外旅行一週間分くらいの道具です。弟子と一緒に行ければ体は楽なのですが、弟子を連れて行くほどの仕事ではありません。

 なかなか楽に稼げる道と言うものはないようです。それでも、多くの人が私のマジックを求めて下さるのは幸いです。

 

 今年は、指導するためのDVDを作ります。

1、若狭通いの水。(一切仕掛けを使わないで演じる古いやりかたのもの)

2、カードマニュピレーション。(ファンカード。5枚カード。連続出し。)

3、シルクプロダクション。

 何とか年内に三種出したいと思います。乞うご期待。

続く

 

 1月27日(金)。浅草公会堂での公演。江戸職人展をロビーで開催。14時から私の江戸手妻の公演です。大きな舞台で、手妻の数々をお楽しみいただきます。藤山大成のテーブルクロス引きなど。料金4000円。どうぞお越しください。

 2月4日、12時から。日本橋室町、ホテルマンダリン二階、アゴラカフェにて、イタリアンのお食事付きで、日曜日の昼にゆっくりショウを楽しむ企画です。藤山新太郎。藤山大成、穂積みゆき、手妻の公演。5000円、食事付き、ご予約は、アゴラカフェ6262‐6331まで。