手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

元気です

元気です

 

 ご心配かけてすみません。

私が2日間ブログを書かなかったら、書いている日よりもはるかに多くの方々が覗きに来られました。体調不良でも起こしたのかと心配されたようです。

 大丈夫です。私は元気です。

私は今、大阪、名古屋、富士の3日間の指導旅行に出ています。毎月のことですので、何も心配することなく、無事にスケジュールをこなしています。但し、大阪の指導が、まったくの個人指導だったこと。その個人指導が、当日になってキャンセルが出たことで慌ててキャンセルの手続きをしなければならず。JRや、ホテルの払い戻しなどが面倒くさくて半日費やしてブログが書けませんでした。

 その翌日は、東京から直接名古屋に向かったために、朝5時に起きて、新幹線に乗って出かけたため、これもブログが書けずに、半日が費やされました。夜は、例の辻井さんと、柳ケ瀬に行って、3年ぶりに福井料理を出す「一翔」と言う店に入りました。

 ここには、梵と言う名の銘酒があります。なかなか東京では呑めない酒です。それを冷で先ず一合注文し、セイコ蟹を頼み、細々とした中身をつまみながら梵をやると、ようやく疲れが取れて一安心しました。

 小さな蟹の中に、手足のうまみと卵のうまみ、蟹味噌のうまみが詰まっていて、それぞれ量がわずかなため、酒呑みにはちょうどいい大きさなのです。こんな有り難い一品はありません。

 更に、焼きたらこなどをつまみ、のどぐろの塩焼き、お終いはおろしそばを食べて、すっかり福井を堪能しました。本当はこの場に峯村健二さんが来る予定だったのですが、峯村さんは、翌日刈谷で開催される向井健人さんプロデュースの舞台に出なくてはならず、柳ケ瀬をパスしました。

 刈谷がどんな場所なのかは知りませんが、人の噂では不便な土地で、行こうかよそうか考え中と言う人が何人かおりました。東京の感覚で言うならどになるでしょう。秩父でしょうか。あるいは木更津でしょうか。秩父も木更津のマジックのために行くかどうかとなると考える場所ではあります。

 いづれにしても明日は、富士の指導に早朝から出かけてしまいますので、刈谷のマジックショウは見ることは出来ません。地方で開催される意欲的な催しは是非見たいのですが、残念ながら今回は見ることが出来ません。

 

 一翔を出て、いつもならグレイスに行くはずなのですが、この日は、3年前によく飲みに出かけた、肩幅ひろ子さんの店に行くことにしました。肩幅ひろ子とは、私がつけた名前で、たまたま初めて会った時に、肩パットの入った服を着ていて、妙に肩幅を強調してマジンガーゼットのような恰好をしていたので、肩幅ひろ子と名付け、そのまま3年間その名前で呼んでいました。彼女も、コロナなどでいろいろ仕事が変わり、今はまた以前の店に出ています。

 久々会って話をしましたが、元気な様子でした。ところで私は、朝5時から起きて一日活動していましたので、睡魔が襲って来ました。話半分でうとうとします。辻井さんにはもうし分けないと思います。

肩幅との話は小一時間ほどして、岐阜のホテルに戻りました。そこで、明日の段取りをすることもなく、気分がよくなって、ダウンでした。いい酒でしたので、気持ちよく眠れました。

 何のかのと贅沢なことを言って、遊んで、仲間に守られているのですから、私は幸せです。ここのホテルには温泉が湧いています。明朝、温泉に入って、それから富士に行こうと考えています。

 

 と言うわけで今は、朝の5時です。このところずっと私は5時に目が覚めます。外は真っ暗です。起きてブログを書くのはいつもの仕事です。今日もそれを書きました。

 この2日間、私を心配してブログを見に来てくれる人が連日300人ほどいます。その読者のためにも何か書かなければなりません。

 昨晩の話では、辻井さんが今の老人医療の仕事から手を引く考えのようです。人それぞれ色々と苦労があるのでしょう。「やめてどうしますか」。と尋ねると、「文筆家になろうかと思う」。と言う意外な返事が返って来ました。

 確かに辻井さんは「酔いどれ奇術師放浪記」と言う、スピリット百瀬さんの半生を描いた小説がありますが、その内容は、ごく内々の話ですので、これで生活して行くのはどうだろうかと思います。マジシャンになると言う決断と同等なくらいの細き道ではないかと思います。然し、収入と言うことを度外視して、人生の充実を求めての活動なら、それもありでしょう。残りの人生でやり残しの仕事があるなら、そのために活動できることは幸せです。

 

 と、ここまで書いて、最近、私に「四つ玉やカードの指導DVDを出してもらえませんか」。と言う話がよく来ます。数日前に、私が四つ玉の撮影をしているとブログに書いたときに、「そのDVDは販売してもらえませんか」。と言う質問がいくつも決ました。正直、そのことを今まで半信半疑で考えていました。

 なぜなら、今更私の古い手順を発表したところで、そこに価値を見出す人が何人いるのかわかりません。5人10人のためにするなら、ほとんど意味のないことです。

 然し、さっきの辻井さんの話ではないですが、残りの人生でやり残した活動に使ってみたい。今まで逃げていたスライハンドに費やしてみたいと言う人は結構いるのかも知れません。そうした人たちにとって、今の韓国勢のDVDなどはあまりにかけ離れていて、見ても面白くないのかも知れません。

 そうなら、私のような昔の手順を残したものの指導ビデオはどこか安定感があって、折り合いが取れていて、ちょうどいいのかも知れません。

 紅白の玉を合わせて6つしか使わず、シェル一つだけ、他にはシルク一枚。至ってシンプルな手順ですが、これが案外いいのかも知れません。

 

 そう考えたなら、物は試しに四つ玉のDVDを出してみようと考えています。もし皆さんの中で四つ玉を基礎からやってみたい方がいらっしゃったなら、東京イリュージョンのネットに希望を書いてご連絡ください。お送りします。

続く