手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

どうすりゃ勝てる

 ごめんなさい、朝からパソコンの具合が悪く、ブログが書けませんでした。もう17時30分になりますが、200人くらいの仲間が覗きに来ています。お待たせしました。今日のブログをお届けします。

 

どうすりゃ勝てる

 

 ウクライナ軍は健闘している。ロシア軍は押され続けている。こう聞くとウクライナ侵攻は、一方的なロシアの負け。と考えがちですが、そうでしょうか。

 そもそも、この侵攻に対して、ウクライナはどうしたら勝てるのでしょうか。いや、どうしたら、勝ったことになるのでしょうか。戦車を何十台破壊しても、ロシアが次々に新規の戦車を投入すれば、ロシアの負けにはなりません。ロシアの兵士も、1万人死のうが2万人死のうが、次々新規に兵士を投入すれば負けたことにはなりません。

 ロシアが言う、東側のロシア人の多い地域(ルガンスク、ドネツクなど)と、南のクリミア半島がロシア領だするなら、そこまでロシア兵を追い込めば、ウクライナは今回の戦争に勝ったことになるのでしょうか。仮に、その地域までロシア兵を追い込んだとして、そのまま放置しておけば、またロシア兵はウクライナ領に攻め込んでこないでしょうか。

 そうであるなら、本来のウクライナ領を取り戻すために、東側も、クリミア半島ウクライナ軍が攻め込んで、すべて占領したらいい。と威勢のいいことを言えば、確かにロシア軍全てをウクライナ領から追い出して、勝利したことになります。これなら9年前のクリミア半島占領のリベンジまでも果たして万々歳になります。

 でも、それをウクライナが実践するとなると、ロシアは全く面目が丸つぶれになり、徹底的にウクライナと戦う結果になるでしょう。そうなるとほぼ全面戦争になります。一年、乃至は二年、苛烈な戦争が続く可能性があります。さて国土をぼろぼろにされたウクライナと、世界から経済封鎖されているロシアとが、この先二年戦う余力があるでしょうか。

 

 ロシアにすれば、既に占領している、クリミア半島、ルガンスク、ドネツク、の他に、マリウポリ、ハリコフくらいを手に入れたのなら、和解にも応じる可能性はあるでしょう。然し、ウクライナは全く応じる気配はありません。彼らが目指しているのはロシア兵をすべてウクライナ領から追い出すことです。ロシアの思惑と、ウクライナの思惑を考えると、全く接点が見いだせません。

 

 ウクライナ侵攻当初から、この戦いは、かつての1939年のソ連によるフィンランド侵攻の二の舞だと言う軍事研究家がいます。1939年、独ソ不可侵条約を結んで、ドイツは、ポーランドを侵攻、それに呼応するかのように、ソ連も東側からポーランドを侵攻、結果ポーランドはドイツとソ連に攻め込まれ、二分割されて、地図から消滅してしまいました。

 濡れ手で粟の大成功を収めたソ連は、独ソ不可侵条約の威力を過信して、次にバルト三国を侵攻し、更には、フィンランド侵攻を始めます。大兵力で攻め込んだソ連は、たちまちフィンランドが降伏するものと考えていたようですが、フィンランドは徹底抗戦をします。

 フィンランド軍は、必ずしも優れた兵器を持っていたわけではありませんが、国土を守るため、国民皆兵制度を敷き、徹底的にソ連と戦います。フィンランド軍は自国の土地を生かし、ゲリラ戦法に出て、ソ連兵を狙撃して撃退します。

 結果としてフィンランド軍はソ連に大勝利します。そしてこの戦いは、翌年の1941年にも再度ソ連に攻め込まれ、フィンランドは多くの犠牲を出しつつも、ソ連軍を撃退し勝利します。

 80年前のフィンランドの置かれた状況と、この度のウクライナの状況が良く似ています。そして戦い方もまた酷似しています。つまりソ連(ロシア)は、80年経って全く同じことを繰り返し、同じ戦法で敗れているのです。このロシアの失態を見て、フィンランドとスゥエーデンがNATOの加盟を申し込んできたと言うのは、全く納得の行くことです。あまりのロシアのお粗末ぶりに、もうロシアを気にする理由はないと言うことなのでしょう。

 プーチンさんは、80年前のスターリンとまったく同じ失敗を繰り返しているのです。二人に共通している考え方は隣国を軽く考えていることと、自国を過信していることです。

 特にスターリンの失敗は、1930年代の計画経済の失敗から、多くの軍人、役人を粛正して、銃殺したことです。なぜそんなことをしたのかは知りませんが、自分自身の政治の失敗を部下にかぶせたのです。その結果有能な軍人、役人の多くを殺害しました。その挙句、フィンランド侵攻をした時に、ロシア国内の粛清をし過ぎて、実際に現場で指揮のできる下士官があまりに足らな過ぎたのです。結果として戦場は大混乱になりました。

 この辺り、今回のウクライナ侵攻とよく似ています。次々と高級将校が戦場で命を落としている現状は、80年前のスターリンの粛清の影響に似ています。プーチンさんの締め付けがきつすぎて、周囲に有能な軍人、役人がいなくなったのではないかと思います。

 もう見たところ、プーチンさんは、国内も海外からも四面楚歌の状況です。このまま行けばロシア国内でクーデターが起きる可能性もあります。年内いっぱいまでプーチンさんの寿命が持つかどうか。案外ウクライナ侵攻の幕引きはプーチンさんの失脚で終演になるのかも知れません。

続く