手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

コロナの時代にどう生きる

コロナの時代にどう生きる

 

 天一の話が長くなりましたが、ここでインターバルを取りましょう。

 平成3年も2月を迎え、コロナは一向に収まりません。このままでは緊急事態宣言を1か月延ばす可能性が強まっています。多くの人はそれを致し方ないと受け止めているようですが、そうなると、より一層多くの企業、自営業が倒産します。

 つい2年前までは、中国や、韓国の観光客が押し掛けて来て、連日ごった返していた、東京の浅草や、大阪の道頓堀も、京都のお寺さんも、街は閑散としています。

 私を支援してくださっている、大阪のお好み焼きチェーンの千房さんは、関西地域に約70店のチェーン店があり、多くは大阪の北と南に集中しています。然しこれが今は苦境に立たされています。

 浅草の土産店に森銀と言う銀細工師のお店があります。銀でできた鈴や、名札や、干支を切り抜いて携帯電話のストラップにしたりして、高級な細工物を販売しています。平年の正月なら、一店で一日100万円の売り上げがあるそうです。それが観光客が激減し、売り上げが十分の一になっています。私の手妻の道具の銀金具を作ってくれる飾り職人のお店なのですが、今は全く仕事にならないそうです。

 同様に箱長さんです。箱長さんは桐箱に、木目込みで描いた柄をあしらったデザインで有名なお店ですが、私の手妻の道具をいくつも作っていただいています。ここも売り上げが十分の一だそうです。こうした職人のお店は、仮に倒産してしまうと、景気が戻ったからと言って簡単には復活しません。人が持っていた技術が途絶えてしまうのです。頼めばいつでも仕事をしてくれていた人たちが、もう二度と戻ってこない貴重な人たちなのです。

 かつて、観光立国などと言って、たくさんの観光客を呼び込み、賑わっていた観光地が今はどこも壊滅的な打撃を受けています。昨日(1月31日)は、柴又の料亭、川甚さんが店を閉めました。柴又で川甚と言えば大きな川魚料理屋さんですが、コロナの影響で閉店に至りました。お店とともに百年以上の歴史が消えてしまうことが残念です。

 

 草津温泉のお湯がコロナの感染防止に役立つと言う話は朗報です。いいですね。ぜひ草津の湯で手を洗い、食器を洗って、感染防止に役立てましょう。ボトルに詰めて販売しては如何でしょう。他の温泉地も、成分を調べて見てはどうでしょう。

 効果があれば、湯の花として売られている、硫黄の粉末なども、これまでは水虫の治療薬として使われていましたが、コロナに活かせるとなれば大きなチャンスが生まれます。日常の入浴や、洗顔、手洗いや食器洗いに役立つかもしれません。

 

 こうした状況下で、芸能はどのように生きて行ったらよいのでしょうか。アメリカは、マジックキャッスルも、ラスベガスのショウも、ニューヨークの劇場も、軒並み閉鎖です。日本の数十倍の感染者がいるアメリカでは、未だショウビジネスは混とんとしています。マジシャンは一体どうやって生きているのでしょうか。

 これ以上コロナが長引けば、マジックキャッスルも倒産しかねません。50年続いた歴史が、コロナであっけなく消えてしまうのは残念です。長らくキャッスルに縁があって、出演していたものとしては心配です。然し、私の力ではどうすることもできません。ただ、ただ存続することを願うばかりです。

 

 アメリカの心配をするよりも、日本国内をどうにかしなければいけません。現実に仕事が来ない、見せる場がない状況で、マジシャンはどう生きて行ったらいいのでしょうか。私の答えは、見せる場を作ることです。どんな場所でもいいから、必ず毎月どこかでショウをすることです。

 私自身が人形町玉ひでさんで月に一回ショウを開催していることはその例です。玉ひでのショウで私のチームや家族が生きて行けるものではありません。収入よりも続けて行くことが大切です。常に演じていて、どこかで見せていないと、お客さまとも気持ちが離れてしまいますし、自身の腕が落ちてしまいます。

 「そうは言っても、世間では人を集めてはいけないとか、密にならないようにしなければいけないなどと言われて、ショウができにくい状況にあるでしょう」。その通りです。それでも見せる場を作ることです。

 ショウが出来ないからと言って、ネットで演技をしていても、それは実演の効果は生みません。種明かしなどはもってのほかです。レクチュアー指導も小銭稼ぎにはいいかもしれませんが、あまり意味はありません。そんなことをしていては、実演家としての能力がますます遠のくばかりです。

 どんな場所でも結構ですから、毎月一日でも多くマジックが見せられる場所を確保することです。知人の経営するレストランでも、バーでも、見せられる場があるなら無料でもいいのです。とにかく毎月確実にマジックを演じていなければいけません。

 場合によっては野外でもいいのです。人が見てくれる、寄ってくる、そんな場があるなら恥ずかしがらずにどんどん見せて行くことです。やる場がないのではなく、あなたがやろうとしていないだけです。人はマジックが見たいのです。

 そしてなるべく仲間を作って、一緒に出られるようにすることです。演技が終わったなら話をしたり、マジックを見せ合う時間を作ることです。自分一人で落ち込んでいても何も生まれません。他の仕事をしたらマジシャンとしての上達はありません。

 こんな状況が長く続くものではありません。必ず時期が来れば芸能は復活します。その時のために、自分のマジックは休まず演じ続けておかなければいけません。

 

 よく、いつまでコロナが続くのか、と尋ねられますが、私は医師でもなければ予言者でもないので、いつまでコロナが続くのかはわかりませんが、知りあいの優秀な医師によると、ワクチンが入って来る二月の末には今の過熱した報道が一気に収まるだろうと言っています。そして、3月になると、陽気が温かくなりますので自然にコロナは収まると思われます。そして徐々にワクチンの効果が出て来て、収束して行くと言っています。

 但し、変異型のコロナが出て、それが今のワクチンでは効かないとなると、もう少し長引くかもしれません。と言うことでした。

 いずれにしましても、この一か月がピークではないかと思います。何をやってもうまく行かないと言う悪循環な立場にいるときに、それが好循環になるように立ち回らなければ成功は来ません。誰かがそうしてくれるのではなくて、自分自らが好循環を作り出そうと活動しなければいけません。

 当たりを見渡しているだけではだめです。まず自分が立ち上がることが第一です。そして逃げずに、正面から難問にぶつかって行かなければいけません。嘆かず、閉じこもらず、こんな時こそ仲間を作って、ショウ活動を続けることです。

 玉ひでは毎日、申込者が一人、二人とメールや電話があります。有難いと思います。これは私にとって心の支えです。決してマジックに需要がないのではありません。人はみんなマジックを求めているのですから。

続く