手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

天皇ご即位を見ながら

 126代の天皇陛下のご即位をテレビで見ながら、日本と言う国は、とんでもなく古い伝統を持ちつつ、ハイテク産業で成功している稀有な国であることに誇りを感じました。ご即位の翌日、滞在中の各国要人に対して、野村萬斎さんと、市川海老蔵さんがイベントを企画されたそうです。当然狂言と歌舞伎をなさったのでしょう。

 こんな時こそ、日本伝統の手妻、蝶と水芸を見ていただいたらきっと喜んでいただけると思うのですが、周囲から、「歌舞伎もいいけど、たまには手妻にしようよ」。という声は上がりません。恐らく私の代ではそうした晴れがましい催しに手妻が呼ばれることはないでしょう。

 まず何と言っても、手妻師の数が少なすぎます。なんとなく、着物を着て、傘を出す人はいるのですが、そうした演技をされる人が、一つも伝統ある手妻を演じていません。マジックショップで道具を買って来て、道具に付随した説明書を読んだだけで手妻(和妻)を理解したと勘違いされて、ステージに出てしまいます。どこにも継承された演技がありません。無論そうした手妻があってもいいのです。いろいろな手妻があるから発展の余地があるのですから。

 しかし、そうした中にも、誰かきっちりとした伝統を受け継いで、手妻を演じる人が出ないと、伝承は消えてしまいます。今ようやく弟子の大樹が育ってきて、多少手妻が注目されるようになったばかりです。これから先、もっともっと本気になって手妻をする人が何十人も出てこない限り、今以上、手妻が大きくなることはありません。それは私がどうにかすることではなく、次世代の人たちのすることなのでしょう。

 

 ところで、あさってからまた関西へ指導に出かけます。26日が富士。27日が名古屋 UGM。28日が大阪です。指導内容は手妻だけではなく、カードマニュピレーションや、ロープ、シルク、ゾンビボールなど、いろいろです。参加ご希望があれば東京イリュージョンまでご連絡ください。

info@tokyoillsion.co.jp 初歩からご指導いたします。

 

  コンベンションなどで、思い付きで買ったマジックの種ではほとんど手順を作るためには役に立ちません。そのことはアマチュアの押し入れに山ほどたまった使われないマジックを見れば明らかでしょう。まず初めに基礎の技法を学んで、さらに手順を学び、その上で演技の肉付けをしてゆかなければ手順と言うものはできません。

 思い付きや、売り物の種仕掛けを五月雨式に集めてもどうにもならないのです。だめはいくら繰り返してもダメです。負のスパイラルを自らが断ち切って、初心に帰って学びなおすことです。それが結果として時間と費用を無駄なく、最短距離で上達することになります。まずきっちり学ぶ姿勢を持つことが大切です。結果それが成功の近道なのですから。