手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

座敷で手妻

 今、もう、来年のスケジュールを決めています。今年の7月8月と公演した、神田明神の劇場公演がその後中断したままになっています。これを来年2月から再開します。毎月一回ないし、二回手妻のショウをいたします。日本人は勿論、海外のお客様が来てくださることを期待しています。

 それと、人形町の鳥鍋屋さん、玉ひで(ここは日本で初めて親子丼を考案した店で、毎日昼には1時間待ちの大行列ができます。しかし、鳥鍋がメインで、もう200年以上も続いている老舗です)で、毎月一回、手妻の公演をします。ここは30人程度のお座敷ですので、そう多くの人は集められません。ただし、この距離で見る手妻はいいです。昔の座敷遊びをそっくり再現するようなもので、限られた数の観客を前に、じっくり細部を表現できますので、見に来たお客様は儲かった気持ちになるでしょう。これぞ江戸の遊びです。

 玉ひで名物の親子丼をつけて、5千円程度の料金を考えています。詳細決まり次第、またご案内をします。この二つの催しで、既に年間、24日(場合によっては36日)公演をすることになります。

 更に、マジックセッションを東京と大阪で開催します。東京は5月8日、座高円寺で致します。毎回若手を中心とした意欲的なショウを作り上げるよう、今メンバーを選定中です。

 秋には私の自主公演をいたします。今回はストーリー仕立てで和、洋、両方のマジックショウを考えています。

 

 こうした活動のほかに、天一祭や、九州奇術連合会と、定例の催しに出演し、さらには会社のパーティーや、講演会、に出演します。ここが実は私の収入源です。それにプラスして、東京のアトリエでの指導が毎月8日ほどありますので、もうすでに140日くらいは日程が埋まっています。私と家族が生きて行くことの不安はありませんが、毎年毎年こんなことを繰り返しているうちに1年が終わります。これで満足していては前進がありません。その都度何か工夫をして、変化をつけようと苦心しています。

 この数日は、傘と扇子の手順つくりに苦心しています。扇子は、ただばらばらと出現させて、それを捨てかごにどんどん捨ててゆくのでは少しも面白みがありません。扇子の持つ特性をもっともっと引き出さなければいけません。優雅で美しく、しかも不思議な手順を作り上げたいのです。そう考えると簡単では張りません。

 そのさなかに、ピラミッドを工夫しなおして、手妻に取り入れたら面白いのではないかと思い付き、昨日から頭の中で思考が巡っています。ピラミッドは昔のマジシャンがタキシードを着て演じていましたので、外国のマジックだと思っている人がありますが、あれは欧米にはありません。高木重朗さんが考案したもので、純粋な日本のマジックです。単純なプロダクションマジックではありますが、独特のテクニックを要するもので、隠している部分がほとんどなく、珍しいくらいにクリアーな道具です。

 私は20代の頃、海外で公演するときに和服でピラミッドを演じていました。私のピラミッドは星形(通常は四角錐なのですが、私は広げた時の見た目を重視して星形、五角錐を考えました)で、特殊な格好をしています。これはとても好評でした。しかし銀色のピラミッドの板は、正直なところ和服には不似合いです。そのため国内では和服で使うことはありませんでした。しかし色を変えたなら面白いかもしれないと思い直し。もう一度あれを作ってみようかと考えています。

 

 さて今日は朝に鼓の稽古、午後に日本舞踊に行き、午前中は新作のアイディアをまとめてみようと思います、明日は富士、明後日は名古屋、明々後日は大阪です。いつものことながら、指導旅行の前日は徹夜になります。夜には、明日から3日間の指導旅行の荷物をまとめ、指導のための稽古もしなければなりません。それでも私のしたかった活動なのですから、私は満足です。