昨日は大阪で指導をしました。
大阪の生徒さんは一人ずつ習うものが違います。
それぞれ5分程度の演技を起承転結、細かく精査してみてゆきます。
ジュンマキさんは小刀を使って紐切りと、連理の曲を稽古しました。
うまくできれば古風な演技が完成します。
まほうの愛華さんは、若狭通いの水。古い口上を練習しました。
口上は語り口が難しく、簡単にはできません。うまくできたなら、愛華さんの得意芸になるでしょう。
土居崇男君は金輪の曲。これは古い日本のリングの手順で、難曲中の難曲です。
でもやりこんでゆくうちにはいいものになるでしょう。
キタノ大地さんはピラミッド。これだけは洋服の手順です。ピラミッドは日本の作品です。考案者は高木重朗先生です。 こんないい作品をなぜ今の若い人はやらないのでしょうか。もったいない話です。
私は子供のころから舞台に立っていて、古いマジシャンと親しくして頂いたお陰で、今となっては誰もやらなくなってしまったようなマジックや、手妻を習い覚えています。これが今に至るまで私の財産となっています。ところが、若い人たちはこうした型物をあまりやりたがりません。単純に古いと言ってかたずけてしまいます。中には、何かで種だけ見知っていて、半ば軽蔑して、試そうともしないような人もあります。そんなマジックでも丁寧に指導すると、習う人は目からうろこの落ちたような顔をして喜びます。そうした瞬間、私は、「あぁ、私はこれを伝えるために存在しているんだなぁ」と実感します。
さて昨晩東京に戻ってきて、今日は弟子(前田将太)の稽古です。将太は、大樹と同じく私の後継者となる手妻師に仕上げなければなりませんので、少し細かく、奥まで指導します。まじめな男ですから、あまり心配もしていませんが、しっかり覚えて、うまく育つとよいと思います。
夕方にはアマチュアさんが2組習いに来ます。その間に、私の傘出しの手順の仕掛けを直しましたので、一度自分の稽古をしようと考えています。結局今日一日は稽古ばかりです。でもこうして毎日手妻、マジックに携われることは幸せです。子供の頃に、こんな風に生きて行きたいと思っていたことを今実践できているのですから、私は幸せ者の人生を体験しているわけです。