手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

台風下の峯ゼミ

台風下の峯ゼミ

 

 昨日(13日)午後13時から、峯ゼミがありました。峯村氏は、早朝に名古屋を立って、東京にやって来ましたが、幸い新幹線の遅延はなかったようです。然し、私が田端に着いたときには、雨は降り続いており、「これが、帰りに大雨にならなければよいが」。と不安になりました。

 昨日の参加者は8名。日本で最もマジックに熱心な8人です。私は、先月仕事で峯ゼミのレッスンを休んだのですが、休むと覿面に、内容が複雑化して、理解が追い付きません。昨日、前半の指導は、2か月前から続いている、ウォンドのカラーチェンジと両手で6本を持つまでの手順でした。

 ハンドリングは見ていると、過去に習った手順の応用が殆どでした。それでも、記憶を戻して、目に慣れて来るだけでも1時間かかりました。相変わらず理詰めの手順の構成です。細かく細かく不思議を重ねて行きます。とにかく2時間、みっちりのレッスンでした。ここで10分の休憩。

 休憩の後、今度は、ハイマッキー(マジックペン)を使ってのウォンド手順。何か月か前にこの手順をやっています。今回は、それに特殊ギミックが付きました。それまでは全くギミックなど使わない、素材だけの手順でしたが、ここからは仕掛けが使われます。

 そうすると、不思議さは大きく加速します。このギミックは一般販売されておらず、これは峯ゼミ会員用の秘密のトリックと言うことです。いつも通り、仕掛けは細部まで工夫されていて、どうしたら手順が自然に行えるか、徹底的に工夫がされています。但し、自然にできると言うことは、決して優しいと言うことではありません。かなり技術が介入します。

 毎回のことですが、峯村氏の演技は細部に至るまで考えつくされています。目的に対して、どうしたらそれが達成できるか、逆算して行きます。演技を考えて行くうちに、何か所か、矛盾があったり、繋がらない部分が出て来ます。そうしたときにどうしたらいいか。

 そこで氏の個性的な解決方法がいくつも出て来ます。その解決法こそ、氏のマジックの捉え方が凝縮されています。手順を作る上で、不可能が出てくると、ついつい投げ出して、諦めてしまうことでも、氏は真面目に解決に取り組みます。こうした点は是非多くの人に知ってもらいたいところです。とにかく参加者は大納得です。

 然し、前半がウォンド手順で、後半が全く別のハイマッキー手順で、それぞれが演じると2分半くらいかかる手順ですから、それを両方一度に学ぶには内容が重たすぎます。できればここは二回に分けて指導してもよかったのではないかと思います。

 とにかく、4時40分までのみっちりのレッスンでした。レッスンを終えて外に出ると、矢張り雨が続いていました。心配するほどの大雨ではなかったのが幸いでした。帰り際に峯村氏と喫茶。

 今回の指導は内容が濃く、6回の指導では教えきれないと言うことで、9月で終了のところを、一回増やして、10月まで行うそうです。今回の内容は、氏のメイン手順のスプーンの手順の原型ともいうべき内容で、彼がマジックをどうとらえているかが良くわかる手順です。

 そうした意味では峯村ファンにとっては、十分価値ある内容と言えます。私はもっともっと峯村氏の考え方を理解する人たちが増えたなら、日本のマジック界は大きな発展をすると思いますが、費用の面などで参加しにくい点もあるらしく、一年以上続いた峯ゼミも、今一つ大きく発展しません。

 

 来月には、関西地域で集中合宿をすることで、マジックをまとめて習おうと言う企画を立てました。場所は神戸です。マジックキッチンと言う喫茶店で、店と宿泊設備があって、そこに泊まり込んで二泊三日の集中レッスンをします。

 どうも峯ゼミの大阪レッスンは、毎月、人の集まりにばらつきがあるらしく、なかなか長いスパンでの指導が難しいようなので、合宿形式に切り替えて見たそうです。参加費は55000円。宿泊食事付きです。内容はシルク手順。

 東京でも以前シルクの手順が指導されましたが、個性的で、いい内容です。どこまで2日間で指導されるのかはわかりませんが、じっくり時間をかけて、個人の疑問を解きほぐしながら指導するには、合宿はいい方法です。

 私の猿ヶ京合宿も、同様で、こうした指導を経験すると、一つの手順を確実にものにすることができます。昔の剣術の稽古が山に籠って指導をしたように、下界のわずらわしさから離れて、一つの芸ごとに手中すると言うのが、現代では得難い体験になります。

  もし興味の人がありましたら、神戸のマジックキッチンにお問い合わせください。Tel 090-3714-7670。Mail mnezemi magic @ gmail.com

 

 山手線に乗って、自宅に戻るさ中、雨は小降りになり、高円寺に着いたときにはほとんど止んでいました。聞くところによると、台風は、大きく関東を剃れて、関西方向に進んでいると言うことです。東京の人にとっては一安心ですが、同時に関西の人々には新たな不安です。

 毎年毎年、台風のたびごとに、看板が飛んだ、屋根がはがれた、育てていた果物が落ちてしまった。水が床上まで上がって来た。裏の山が崩れて、家が土砂に埋まった。とニュースになります。少々のことは致し方ないとしても、何とか、一人の犠牲者も出ないようになるにはどうしたらいいでしょうか。

 日本ほど発展した国が、毎年の台風で何人も犠牲者が出るのは、何とも情けないことです。と、それを言ったら、一昨日、ハワイの山火事で90人を超える人が一晩で亡くなっています。アメリカほどの先進国が災害で一度に90人も亡くなるなんて信じられません。山火事は島全体が乾燥していたことが原因だそうです。方や大量の雨、方や地球の裏側では、日照りで乾燥による大火です。それも島全体を覆うような山火事です。ものは中庸に行くようにはならないのでしょうか。亡くなられた方々にはお悔やみ申し上げます。

続く