マギーさん、ボナさん
昨日は久々マギー司郎さんとボナ植木さんと私の三人で呑み会をしました。三人は定期的に会って、呑んでいるのですが、実は、三人が揃ったのは一年振りのことです。と言うのも昨年はなかなか三人のスケジュールが合わず、私とマギーさんとは何度か呑む機会がありましたが、三人揃ったことはなかったのです。
場所は、中野の料理屋、夕方5時から呑み始めました。ところが、私は間際までアトリエでビデオの撮影をしていまして、和服を着たまま撮影をしていて、最後の映像を撮り終えたのが4時45分でした。
えらいことです。もう着物を着たまま行こうと思い、そのままコートを羽織って、外に出て、タクシーを止めて、中野に直行しました。すると、マギーさんもボナさんも几帳面な性格で、時間前に料理屋に来ていました。
多分2~3分の遅刻だったと思いますが、ボナさんが私の携帯へ電話をしたようです。ところが、私はあわてて飛び出したため、携帯も小銭入れも忘れて来てしまいました。私の携帯に弟子の朗磨が出て、「もう出ています」。と言ったそうで、「やけに声が若いな」。と思ったそうです。そこへ私が到着した次第でした。
無事酒盛りが始まりましたが、当初は不良中年の集まりだったものが、私が70歳になったことで、全員70代になってしまい、もう中年ではありません。不良老人の集会になってしまいました。共に50年以上の付き合いで、同じマジシャンとしてずっと活動を続けて来ました。こんな仲間はそうそういるものではありません。
しかもマギーさんは78歳になりました。恐らく日本の現役マジシャンの最高齢ではないかと思います。幸せなことです。78歳になっても現役でマジックが出来るのですから、いい人生です。
ボナさんも相棒(パルト小石さん)を亡くしたのが3年前です。それから一人で活動するようになり、ようやく一人の舞台活動が軌道に乗ったようです。「ピン芸人として芸歴3年目の新人です」。と言っていましたが、度々私の主宰する会にも出て頂いています。舞台は安定していて、独特の品と知性があって、いい舞台です。
ボナさんが一人になって気づいたのですが、芸がどことなくかつての伊藤一葉さんに似ています。寄席芸人風の臭い喋りの人が多かった昭和40年代にあって、控えめで、知性があって、品があって、あの一葉さんの存在は独特でした。
ボナさんの舞台にはその一葉さんの独自の世界に似たものを感じます。ひょっとすると、ピンの芸として、またもう一度花を咲かせるのかも知れません。
いろいろ話をしていると、マギーさんが、「どこか小さなライブハウスでもいいから、三人で会をやろうよ」。と言い出しました。およそリサイタルだの独演会だのとは無縁だったマギーさんが、三人の会を言い出すとは思いませんでした。「もう50年以上もの仲間なんだし、このまま終わってしまうのは勿体ないよ。何か定期的にどこかでショウをやろうよ」。
するとボナさんも、「いいね、やろうやろう、どこかライブハウスを探すよ」。と大乗り気になりました。そこで、私が、「二人がその気なら、ちゃんとした劇場を抑えるよ。いくつかの劇場に話をして見るよ」。と言うと話はだんだん大きくなりまして、全国ツアーのような話になって行きました。いいですねぇ、いくつになっても舞台に憧れて、一緒に活動して行く楽しさを語って夢が広がって行きます。
マギーさんが、「いいよ、みんながやるならどんなところにも行くよ。でも俺はせいぜい15分までしかできないからね。ボナさんはどう?」。「俺は20分はやるよ」。「え?、20分まで、ショウは全部でどれくらいやらないといけないの?、90分。それじゃああとは新太郎さんにやってもらわなきゃだめだね」。
「マギーさんいい加減にしてよ、マギーさんとボナさんで35分しかやらないで、あと一時間私がやるんじゃぁ、三人会じゃないよ。そこは対談したり、昔やった演技を出して来たりしてもっと出番を作ろうよ」。
「そうだね、いいよ、でもねぇ、俺は長くやらない方がいいんだ。俺はネタも少ないから」。「分かってるよ、あなたがネタ数がないことは50年前からよく知っているよ。それでも色々やらないと三人会にはならないよ。もし時間が足らなかったら、若いマジシャンを足して、若手を引っ張って上げようよ」。
マギー「誰かいい人いるかなぁ」。ボナ「SORAなんかいいよ。彼はイギリスのゴッドタレントで優勝しているよ」。藤山「いいよね彼は、私の会に何度も出演してもらっっているよ」。マギー「そうなんだ、そういう人に出てもらうのもいいよね」。
藤山「若手で有能な人はたくさんいるよ。声をかけえればみんな喜んで出るよ」。マギー「何かだんだん話が大きくなってきたねぇ」。ボナ「マジックコンベンションみたいになって来たよね」。マギー「奇術協会に対抗して大きくやろうか」。
藤山「いやいや、ここは協会と争っても意味がないよ。今の時代に協会の中のマジヤンだけを見ていては何もできない。人材は広く探さないといけないよ」。マギ「そうだね、ケンちゃん(ケン正木)も苦労しているものなぁ」。ボナ「あそこで会長していたら体が参っちゃうよ。俺は早く辞めてよかったよ」。
藤山「話を戻して、飽くまで三人の会に若手のゲストを何本か入れる程度の催しにしないと本来の目的が達成出来ないよ」。ボナ「やりましょう。いくつか場所を探してみるよ。マギー「何でも協力するよ」。
と言うわけで、久々建設的な意見が出て、呑み会を終えました。帰り道は随分寒くて、もう一か所寄ろうと言う話は出ませんでした。でもみんな明るい顔をして、それぞれ別れて行きました。
続く