夢の競演 スライハンド編
先日、指導の後、福井で頂いた日本酒、梵を呑みながら、鰹のたたきで一杯やりつつ、仲間とマジックの話をしました。銀座で「てじなっくる」を経営している、早稲田康平さん。サラリーマンをしつつ、ステージとクロースアップマジックをしているザッキーさんの3人。共に熱烈なマジックマニアです。
その3人がそれぞれ、古今東西の優れたマジシャン、9人を選んで、野球チームを作り、同時にその9人が順にマジックを見せてくれたらどんなショウになるかを夢想して、選抜してもらいました。マジシャンは現代も過去も問いません。
この企画は、かつてクラシックの名曲名盤を書いた宇野功芳先生が本の中で、歴史上の名指揮者で野球チームを組んだらどうなるか。と言う企画で20年以上昔に書いており、そのアイディアを拝借しました。
藤山「では、自分の思い思いの人を9人上げてください。別段名人でなくてもいいんですよ。自分が影響を受けた人でも、好きな人でもいいです」。
ザッキー「9人と言うのが難しいですね。名前を上げたい人はいくらでも出て来ますよ」。
早稲田「順番は関係ないんですか?」。
藤「一応野球のルールで行きましょう。やはり最高の打者は3番、4番でしょう。ショウの観点で言うなら9番に大物を持って来る必要があります。これなら最強だ、言うチームを考えて下さい」。
ザ「このショウには休憩は入るんですか?」。
藤「入れましょう。5番が済んだら休憩を入れます」。
早「となると5番の比重は大きいですね」。
ザ「一部トリですからね。いや、なんだか決める前からワクワクしますね」。
早「藤山先生は一番は誰を押しますか?」。
藤「1番は、陽気で、軽やかな芸がいいですね。そうなるとジョニーハートかな」。
早「出た、ジョニーハート、いいですねぇ、あのインコ出しの巧さと軽妙な雰囲気は他では見られませんよね」。
藤「でしょ。ザッキーさんはどう?」。
ザ「先ず相手チームをガツンと脅かす意味でチャニング・ポロックは如何でしょう」。
藤「いきなり最強を当てましたね。こりゃ凄い、相手は驚くよ。早稲田さんはどう?」。
早「ここは渋くて巧さの光るジェームス・ディメールを入れたいですね」。
藤「玄人好みだね、確かに巧いし、1番で彼を出したらその効果は大きいね。2番は?」。
早「手堅いところで、ジョナサン・ニールを入れたいですねぇ。あの人の巧さは忘れられません」。
藤「君はいい選択眼を持っているよね。ジョナサン・ニールはいいなぁ。ザッキーさんは?」。
ザ「渋くて手堅い人と言うなら、サルバノでしょうか」。
藤「これも凄い、君ね、ポロックの後にサルバノなんて、まさに夢の共演だよね」。
早「先生は誰を2番にもって行きます?」。
藤「トムソー二かな」。
早「よくトムソー二が出ましたね。いやいいなぁ」。
藤「さぁ、3番、4番、5番は最強路線だから、よほど強い人が欲しいよ」。
早「僕なら、3番カーディーニ、4番島田、5番フレッド・カㇷ゚スですね」。
藤「島田さんを選ぶところがいいね。いずれも名人揃いだよね。ザッキーさんは?」。
ザ「僕は、3番リチャード・ロス、4番カーディーニ、5番サーストンを入れたいですね」。
早「サーストンは有名だけど、見てもいない人を入れるのはおかしいだろう」。
ザ「いやでも、サーストンの五枚カード何て伝説ですし、名前の大きさからして是非残しておきたい人です」。
藤「いいんですよ。君の判断を尊重しましょう。ここで休憩を入れて後半になりますが、6番は気持ちを変えて違った攻めをしたいですね。私は6番にシルバンを入れたいな」。
ザ「渋いですよね。僕はランス・バートンにしたいな」。
早「ランスは大トリを取る人だと思うよ。6番には大きすぎるよ。僕は、マーカ・テンドーを入れたい」。
藤「おおっ、君の先生だね、筑波大学マジック研究会の名誉顧問だ」。
早「散々ご馳走になって世話になりましたから」。
藤「義理がらみかい。まぁ、そんな人がいてもいいなぁ。で7番は?」。
ザ「ノーム・ニールセン」。
藤「いいね、芸の寸法も、位置もちょうどいい。私もニールセンを推したい」。
早「僕はバッキンガムを入れたい。あの人の四つ玉は忘れられません。あの年齢で、10個以上も玉を手に並べた姿はしびれました。大尊敬です」。
藤「私はベルギーのFISMでバッキンガムを見たよ。あんな小さな現象でも、観客は総立ちの拍手だったものね。ま、FISMだからマニアばっかりで当然だったけども、いい舞台だったよ」。
早「8番はリチャード・ロスがいいな」。
ザ「僕は天海さんを推したいですね。巧さに関しては申し分のない人ですよ」。
藤「そうだねぇ、いいねぇ。でも8番なら、もう少し遊びがある人でもいいんじゃないかなぁ。私だったらダニリンだね」。
早「おお、ロシアのダニリン、いいですよね、独特の演技ですよね」。
藤「いいでしょう?。そして大トリはランス・バートンだよ」。
早「僕もランス・バートン賛成です」。
ザ「僕はここにフレッド・カプスを持って来たいのですが、いけませんか」。
藤「巧さにおいては申し分ないけど、大トリとなると、演技自体にもう少し色気があって、芝居っ気のある芸風の方が似合うんじゃないかなぁ」。
ザ「確かにそうですねぇ」。
藤「では皆さんの意見を尊重して、全体をまとめるよ。1番2番は後にして、3番、4番、5番は、三人の意見はあまり大きくは変わらないんじゃないかと思うんだ。
そこで、3番フレッド・カプス、4番カーディーニ、5番チャニング・ポロックでどうだろう。この3人は不動でしょう」。
ザ「いいと思います」。
藤「そうなると、天海さんが飛んじゃうんで、6番に天海さんでいかがですか。そして7番はノームニールセン。8番はリチャードロス、そして9番がランスバートン」。
ザ「凄いメンバーですね。絶対見たいなぁ」。
早「いや、あの・・・、バッキンガムは・・・」。
藤「そうか、早稲田さんは、ディメールも、ジョナサン・ニールも島田さんも、マーカ・テンドーもバッキンガムも外れてしまったからなぁ。でもねぇ、私だって、ジョニー・ハートや、トムソー二、シルバン、ダニリンを諦めたんだよ。だからさ、君を尊重して一人だけ君が推薦してもいいよ」。
早「うーん。5人のうち一人ですかぁ。迷うなぁ。あえて言うなら、マーカテンドーか、バッキンガムか、島田さんか」。
藤「どうする?」。
早「決めました。島田さんで」。
藤「そう、いいね、それでザッキーさんは一人入れるとしたら、誰?」。
ザ「サルバノ入れて下さい」。
藤「よし、これで決まった。スライハンドオールスター戦の選抜は以下の通りだ。
1番、島田、2番、サルバノ、3番、フレッド・カプス、4番、カーディーニ、5番、チャニング・ポロック、6番、天海、7番、ノーム・ニールセン、8番リチャ-ド・ロス、9番ランス・バートン。いいね」。
早、ザ「結構です」。
藤「このメンバーなら、画像を探して、今でも見ることは出来よね。これを酒の肴にじっくりマジックを愉しみたいね」。
続く