手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

前田知洋さんの収録

前田知洋さんの収録

 

 先週土曜日(2月13日)は、朝8時30分から稽古に来る人が一人いて、その後弟子の朗磨に稽古をつけて、あっという間に午前中は終わり。午後14時から「魔法の力」の収録。このところ私が力を入れている動画の企画です。視聴者も多くなり、反応もいいようです。

 当初のコンセプト通り。マジシャンがマジックをしないでマジックの世界を語る、と言うトークショウをずっと維持しています。なぜマジックを見せないことが大切なのかと言うなら、例えば、テレビに出演するとマジシャンは、テレビ局に頼まれるままについついマジックを演じてしまいます。

 無論マジシャンがマジックを演じることは良いことです。然し、常にマジックを演じていないと自分を表現できないと言うのは余りに芸能人として幅がなさすぎます。マジックから離れてしまうとオーラが消え、何も表現できないと言うのは問題です。小道具を持たないと急に精彩が無くなってしまうと言うのでは、世間の人のマジシャンへの評価を下げてしまいます。

 マジシャンにとってマジックは本業なのです。歌舞伎役者がバラエティー番組などに招かれた時に、歌舞伎は演じません。落語家も落語は演じません。本業はそう易々とどこでも演じないものなのです。然し、なぜかマジシャンは常にマジックを演じることを求められます。そうした依頼を断ることは簡単です。でも、そうであるなら、マジシャンはマジックをしないでトークだけで、人を楽しませることが出来ますか。

 マジック界を見渡したところ、そこに気付いて、日ごろトークを磨いて、面白い話が出来る人と言うのはなかなかいません。多くのマジシャンはマジックにのめり込んでしまって、職人になり切っています。

 マジシャンがマジックのスキルを上げることは勿論大切なのですが、もっともっと素の喋りを磨いて、人を引き付ける力を持たなければ常にマジックを見せ続けなければなりません。

 マジックを見せている時だけがマジシャンで、小道具を手放したらオーラが消えてしまう、と言うのでは道具屋さんであってマジシャンではないのです。マジシャンも、マジック愛好家も、もう少し広く芸能の中からマジックを捉えて欲しい。そうした考え方から魔法の力を始めました。

 今回はゲストに前田知洋さんを迎えてのトークショウです。先月のマギー司郎さんと言い、今回の前田さんと言い、全くのボランティアで協力して頂いています。前田さんはこのところ私とのトークに新たな可能性を感じているようです。誠に光栄です。

 

 さて、13時半くらいからカメラの小形さん、ザッキーさん、古林一誠さん(俳優、今回はお手伝い)、などなど続々集まり、前田さんもやって来て、例によって25分のトークショウを3本取りました。

 今回も、思いがけない面白い話がたくさん撮れました。ほとんど私が聞き役に回り、前田さんが熱心に語りました(前田さんとのトークは2本分)。彼も語りたいことがたくさんあったのですね。但し、まだマギーさんの収録分がそっくり未公開ですので、今回の放送は4月末になると思います。

 

 私が44歳の時に「そもそもプロマジシャンと言うものは」(東京堂出版)。を「ザ・マジック」 に連載し、その後本にして出しました。未だにこれを読んでいる若いマジックファンがたくさんいるようです。

 実はそこに出て来る悩み多き若手マジシャンのコワザ光君のモデルは、まだ20歳だったかつての前田知洋さんだったり、ヒロサカイさんだったり、カズカタヤマさんをイメージして、一人のマジシャンを作って見たのです。

 前田さんと初めて合って40年。「そもプロ」の題材にして出版して25年。そして今回、魔法の力に出てもらうと言うのは不思議な縁ですね。でも流れは全くぶれずに一貫しています。魔法の力は形を変えた「そもプロ」なのです。

 ザッキーさんも、古林さんも、子供のころから前田さんのファンだったらしく、緊張の面持ちで今回の収録をしました。3時40分。撮影終了。そして収録後、駅前の焼き肉レストランに行き、打ち上げをしました。

 撮影でのトークショウで前田さんは心に秘めていた思いが燃え上がったのか、食事中も熱心に語り続けました。こんなに多弁な前田さんを見るのはザッキーさんも古林さんも初めてらしく、熱心に聞き入っていました。

 いいですねぇ。こう言う時間があるからこそ、マジックの先輩から話が聴けて後輩が育つのです。いままでマジックの世界ではこうした時間が足らな過ぎましたね。

 行く行くは魔法の力も公開で撮影して行きたいと思います。無論、打ち上げにも興味がある方には参加できるようにしたいと思います。18時打ち上げ終了。私はほろ酔い機嫌で自宅に戻りました。

 連日、指導やら、原稿書きやら、人から求められる仕事が多くて、日々充実していると言えばその通りです。でもほとんどの時間は人のため、生きるために費やされています。もう少し自分の時間を持って、自分の演技を作り上げる時間が欲しいと思います。秋のリサイタルのためにも、これから作品作りをしないといけません。

 

つづく