手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

台湾からの飛び火

台湾からの飛び火

 

 5月20日に、台湾の新総督に民進党の頼清徳さんが選ばれ、就任式が行われました。

 本来、台湾を独立国として、中国と敵対していたのは、国民党です。これは蒋介石以来、中国共産党と戦ってきた100年の歴史がありますから、台湾の国の中の保守本道と言えるはずなのですが、実は、2016年まで総統だった国民党の馬英九さんは急激に中国との接近策を取るようになり、国民党は大きな転換を始めました。

 対して民進党は、いわばリベラル政党だったのですが、馬英九さんの後に民進党蔡英文さんが総統になり、政権を担当するようになります。蔡さんは、女性で、見た目は学校の社会科の先生のようなおかっぱ頭で、ちびまる子ちゃんがそのまま大人になったような顔の人です。総統と言う言葉からはかなりかけ離れたイメージの人です。

 民進党は中国とも、アメリカともよい関係を保ちたいとするもので、台湾の独立は変わらないものの、余り独立意識を全面に出さずに、中国の反発を避けつつ、現状維持を重要視していたのです。そうなると、先の馬英九さんの中国との融和策と、民進党のリベラルな政策に差はほとんどなくなります。この辺りが小国の限界なのでしょう。つまりどちらの政党であっても、現実的な生き方を模索する以外ないのです。

 

 ところが、中国の立場からすると、頼さんの就任演説は面白くない部分が多々あったようです。先日も相当に激しく攻撃して来ています。そもそも台湾が独立国であると宣言すること自体が面白くないらしく、しかも両国が向かい合って並立して存在している、などと発言することに異常に反発しています。中国に言わせれば、大中国と、島国の台湾が、同等に並立しているかのような発言は許せないようです。

 但し、そうした言葉尻を問われたら、台湾の政府は成り立たなくなってしまいますので、頼さんとしてもここは譲れないでしょう。ただ、頼さんの考えは、中国とは一定の距離を取りつつも仲良くやって行きたいと言うものですから、そうそう中国が目くじらを立てて反発するようなものではないと思います。

 然し、どうしたものか、このところ中国は、過剰に台湾に対して反発します。更に、頼さんの総統就任式に日本の国会議員が10人ほど参加していたことに腹を立てて、日本にいる中国大使が「台湾は国ではない。中国の一部の地域のことに日本の国会議員が口出しすることは許せない。こんなことをすれば、東京はいつか火の海になることを覚悟してほしい」。と言う、特大の爆弾発言をしました。

 当然、日本政府は中国政府に抗議しましたが、中国は、謝罪も訂正もありません。と言うことは本心なのでしょう。然し、外交をするものが、戦争をほのめかすことは飛んでもない間違いです。外交とは戦争を回避するため、あるいは戦争を収束するために存在している組織なのですから、戦争を煽って恫喝するのはめちゃくちゃです。

 どうも中国は、経済や、軍事や貿易の問題が山積していて、冷静にものが見えなくなっているようです。そもそもが自国の膨大な赤字を抱えて、にっちもさっちもいかなくなっているようですし、中国が赤字解消のために、ロシアに武器輸出していることに対して、日本やアメリカや欧州が批判的な姿勢を取っていることが相当に不快なようです。と言ってそれを放っておけば、中国製品をアメリカに輸出する際に高額な関税をかけられたりすることになり、かなり苦しんでいるようです。

 

 さて、そのストレスのはけ口が、台湾なのかと言うと、そのやり方はうまくないように思います。台湾でどんな総統が生まれようとも、台湾国民が中国と統一を望むことはあり得ないでしょう。

 かつて一国二制度と言って、中国と香港は併合されましたが、たちまち一党独裁に呑み込まれてしまい。言論弾圧をされた現実を、対岸で眺めていた台湾が、中国と併合を望むことはありないのです。

 頼さんの総統就任演説の後に、中国空軍が編隊を組んで台湾の空を我が物顔に飛んでいたそうですが、そうならすぐに中台戦争が起きるかと言えば、それはあり得ないでしょう。今の中国には金がなさすぎます。あちこち借金で首が回りません。

 更にもし今、台湾進攻をすれば、アメリカは中国を経済制裁して、中国からの輸入を止めたり、関税を引き上げたりするでしょう。欧州も日本もそれに習うでしょう。そうなった時に、財政の厳しい中国は大きな痛手となります。つまり今の現状では台湾進攻は出来ません。彼らが台湾に見せる威嚇行為は飽くまでポーズでしょう。

 と言うことで、中国のフラストレーションはこの先も続くでしょうが、中国は国内問題で解決しなければならないことが多すぎて、しばらくは戦争どころではないでしょう。

 

 そうした中で、今年の9月24日から、中国の深圳で、FISMのアジア予選が行われます。果たして今の現状で、マジックのコンテストが出来るものかどうか。聴くところによると、深圳市は、余りの不景気で人通りが無くなって、レストランもホテルもひっそりと静まり返っていると聞きます。大会運営は大丈夫でしょうか。

 何にしても悪い時期に深圳での開催が決まりました。今のところは開催されるようですが、この先、中国そのものが、内乱でも起きたなら、マジックの大会など、どうなるのかはわかりません。もっともそれを言ったら、アジアの国々は韓国でも、台湾でも、香港でも、どこで開催しても不安です。

 唯一安定しているのは日本ですが、残念ながら、日本は世界大会を引き受けるだけの若い行動力のある組織がありません。そうなら私がもう一度、1992年のSAMの組織を起こしたときのように、一つ国内を取りまとめて見ようか、とも思いますが、いやいや、あの時の勢いはもうありません。第一女房が大反対するでしょう。静かに見つめるほかはないようです。

続く