手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

なぜ子供が増えない 2

なぜ子供が増えない 2

 

 実際に若い夫婦で子供が欲しいと言う人はたくさんいます。然し、生活がしにくいために、子供を諦めてしまったり、一人は生んでも、二人目をためらう家庭が多いのです。収入はあっても、家庭にいる時間が少なすぎるとか。夫婦で働かなければならず、子供の面倒が見られないとか。いろいろな理由で、子供が犠牲になってしまう場合が多いのです。

 然し、このところのコロナによって、在宅ワークが増えたことで、通勤時間が節約され、家庭にいる時間が長くなり、自然と家庭や子供にかかわれる時間が増えたことは幸いだと思います。そして、今以上に在宅ワークが定着すれば、何も東京都内のアパ-トに暮らす必要もないわけです。

 そうなら、同じ家賃で、衛星都市の、広々としたところに引っ越すなり、北関東の古民家を借りて生活すれば、環境はいいし、部屋も広くなって家賃は思いっきり安くなるでしょう。いろいろな点で暮らしやすくなると思います。人の考えが変わって行って、仕事の場があって、その上で子育てが出来ると言う生活環境が整えば、子供は自然に増えて行くはずです。

 いろいろな意味で、コンピューターは人の生活を革命的に変えて来たと思います。加えてコロナの3年間で、人は少し賢くなったように思います。案外10年以内に通勤ラッシュは解消されるかもしれません。 

 

 かつて(多分30年くらい前)、フランスが人口減少に悩んでいた時代がありました。19世紀のころは、世界の中心だったフランスが、20世紀になると、世界の中での発言権が弱まり、影響力も失われて行きました。実際、30年前のフランスは、今の日本と同じく少子化に悩まされ、人口が6000万人を割る状況になりました。

 フランス政府が心配したことは、このまま行くと、フランス語を話す人が5000万人を切ってしまうと言うことでした。国際会議で主要国の通訳から、フランス語がなくなってしまう可能性があります。出版物の発行は極端に減って行き、世界中でフランス語を聞く機会はどんどん減ってしまうのではないか、と思われたのです。今でも第2外国語として、フランス語を学ぶ人はいますが、この先、第2外国語にフランス語を選択する人がいなくなるだろう。と不安を感じるようになって行ったのです。

 そこでフランス政府は徹底的に子育て支援策を立てました。働く女性が子供を育てられるように、ホームヘルパーや、保育園、会社内の子供預り所など積極的に国が支援し、あらゆる策を講じたのです。未婚の母にまで支援を認めました。男性の育休も認められ、子供を持つあらゆる家庭の支援をしました。結果は出生率が2人以上になり、今では日本の1.4人を大きく上回っています。

 今フランスは6500万人の人口があります。かつてを思えば人口は増えたのですが、それでも6500万人です。ちなみに。イギリスが6700万人。イタリアが5900万人。スペインが4700万人です。日本の1億3000万人と言う人口は、フランスとイギリスの人口を併せたよりも多いのです。そして日本の国土は37万平方㎞。日本に最も近い国土を持っているドイツは35万平方㎞です。その人口は8300万人です。日本から比べると、ドイツの人口は少ないのですが、ヨーロッパ各国の中では最高の人口です。

 つまり、世界の大国と呼ばれている英仏二つ分もある人口が、ドイツとほぼ同じ国土に暮らしているわけです。ところが、ドイツと日本を比べるとドイツの方がはるかに広々としていて、生活にゆとりがあります。それは、ドイツは国土の半分以上が平地で、国民が一か所に集中することなく地方都市にうまく分散しているからです。

  少なくとも、東京から新幹線に乗って、新横浜まで全く家が途切れないと言う風景はドイツでは考えられません。日本の場合は、平地が少なく、少ないところに全ての交通機関や宅地が密集しているために。東京近郊も、名古屋も大阪も、街が線路の際まで一杯に密集しています。それと同じ風景の国はヨーロッパにはありません。ヨーロッパでは、都市と都市の間はかなり広々とした田園地帯が続きます。日本の風景は、シンガポールや、香港のような、都市国家に似ています。

 そのことを単に、「ドイツは日本より平地が多いから日本がせせこましく見えるのは仕方がない」。と思うのは間違いです。

 本当に土地がなくてやむなくそうしているならいざ知らず、都市が集中している陰で、限界集落があちこちに増えている現状は問題です。東京から70kmも離れたなら、無人の家がたくさんある現実を考えると、もっともっと地域を生かして使ったなら、みんなが豊かな生活が送れるのに、と思います。

 

 今から200年前、日本もドイツも、小さな領主が治める地方分権国家だったのです。ドイツと言う名称はその緩い連合国家の名称だったわけです。その後日本は中央集権国家になり、何でも東京大阪に権限が集中するようになりました。その結果が大都市が肥大して人口がアンバランスになって行ったのです。ドイツはさほどの人口集中もしませんでした。今でも大きな都市が少なく、小都市が分散しています。

 日本は関東に3500万人、関西に2500万人もの人が集中しています。日本の人口の半分が二都市に集中しているのですから、関東も関西も生活しにくいのは当たり前です。人口を分散させる方法は実は簡単です。地方に権限を譲ることです。東京にばかり仕事を持ってこないで、地方の仕事を増やせばいいのです。

 簡単なことのはずですが、実際には既得権を手放さない国や地方自治体や学校、会社が多いからみんな狭いところで暮らさなければならないのです。

 

 つい150年前まで、日本で一番多い人口を持っていた地域は東京でもなければ、大阪でもなく、新潟県だったのです。農業が主体だった当時の日本は、広い耕作地を持った新潟県が多くの人を養っていたのです。それが僅か150年で日本の人口が日本海と太平洋側で入れ替わってしまったのです。決して東京の人口集中が歴史的に長らく続いていたわけではないのです。そうであるなら、この先30年で、再度人口が分散する可能性もあるはずです。それが果たせたときに、日本は暮らしやすくなり、子供の人口は増えて行くはずです。

続く

続く