手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

習さんの迷走

習さんの迷走

 

 先日ウクライナの話をしましたが、今日は中国です。世界を見渡してみて、常に戦争の火種を抱えている国は、ロシアと中国です。ともに一党独裁国家で、国内で共産党以外認めていません。ロシアはまがりなりにも選挙を行っていますが、公正な選挙かと言えば首をかしげてしまいます。

 中国に関しては選挙すら行われていません。建国以来誰一人として、国民からの審判を受けずに政治のリーダーが生まれています。どうやって国のリーダーを決めているのかは闇の彼方です。そして一旦決まってしまった人には誰も逆らえません。

 

 そのリーダーは、政治は勿論、軍事、経済、文化、マスコミに至るまで権力を把握していて、一切の批判は許されません。

 一党独裁の政治家は、何でも出来ますが、本当にすべての社会の先を見通して行動が出来るでしょうか。経済一つを取ってみても、たった一つの会社を10年20年と運営して行くことですら至難の業です。それを何万、何十万と言う会社を把握して、経営を巧くして、経済を良い方向に持って行けるでしょうか。社会主義国と言うのはこれまで、それを計画経済で行おうとしてことごとく失敗してきたのです。

 

 10年前に私が、中国に行った時に、高速道路の両側に高層ビルがずらりと並んでいました。行けども行けども高層ビルが続きます。初めの内は「中国も発展したんだな。大したもんだ」。と思いました。然し余りに長く高層ビルが続くものですから、少しおかしいなと思いました。

 北京の町にこれほど多くの高層ビルが必要だろうか、と思いました。誰でもタダで住まわせてもらえるなら、中国人はすぐにでも高層ビルに住みたがるでしょう。然し、このビルに住むと言うことは高額な家賃を支払わなければなりません。

 それが出来る人がどれほどいるかと考えたなら、このビルは作り過ぎでしょう。しかも、高速道路の両側だけビルが建っていて、後ろは小さな民家や草原です。明らかに外国の観光客に対して、見得を張って作ったビルだろうと想像できます。

 ビルを建てることは政治家の命令で出来るでしょう。然し毎月毎月維持管理して行くことは簡単ではありません。こんなことを続けていてはいつか国家が破綻します。

 同様に中国の新幹線です。日本に負けないような新幹線を作って、中国国内を網の目のように走らせたなら、世界中は目を見張るでしょう。然し、それほど中国に新幹線が必要でしょうか。正月やお盆の季節には乗客もいるかと思いますが、連日新幹線に乗って移動する人が一体中国にどれほどいるのでしょうか。

 日本の新幹線が成功したのは、そもそも、東京圏に3500万人の人が住んでいて、関西圏に2500万人の人が住んでいる前提があったからです。併せて6000万人の人が飛び抜けて高い所得を持っていて、精力的に活動しているからこそ、10分に一回新幹線を走らせることが出来るのです。でも、こんな好条件の国ってほかにはありません。

 たまたま日本では成功したことですが、それを新幹線さえ走らせればうまく行くと思うのは間違いです。何度も言いますが、新幹線を作って走らせることは中国の政治家ならできるでしょう。然し、毎日の乗客をどう維持するかは、よほど経営能力を持った人が運営しない限りうまく行きません。

 中国の高層ビルも、新幹線も、いずれ破綻することは見えています。なぜ見えるかと言えば、社会主義は経営能力が求められないからです。利益の追求に甘いのです。いや、社会主義国だけではありません。日本だって、役人の世界は社会主義的です。

 バブルのさ中に役人が作ったプランで、リゾートホテルだの、遊園地だの、博物館だの、図書館だの、文化会館だの、あらゆる公共施設を作りましたが、その多くは破綻したではありませんか。

 役人は建物の図面を引くことは得意です。そして出来上がった建物の中に職員を配置することも得意です、しかし経営をして利益を生み出すことが出来ません。バブル以後多くの地方自治体が経営破綻したのを思い出してください。

 それと同じことがまもなく中国で起こります。これまで中国は経済が上り坂だったから、無駄遣いが表に見えなかったのです。一旦経済に陰りが出ると、たまりにたまった支払いを誰がするのか、と言う問題がたちまち出て来ます。

 

 かつての日本のバブルと同じことが中国で起こるのです。習近平さんは憲法を変えてまで三期目の主席に就任しました。この人の目指していることは明確で、

 中国を世界一の経済大国にすること。

 世界一の軍事国家にすること、

 中国を統一すること。

 経済大国、軍事大国はほぼ達成できました。残るは統一です。それは、台湾を中国の領土にすることです。これが出来て初めて習近平さんの目的が達成されます。

 毛沢東以来、最も政治力のある政治家ですから、何としても自分の代でそれらを達成させたいのでしょう。でも、香港と言い、新疆(しんきょう)と言い、余りに強引な手法で住民を押さえつけてしまいました。その反発は大きいのです。ましてや台湾です。

 2500万人もの国民がいて、それらが日本並みに所得の高い人たちで、経済の発展した国をどうやって占領できますか。そんな戦いをしたら、アメリカも日本も無関心ではいられません。ウクライナ以上に大きな戦いになるでしょう。そんなことが出来るのでしょうか。

 

 と考えていたら、ここへ来て、コロナ問題で、中国全土でストが起こりました。当初は警察の力で鎮圧しようと考えていたようですが、習さんもそれが難しいと知り、デモに対して妥協をして、コロナ規制を緩めるようになりました。習さんも、自分が絶対でないことを少し理解したのでしょう。いい傾向です。

 そうなるとやがて、今のデモに乗っかって習さんの対抗馬となる、大物の党員も現れて来るでしょう。徐々にですが、習さんの力は落ちて来るでしょう。そうなれば台湾侵攻どころではありません。台湾にとっては今回のデモはラッキーです。

 今年は、長い目で見たなら、中国の大転換期の年になりそうです。今年の春までは習さんは絶大な権力を持っていましたが、その力が減速し始めました。更には、この先、中国経済がバブル破綻を起こしそうです。

 中国のバブルが弾けて経済が混乱すると、中国と深く付き合ってきた韓国も同様に経済破綻するでしょう。中国韓国はこの先、かなり長くバブルの後遺症に悩むでしょう。無論、日本にも不況が来るでしょう。但し、日本は30年前にバブルの破綻を経験していますから、不況は最小限に回避できるでしょう。ウクライナと言い、中国経済と言い、しばらく世界は悪い時代が続きそうです。

続く