手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ドーハよろしく

ドーハよろしく

 

 昨日(12月1日)は随分と用事の多い一日でした。月に一回の糖尿病の検査に朝から出かけ、血液を調べます。このところ数値が安定していて安心していましたが、先月は少し悪い方向に進んでしまいました。気持ちを引き締めて、余りアルコールや甘いものを取らないようにしなければいけません。

 病院を終え、久々、「田んぼ」に行き、ブランチを取りました。この店は旨い米、旨い魚、旨い味噌汁が売り物で、出てくる料理はまるで旅館の朝飯のようなシンプルなものです。パッと見た目は地味です。それでいて1200円も取りますので、私は旨いとは思いますが、果たしてこれでお客様が来てくれるのだろうかと、他人事ながら心配になっていました。

 然し、私が心配するまでもなく、良く人が入っています。しかも若い人が普通に入って来て焼き魚の朝食を取っています。「あぁ、矢張り普通のことが出来て、しかもお客様を納得させることが出来ると言うことが貴いことなんだなぁ」。とつくづく感じさせました。

 その後、いろいろと買い物をして、いったん自宅に戻ります。この日は私の誕生日で、女房と娘のすみれの二人が祝ってくれました。駅前の寿司屋に行き、刺身、はまちのかまの塩焼き、そして寿司を頂きました。

 連日込んでいる店が、この晩はどうしたものか、お客様が少なく、ゆったりと食事が出来ました。ところが、肝心のネタが少なく、目当てのシマアジも、ヒラメもなく、寂しい思いをしました。それでも家族が揃って外で食事をする機会は限られているので、この時間を大切にしたいと思いました。

 家に帰って、ケーキが用意されていて、私の名前の入ったショートケーキに蝋燭を灯し、再度祝ってもらいました。蝋燭は6本並べました。68歳です。

 

 翌朝、(2日)朝4時から、サッカーの日本スペイン戦があります。私はそれを見たいと思い、一旦寝ることにしました。娘も起きて見たいと言っていました。然し、娘はその日の勤めがあるため、4時起きはどうかなぁ、と心配しました。

 そして目が覚めると、5時でした。「いけない、前半戦を見過ごした」。急ぎ起きて居間に行きます。この時娘を起こすべきかどうか、迷いました。部屋を覗くとぐっすり寝ています。それなら寝かしておいた方がいいと判断して、そのままにしました。

 

 今朝は強敵のスペインが相手です。ドイツと言い、スペインと言い、サッカーの世界では頂点に位置するチームです。日本のチームにとって、今回のワールドカップの成績そのもが今後の日本の実力に繫がります。

 数十年後、サッカー史を眺めた時、今回のワールドカップは歴史に残るものとなるでしょう。私が見る、見ないはどうでもいいことですが、その歴史の中の目撃者に成れたことは私にとっては幸せなことです。

 

 さて、遅れてテレビをつけたときに、ちょうど前半戦が終わり、休憩時間になっていました。前半戦の試合の展開は、スペイン側が早々に一点を取り、そのまま一進一退を繰り返したようです。「まぁ、前半戦のスペインの一点は読み込み済みかなぁ」。と思い、後半戦に期待をします。

 後半戦は期待の通り、日本の常套戦法で、続々主砲を投入します。先ず堂安、三苫が入ります。攻めを後半にまとめて、一気に得点を得ようと言うものです。期待は大いに膨らみます。すると開始数分で堂安がボールを受け取り、前進させ、一気に1点を取ります。これで同点です。ここから流れは急に明るくなりました。

 恐ろしいもので、それまで硬直していて、「この分ではスペインに押しまくられるだろう」。と思っていた試合が、堂安が入ったことで、大きく流れを変えたのです。「日本も勝てるかも知れない」。チームもサポーターも期待を新たにしました。するとさらに三苫が、ゴールサイドに飛んできたボールをラインぎりぎりで抑え、相手チームともつれつつも、打ったボールが田中碧の前に行き、ヘディングでゴールに入り、更に一点追加しました。

 ただし、これはライン上のもつれが審判のビデオチェックになりました。かなり長い審査がありました。日本勢とすればこの一点があるとないとでは勝利に大きくかかわります。どんな試合でも、勝利を手に入れようとするときには、こうした、必ずぎりぎりの審判が絡みます。勝利は実力プラス運なのですね。

 これが幸いに日本勢に加勢してくれました。過去色々な試合で、不可解な審判がなされてきましたが、ビデオを導入してからは怪しい試合はほとんどなくなりました。とにかく今回の審判は日本に追い風になりました。日本は浅野を加え、更に万全な体制を作ります。

 ここからスペインの動揺が始まります。さすがのスペインも、これでは準決勝進出も危うくなりました。ましてや、同じ時間にドイツとコスタリカが戦っていて、ドイツが得点を重ねてコスタリカを圧しています。

 そうなると、現状、一位、二位、三位は三つ巴で、どこの国が一位になるかもわからず、三位転落がどこの国になるかも試合が終わるまでわからなくなってしまいました。このままでは日本とドイツが勝ち残り、スペインは日本に、同点もしくは勝利しない限り、準決勝に出られなくなります。

 日本と試合が始まるまではスペインは楽勝に一位で準決勝進出するはずだったのです。ところが、日本が信じられないような試合展開をして、スペインをリードし、日本は残り時間をこのまま守り続けようとします。対するスペインはしゃにむに攻め立てます。攻守がすっかり入れ替わりました。

 アディショナルタイム(追加時間)は7分。この7分にスペインはすべてを投入してチャンスを掴み取ろうとします。日本としては、ここで1点スペインに取られたなら、同点になってしまい、同点では準決勝には出られません。何としても今の点を維持しなければなりません。日本の守りは難く、スペインを寄せ付けません。

 結果は2対1で日本の勝利でした。サポータの喜びようはすさまじいものでした。喜びつつみんな涙を流しています。まさかドイツに勝ち、スペインに勝ち、準決勝に出られるとは予想もしていなかったのですから。多くの日本人は、朝からものすごい熱戦を見せられて眠れなくなったことでしょう。昨日から翌朝まで続いた長い一日でしたが、いい誕生日でした。日本チームの皆さん、これからもドーハよろしく。

続く