手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

アゴラカフェ 手妻公演

アゴラカフェ 手妻公演

 

 一昨日(6日)、昼12時から、日本橋マンダリンホテル二階のアゴラカフェで、藤山新太郎の手妻公演が催されました。出演は、私と、藤山大成、和田奈月、ゲストにケン正木、お客様は15名。

 毎度のことながら、朝8時半に大成が来て、9時に車で高円寺を立って、9時40分に日本橋に到着、荷物を搬入して、道具の組み立てと打ち合わせ。

 12時にオープンして、お客様はまず食事をします。12時30分からショウスタート。

 

 一本目は藤山大成。大阪や福井で披露した、傘出しと羽根の手順。ところどころ煙管が出て来て、実際に煙がプカリプカリと出て来るところが趣向。気分良さげに演じていました。然し、全体で4分くらいしかなく、もう少し肉付けをする必要があります。

 

 二本目は和田奈月、袋卵と紙卵、それに金輪の曲。私のアシスタントをしてもう30年近くになります。かつてはバルーンショウなどもしていたのですが、最近は和をすることが多いようです。和は年を経ると味わい深いものになるため、長く演じることが出来ます。この先もずっと続けて行くとよいと思います。

 

 三本目はケン正木、日本奇術協会会長です。今回は鳩出しの手順。6羽の鳩を次々に出して行き、後半はカラオケマジック。お客様から借りた1万円を燃やしてしまい、また復活させます。カラオケマジックと言うジャンルを作り上げたのはケンちゃんの功績です。日本中のアマチュアさんがこのマジックを真似して演じています。

 

 ここで10分間の休憩。

 そのあと私の演技、引き出し、サムタイ、若狭通いの水、蝶。

このところ若狭通いの水を頻繁に演じています。何度も演じることで喋りのギャグを増やして行こうと考えています。あと数回演じたなら、結構面白いものになって行くでしょう。

 終了後はお客様と写真を撮って、少しお話をしました。

 

 終演後、アゴラカフェを出たのは3時20分。大成は今日はそのまま返しました。私が車を運転して、日本橋交差点にあるコレド日本橋のビルの4階にあるお座敷に行きました。15日にお座敷の仕事を受けていて、そこの下見に伺いました。初めての場所ですので、どんなところか座敷を見せて頂きました。

 下見のあと3階に降りてお茶でも飲もうと思っていたら、HARBS(ハーブス)と言う、ケーキを食べさせる喫茶店がありました。お客様は賑わっていてほぼ満席です。店頭に大きなケーキが並んでいます。カットして出してくれるのですが、そもそものサイズがとても大きくて、しかも断片を見るとぎっしりフルーツなどが詰まっていて、食欲をそそります。チョコレートケーキがおいしそうだったので注文しました。

 紅茶はセイロンティーです。幸いに席はすぐに座れました。待つことしばし、セイロンティーも大きめなポットに入っていて、優に三杯くらい飲めます。紅茶は少し濃厚です。この濃いめの紅茶が甘いケーキには合うのでしょう。

 チョコレートケーキは随分大きく、三角に切ってあります。女性ならこれを一つ食べるだけでランチはいらないかもしれません。チョコケーキは三層になっていて、甘いチョコとスポンジ、黒い濃いめのチョコの三層で、三層が更に三段重なっています。間にナッツが入っています。このナッツが旨味を出していいアクセントになっています。

 何にしても三時のおやつにこれだけのケーキを食べるのは贅沢です。甘すぎず、かなり濃厚なチョコのケーキで、紅茶と一緒に食べて、充実感を感じました。若い女性でいっぱいです。流行る理由が分かります。料金は紅茶とチョコレートケーキで1650円。ケーキの大きさを思うと決して高くはありません。

 

 車を運転して、自宅に戻ります。6時帰宅。パソコンを広げて、少し原稿を書こうと思いましたが、うっかりそのまま寝てしまいました。目が覚めたら夜の10時です。「あれ、晩飯を食べたかなぁ」。一瞬自分が何をしているのかわからなくなりました。

 大概夜7時半くらいに上から呼び出しの内線があって食事になるのに、そのまま寝てしまったようです。三階に上がって見ると、私の分だけ食事が残っていました。さては呼び出しがあったのに、すっかり寝ていて気付かなかったのでしょう。

 朝早くから仕事をしていたのでくたびれたのでしょう。テーブルにはシチューとアジの開きが乗っています。せっかくだから頂こうと、一人で遅い晩飯を食べます。テレビをつけると教育テレビでマーラーの9番をやっていました。随分渋い曲目です。

 マーラーの曲は常に死の恐怖が付き纏っています。心の不安であり、随所に悲劇的な暗示があります。然し9番の最終楽章はそれほど死に対する恐れはありません。無論マーラーのことですから、天から陽気な曲ではありませんが、気難しさもほどほどです。マーラー最晩年の作品です。ここまで来るとマーラーもある種の諦めがあるのかも知れません。諦めが浄化につながっています。マーラーファンの中にも9番が最高だと言う人は多いわけが分かります。但し、私は6番7番が好きです。あの常に悪魔から脅迫されているような不気味な音楽が面白いと思います。

 そんなことを考えながらアジの干物とシチューで飯を食べました。マーラーと言い、アジと言い、シチューといい、取り合わせの悪い晩飯です。時間も中途半端です。いろいろなことがあった割にはまとまりのない一日でした。

 それでも夕方食べたチョコレートケーキがおいしかったことが幸いでした。今日の幸せはアゴラカフェで蝶を飛ばして、その後にチョコレートケーキを食べたことです。あぁ、なんて幸せなんだろう。糖尿病のことはしばし忘れて、喜びに浸りました。

続く