手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ピッツアと天ぷら蕎麦

ピッツアと天ぷら蕎麦

 

 今日は朝から糖尿病の検査、毎月一回のことですが、もう20年三軒茶屋の石橋病院に通っています。数値は収まって来ていて、体は安定しているようです。然し、数日前の舞台以来、腰痛のために体ががたがたです。直接のぎっくり腰ではありませんでしたが、うっかりすると腰が立たなくなりそうな気配でした。

 気を使いながら動いていたため、大事には至りませんでした。そして、腰はようやくよくなったものの、鼻風邪がぬけず、熱はないのですが、風邪薬を飲んでいます。そのためか、歩くのにふらつきが出て、半病人のようです。

 検査終了後に地下鉄駅前のイタリヤ料理店の並んでいる通りに向かいました。今日は、Rizoです。外装はガラス張り、中は黒で統一された洒落た店です。ランチを頼みました。初めにサラダが出ましたが、少し炒めた野菜を盛り付けてあります。にんじん、玉ねぎ、ジャガイモ、適度の塩気と酸味で味付けがしてあり、上に生の葉野菜が乗っています。

 量も内容も満足です。ややあって、ピッツアが出ました。少し小さめなピッツアが四つに切ってあって、上になすなどの野菜が乗っています。本来はチーズなどの塩気が強く感じられるのでしょうけど、どうも風邪薬を飲んだせいか、塩気が薄く感じます。きっとおいしいピッツアだと思うのですが、少し味覚が鈍っていて残念。

 料理は、初めのサラダとピッツアだけ、コーヒーもデザートもつきません。2200円。高いとは思いませんが、自分の味覚のいいときに再度来なければ本当の価値は分かりません。勿体ないと思いました。私の他に女性が二組お客さんで来ていました。昼にしては寂しい客数です。

 

 食事を済ませて一度自宅に戻りました。実はこの後、日本橋アゴラカフェで打ち合わせをする予定だったのですが、チラシなど、色々忘れものをしてしまいました。どうも頭の中がまだすっきりしていません。何をやっても中途半端です。

 自宅で必要なものをまとめて、再度日本橋へ、4時にアゴラカフェに到着。11月6日12時から、私の公演があります。ゲストはケン正木さん、他に、和田奈月、藤山大成です。ケンちゃんとなかなか向かい合ってショウをする機会はありませんでした。対談など交え、面白い公演にしたいとかんがえています。アゴラカフェも、企画を手直しをして、マジックの充実を図ります。

 ちなみにこの先のスケジュールですが、11月は6日が、私のショウ。12月は、Daiとその仲間による演劇とマジックパフォーマンス。1月はザッキーや藤山大成、早稲田康平、峯村健二によるスライハンドマジックショウ。12月と1月は日程が数日のうちにわかります。後日またお知らせいたします。

 

 打ち合わせを終えて、何か食事をしようと考えました。急に蕎麦が食べたくなりました。神田で蕎麦なら石町の砂場か。砂場となると天せいろうが有名ですが、なぜか天ぷらそばが食べたくなりました。暖かい天ぷら蕎麦です。注文をすると、かけそばの中に、小さなかき揚げが乗っています。大きな海老が乗っているのを想像していましたが、天せいろうと同じかき揚げ天ぷらでした。

 ゆっくり味わいましたが、矢張り塩気の感覚が鈍く、今一つ砂場の蕎麦汁が旨いと感じられません。恐らく体は、あの出汁の濃い、鰹節の効いた蕎麦汁が食べたくて、蕎麦を求めていたはずです。そして胡麻油で上げた風味の効いた天ぷらを、濃いめの汁に付けて汁を味わい、それとさっぱりした蕎麦とが合わさったときにしゃっきりと収まった味わいを楽しみたくてここに来たはずです。

 ところが、肝心の体がそれに反応しません。「ここまで来て、風邪の影響で旨味が感じられないとは、何とも勿体ない」。結局、昼も夜もいいものを食べていながら、旨さを十分に感じることが出来ません。恐らく、今の私には、砂場の天ぷら蕎麦も、まるちゃんの緑の狸も同じ味に感じるのでしょう。残念です。

 世の中には、何を食べさせてもただ「旨い」。としか言わない人がいます。そんな人の味覚は私が風邪をひいたときの味覚と同じなのでしょう。誰が食べたとしてもここの店だけは歴然と味が違うはずだ。と思って、わざわざ連れて行くと、返ってくる言葉は、ただ「旨い」。と言うだけです。その旨いも本当に旨いと思っているのかどうか、連れて来てもらった礼に旨いと言っているだけなのかもしれません。そんな時にはがっかりします。世の中には味音痴と言う人がいるのです。味の何が良くて、何が悪いのかを知らない人がいるのです。

 「あぁ、私自身がその一人になってしまったんだなぁ」。と思うとぞっとします。神田の砂場を後に、また高円寺に戻ります。結局今日一日はいろいろ忙しかった割には実りのない一日になってしまいました。今日は早く休むようにします。

続く