手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

メイガスさんとジンギスカン

メイガスさんとジンギスカン

 

 一昨日(8月15日)メイガスさんとジンギスカンで一杯飲むことになりました。事の始まりは、一週間ほど前、中野の雪だるまと言うジンギスカン料理屋さんに行って、食事をしようとして満席で断られた話をブログに書きました。

 すると、私のブログをいつも読んでいるメイガスさんが、北原禎人さんを通して一緒にジンギスカンが食べたいと言うお話が来ました。私は、中野のジンギスカンは、いつも車で通る道にあるため、一度は入ってみたいと思っていた店で、いまだ入ったことはありません。

 メイガスさんは生まれが北海道だそうで、ジンギスカンは子供のころから食べていて大好物だそうです。中野の雪だるまにも何度か行っているとのことで、そうならぜひとも一緒に一杯やりましょう、と言うことで、15日の夕方17時に、わざわざ雪だるまを予約してくれて、雪だるまで会うことになりました。

 

 17時5分前、雪だるまに入ると、既にメイガスさん北原さんが座っていました。さて、メイガスさんとは何年も前からマジックの催しなどでお会いして、度々話もしています。然し、一緒に飲むのは今回が初めてです。

 少し偉そうなことを申し上げると、私と一杯やりたいと言う人は日本中で30人くらいいます。それは昔、「そもそもプロマジシャンと言うものは」と言うタイトルで、一杯飲みながらマジック界の能書きをたれる本を出したことがありまして、それが幸いヒットしたことから、今も、熱烈なファンが日本中にいて、地方に行くと食事を用意して待っていてくださるマジック愛好家がいます。有難いことです。

 そうした愛好家とマジックの話をすると、「あー、これこれ、こんな話が聞きたかったんだ」。と、感激してくださるのです。「そもプロ」の疑似体験です。お陰で、能書きをたれるだけでいい食事をさせて頂いているのです。

 今回メイガスさんとは、ブログ繫がりで、私のマジック話に共鳴していただいてジンギスカンの煙の中で話をすることになりました。

 メイガスさんは、イリュージョ二ストとして、数年前から名前が急激に出て来て、大活躍中です。私自身も、東京イリュージョンと言う会社を持ち、同名のチームを持って活動を続けて来たのですが、50を過ぎたころからイリュージョンはしなくなり、代わって手妻の世界の方に特化して行きました。

 そうなら、メイガスさんとはルーツを同じくするわけですから、話は伝わりやすいわけです。いろいろ話を聞いて行くと、メイガスさんは、イリュージョンのメカニックな部分に興味があるらしく、自分で作ったり修理したりして装置を作り上げることに強い興味を持っているようです。そうした点は私と同じなのですが、どうやらメイガスさんの道具つくりは、以前私がしていた規模を超えたもので、相当に大掛かりな製作をしているようです。

 メイガスさんは本来ならば日本で一番大きな稼ぎを上げて、大活躍している時です。ところがコロナの3年間は過酷でした。イベントが激減し、メイガスさんだけでなく、芸能人はみな苦戦が続いています。ここからどう活動して行くかが大きな試練です。

 しかし話を聞いていると、メイガスさんはかなり前向きです。自主公演を来月に始めるそうです。9月17日、ウイング愛知大ホールでイリュージョン公演をします。チケットはローソンで販売しているそうです。ウイング愛知は大きなホールですから、そこを満席にするのはかなりの観客動員力を要します。それでも、今注目を浴びているマジシャンですから、多くのスポンサーを掴んでいるのでしょう。成功を願っています。

 メイガスさんはマジックを語っているときはまるで少年のように純粋です。マジックが好きなんですね。特にメカの話になると止まりません、よくわかります。その思い。

惚れ込んだ末に掴んだ仕事は面白いのです。

 

 さて、雪だるまのジンギスカンは、所謂ジンギスカン鍋と言う、内側が逆ぞりした鍋の上でマトンの肉を焼くことは同じです。中央のこんもりした部分で肉を焼きます。鍋の縁に落ちた脂のたまり場に、もやしや玉ねぎをびっしり敷いて、肉の脂で野菜を焼いて行きます。それを焼き肉のたれより少し薄味のたれをつけて食べますが、ジンギスカンは正味マトンの肉を食べるための料理です。

 マトンとは羊肉です。慣れないとどんな味か心配ですが、別段特別な臭いなどはありません。ここの店のマトンは脂気が少なく、胃にもたれるようなことはありません。ニンニクなども卓上に置いてありますが、ここは純粋にマトンの肉の味で食べたほうがよいと思います。肉自体は脂気は少なく、柔らかく食べやすいものでした。途中細かく切ってアルミホイルに入れた、味付けしたマトンも出て来ました。仕上げにスープでそうめんを茹でた物が出て来ました。どれもいい味です。なるほど、連日満員の理由が分かりました。

 

 ジンギスカンを食べると、20代に北海道のキャバレーに出演していた時代を思い出します。どんな小さな町にもジンギスカン料理屋があって、肉とアルコールを飲んでも値段は知れています。安くて、腹がいっぱいになって、酒が飲めるので、キャバレーが終わると随分食べ歩きました。

 特に、寒い時期などには街中は人っ子一人歩いていないのに、ジンギスカン料理屋に入ると人でいっぱいでした。当時は換気の悪い店が多く、そんな店でたくさんの人が羊を焼きますので、店ごと煙でもうもうとしていました。

 1時間も店にいて、外に出ると、外は零下です。マイナス10度などと言う夜の寒気で、ホテルまで歩いて帰るのですが、寒さで耳がビンビンと痛みます。歩いているだけでつま先からツンツンと寒さが脳にまで伝わって来ます。それでも酒と肉のお陰で体中はほてっています。こんな時に「あぁ、自分は北海道にいるんだなぁ」。と実感しました。良き思い出です。

 

 ジンギスカンを出て、中野の北口のショットバーに行きもう一杯、残念ながら私はこの数日睡眠不足で体調が悪く、一杯飲んだだけで早々にお別れをすることにしました。せっかくお会いして十分に話すことも出来ず申し訳ない思いでした。次回又お会いしたときにじっくり飲みたいと思いました。

続く