手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

台湾が危ない

台湾が危ない

 

 さて先週はアメリカ下院議長のペロスさんが台湾に行ったと言う、ただそれだけのことで中国が激しく反発しました。今回の中国の行動はかなり過剰です。ペロスさんが帰ると次の日には軍事演習を始めて、台湾周辺に海域迄ミサイルを飛ばして威嚇しました。まるで戦闘準備完了です。

 アメリカを相手に戦いを起こそうと言うのでしょうか。余りに無謀です。台湾は地図で見ると小さな国ですが、仮にその国を制圧しようとするのは決して簡単ではありません。第二次大戦のときにアメリカ軍は沖縄を侵攻しました。然し日本軍の猛反撃によって、とんでもなく大きな犠牲を払う戦いをしたことをアメリカは知っています。その沖縄の数十倍大きな島で、数百倍の国民を擁する台湾を、中国が制圧するとなると、これは大戦争を覚悟しなければなりません。

 戦いの初めはミサイルの打ち合いになるでしょう。台湾の都市と言う都市は破壊されるでしょう。然し、その後で中国軍が台湾に乗り込んで、首都に赤い旗を建てなければ中国が勝利したとはいえません。

 仮に大量の船で兵を送ったとして、台湾ではジェット機、ミサイルなどの兵器によって、水際で迎撃するでしょう。台湾には2000万人の国民が待ち構えています。2000万人の人を倒すにはどれほどの軍隊が必要でしょう。仮に300万人の兵を送るとします。中国は、一度に台湾海峡に数百万人もの兵士を送ることが出来るでしょうか。中国中の船をかき集めて300万人もの兵を送り込めば、台湾海峡は船でびっしり埋まるでしょう。それほどの密度で船が攻めて来て、それを台湾側が攻撃するなら、適当に玉を打ってもかなりの確率で船を沈めることができるでしょう。

 中国軍は仮に半分の兵力が無事に台湾に上陸したとして、待ち構える台湾側は、武装して、山間地に基地を作って頑強に抵抗するでしょう。そうなったとして、中国は一体何百万人の兵士を犠牲にしなければならないでしょうか。

 台湾制圧を考えたときに、中国は、国費を傾けるほど戦費を使ったとしても台湾制圧が出来るかどうかわかりません。第二次大戦の折、アメリカ軍が体験した沖縄戦は、アメリカに取っては痛恨の戦いだったのです。日本はたった一国でアメリカと戦いました。のも関わらず大苦戦でした。

 然し、中国が台湾を進攻するとなると、背後にアメリカが付いています。日本も恐らく参戦するでしょう。そうなったときに、世界のGDPの一位と三位の国が共同して、台湾を守り、世界第二位のGDPの中国と戦うことになります。中国は勝てるでしょうか。私は無理だと思います。

 ウクライナでのロシア軍の戦いを見ればわかる通り、いかに優れた武器を持っていても、最後は兵士同士の戦いが勝利を決めます。自国を守ろうとする市民の戦いは必死です。そうそう簡単に台湾は負けません。それはウクライナが実証しています。

 

 そもそも、アメリカと台湾は直接国交を結んではいませんが、それでも第二次世界大戦以来の国際情勢から、アメリカはずっと台湾を支援してきました。

 第二次世界大戦中、アメリカは、中国を侵略していた日本を倒せば、世界に平和が訪れると、頑なに信じていました。日本は単に嫌がらせで中国を侵略していたと思い込んでいたのです。然し、日本が敗戦を迎えると情勢は一変します。それまで中国を支配していた国民党政権(蒋介石)が、今度は中国共産党毛沢東)との戦いを始めます。そして国民党は戦いに敗れ、台湾に避難します。

 第二次大戦中、巨額の支援をして支えて来た国民党がいともたやすく中国を追われて中国は共産主義国になってしまったのです。そればかりでなく、共産主義の革命思想は周辺国に飛び火して、朝鮮半島北朝鮮が生まれ、更にはベトナムにも革命政府(北ベトナム=今のベトナム政府)が出来て、南の自由主義ベトナムと戦うようになります。

 かつては日本が統治していた地域がどこも共産主義国になるに及んで、初めてアメリカは、日本を倒せば世の中が良くなると言う話が幻想だったことを知るのです。戦後から今日までのアジアの混乱は、アメリカの政治の失敗から生まれたものです。

 第二次大戦後、東ヨーロッパがロシアに浸食されたことも、アジアが中国、朝鮮、ベトナムラオスカンボジアと次々に共産主義化して行ったことも、アメリカが、第二次大戦中に過大にロシアを信頼し、武器を供与し資金を与え、支援し続けたことが裏目に出た結果なのです。

 このため世界大戦後、アメリカは朝鮮半島で、朝鮮戦争に介入し、その後、ベトナム戦争でもまた共産主義と戦わなければならなかったのです。

そして今回、台湾も全くそれと同じ流れで、大戦後の共産主義との戦にさらされているわけです。

 いまアジアは欧州を超えて大きな繁栄をしていますが、実は、日本を除けばどこの国も、周辺の国々との微妙なバランスで繁栄を維持していて、ひとたび地域紛争が起これば、国そのものが消えてしまうような不安定な地域ばかりなのです。

 まず台湾がそうです。今は多くの台湾企業が成功していて、世界と大きな貿易をしていますから、台湾の生活水準は高いのですが、それは、アメリカや日本が支援をしているから台湾の繁栄が維持されているので、アメリカ日本が手を引けば、たちまち共産国に侵略されてしまいます。

 そのことは香港の内紛を見れば明らかです。中国は一国二制度と言うシステムでこの先半世紀香港の自治を維持する、と約束していたにも関わらず、数年前に一方的に香港の自治権を取り上げてしまいました。一党独裁国家に押さえつけられ、民主主義は踏みにじられたのです。それを見た台湾は、中国にすり寄れば結果は香港と同じことになると知りました。それゆえにアメリカと日本との絆は手放すことが出来ないのです。

 それは韓国も同じです。韓国は、経済成長を遂げて、豊かな国になったとはいえ、いまだ北朝鮮とは1951年の朝鮮戦争以来休戦状態です。いつ戦争になるやもしれませんし、中国、ロシアが介入してこないとも限らないのです。

 アジアの国々の中で国情が安定している国と言うのは一つもありません。唯一日本が安定しているだけです。将来のことは分かりませんが、30年もすると、アジアの地図は今とは全く違うものになっているかもしれません。どうなろうとも、日本は自由主義を求める国々は守ってやらなければなりません。なぜなら重要な仲間なのですから。

続く