手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

2022オールスターゲーム

2022オールスターゲーム

 

  アメリカのオールスターゲームが開催されました。大谷翔平はここでも、居並ぶアメリカの野球スターを追い越して大人気です。今年も、ピッチャーとバッターの二刀流を見せています。まさにオールスターゲームは、大谷選手の独り舞台のような様相になっています。

 本試合の方でも、あと一勝すれば、ベーブルースと並ぶ百年ぶりの記録を達成する選手になると言うのですから、大谷ファンだけでなく、全米野球ファンにとっても物凄く期待が盛り上がっています。

 

 私は、毎回大谷選手の活躍を動画で見ていますが、少しずつ体が大きくなってきて、改造マシーンようになってきています。これほど均整の取れた野球選手はアメリカでもそうそうはいないのではないかと思います。更には、そこから出て来る巨大なオーラが感じられるようになってきたと思います。恐らく近くで実際に会ったなら、感じるものは相当に違うと思います。まさに今が大谷選手の人生の絶頂期なのだと思います。

 

 大谷選手の私生活は質素なものだと言われています。自ら「趣味がない」。と公言しています。野球がすべてで、野球以外に何の興味もないそうです。今や年俸だけでも3億円以上稼いでいて、コマーシャルも5本あるそうです。1本のコマーシャル料は1億5千万円だそうで、この金額は野球界だけでなく、全てのスポーツ選手の中で最高額だそうです。コマーシャル料だけでも軽く年収を追い抜いているわけです。

 しかし、彼は収入には全く興味がないようです。テレビ出演もほとんど断っています。お笑い番組など出ません。紅白歌合戦もお断りでした。それでいて、高級レストランに行くわけでもなく、趣味に投資するものもなく、車は小さな韓国製のヒュンダイに乗っています。スーツも安い仕立てのもので満足しています。贅沢は全くしません。生活費は一日1万円で間に合うと言っています。「お金は使わないから、そっくり残っている」。と言っています。特別お金に執着しているわけではなく、使うことに興味がないようなのです。

 ほとんど毎日はトレーニングに時間を使い。仲間と飲食に行くこともないそうです。月50万円のアパートに一人で暮らし、部屋は3室。「広すぎて持て余している」状況だそうです。読書もするそうですが、どれもトレーニングに関する本だそうです。

 少しはほかのことをしたほうが気分転換にはなると思うのですが、何なら私がマジックを教えてもいいのですけど、もし大谷選手がマジックにはまり込んだなら、面白いと思います。

 無趣味で、一人でいることの多い人と言うのは、マジックに嵌りやすいと思います。何とか縁を作って、マジックを見せたいのですが、そのチャンスは来るでしょうか。彼がマジックに目覚めたなら、その効果は絶大で、マジック界は一気に注目され、多くのファンを作ることが出来るでしょう。

 要は、マジシャンであれ、ファンであれ、いい仲間を作ることが大切なのです。影響力の強い人を仲間にすれば、たちまちマジック界全体が盛り上がってきます。

 

 かつて、詩人の萩原朔太郎がマジックが好きで、その好きの度合いも人並みを燃えていて、東京アマチュアマジシャンズクラブに所属していたそうです。その技量は、と言うと必ずしもうまいとは言えなかったようですが、マジックへの愛情は終生消えることはなかったそうです。

 氏の死後に家族が遺品を整理したときに、「紐だとか、ハンカチだとか、玉だとかどうでもいいようなガラクタがたくさん出て来て、なぜこんなものを主人は大事にしていたんだろう」。と、家族は思ったそうです。そうなのです、家族から見たならどんなマジックでもそれはごみなのです。

 フレッドカプスが亡くなったときに、生前使った道具がオークションにかけられました。有名なマジシャンでしたから、関係者の間でかなり高めに売れたようです。然し、師の芸能を知るものからすれば、その小道具は既に抜け殻です。実際の価値はないに等しいものです。

 マジックの道具は生かせる人のためにあるのです。それはアマチュアだけの話ではなく、私も同じです。家一軒分はある私のマジックや手妻の道具も、私がいなくなったなら、どれもごみになってしまうでしょう。そうならないように、価値あるものは少しずつまとめておいて、使い方が分かるように、何かあったときには理解ある人に譲れるようにして整理しています。

 このところ、アマチュアさんの中で、高齢化のためにマジックの道具を手放す人が増えています。私のところにも道具を売りたいと言う話が随分来ます。少しでも価値のある物なら譲り受けたいと思いますが、私のところに流れてくる情報は、残念ながら、プラスチック物の小道具とか、解説書不明のパケットカードの類が多く、買い取っても手に余るものが多々あります。

 同じマジックの道具を買うのでも、もう少し、道具を選んで買ってくれればいいのになぁ、と悔やまれます。

 まだマジックがブームになる少し前、昭和40年代初頭のマジック用具はいいものがたくさんありました。職人の手作りのものがかなり安価で売られていて、力書房で出していたボール&ベースは木製の挽き物で作られていて、いい出来でした。シンブルも挽き物でした。小さなシンブル8本と、お終いの大きなシンブル一本がセットになって売られていました。但し、木製のシンブルは分厚くてさまざまな変化手順をするには不向きでした。

 テンヨーの銀色のカードケースなどは素晴らしい出来でした。パラソルチェンジもきれいな作りでした。水とハンカチの雲隠れ、などと言う、今となっては誰もやらないようなマジックでも、その道具の作りは素晴らしい出来でした。天地の小型のリングなどは、いまだに残っていますが、50年以上使っても全くメッキが剥げません。優れものでした。ああした端正な作りの道具が今のメーカーの用具からは見られません。アマチュアさんが亡くなったらどれもごみになってしまうのでしょうか。

 

 話は大谷選手からどんどん離れてしまいました。何とか縁を作って、大谷選手にマジックの面白さを伝えたいと思います。しかし、精神的にも肉体的にも、存在そのものが本物である大谷選手に、マジックは本物として見えるでしょうか。悩むところです。

続く