手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ノーベル賞メダルを売る

ノーベル賞メダルを売る

 

 昨日(21日)驚くべきニュースがネットに流れました。ロシアのノーパヤ・ガセータ新聞社のドミトリー・ムラートフ編集長が昨年貰った、ノーベル平和賞のメダルをニューヨークで競売にかけました。メダルは1億320万ドル(140億円)で売れました。

 ムラートフ氏はその売り上げをUNISEF(国際児童基金)にそっくり寄付。ロシアのウクライナ侵攻を批判し、ウクライナで被害を受けている子供や市民の支援金に回しました。

 ムラートフ氏は長らくプーチン独裁政権を批判して、新聞紙上で戦って来ました。が、度々政府の弾圧が加わり、今も新聞は発行停止の状態です。欧州ではそうしたムラートフ氏の活動を評価して、昨年、ノーベル平和賞を授与しましたが、当然プーチンは氏を否定して、対立しています。

 ムラートフ氏にすれば、ウクライナ侵攻の間違いを国民に伝えようにも発行停止処分になっていては文字として伝えることが出来ません。そこで、ウルトラC の技を使って、ノーベル賞のメダルを競売にかけると言う突飛なアイディアを考えました。

 

 ところで、ノーベル賞のメダルがどれだけの価値があるのか、私にはまったくわかりません。金そのもの価値で考えるなら、メダルが純金の無垢で出来ているとしても、100万円とはしないでしょう。要は、ノーベル賞と言うプレミアの価値でしょう。そもそもノーベル賞のメダルを売りに出す人はいないと思いますし、仮に、受賞者当人が死亡しても、メダルは、国や地方自治体に寄贈して、博物館などに陳列する場合が多いのではないでしょうか。

 いずれにしても、コインショップや、骨董店に並ぶことは今までなかったはずです。それをあえて競売にかけると言うのは、メダルの価値そのものよりも、話題を作って、ウクライナを支援することが目的なのでしょう。

 同時に、ロシア政府への批判が込められていることは勿論です。今回の競売の行為は、新聞半ページに政府批判を書くよりも、数倍話題になったと思います。売上金の140億円は、金の価値と言うよりも、ムラートフ氏に共鳴した経営者とか、財閥が支援金として出したのでしょう。

 ノーベル賞を手に入れるような、才能のある人は活動そのものが国際的であり、その行動は、世界中を動かすような大きな効果を上げています。又、支援者もケチな人はいないようです。簡単に140億円と一言で言っても、メダル一つにそこまで金を出せる人は世界中でも限られています。ムラートフ氏の人脈にはとんでもない大富豪や、経営者がいるのでしょう。師は、そうした大富豪たちに、身銭を切ってでも弱者を支援することの大切さを伝えたのです。今回の活動で、ウクライナ支援は、この先大きな支援の輪を生むでしょう。ムラートフ氏の今回の行動に拍手を送ります。

 

 さて、ロシアのウクライナ侵攻は、しゃにむに責め立てるロシア軍によって、東部地区と南部地区でロシアが優勢な立場にあるようです。然し、それがいつまで続くかは未定です。どうもロシアは、戦費も底をつきかけているようですし、武器の調達もままならないようです。

 このまま行くと案外早くに、ロシアは、軍も、国の経済も、動かなくなって行く可能性があります。そこへ以て来て、ロシア国内で、今あちこちからプーチン批判が巻き起こって来ています。ムラートフ氏の行動を止められないのは、プーチンの権力が衰えている証拠です。

 ロシア国内だけではありません。ロシアは衛星国にもウクライナ侵攻の支援を求めていました。ところが、このところ、衛星国の中でも、ロシアの将来に疑いを持ち始めて来ているようです。このまま積極的にロシア支援をしていると、敗戦国の一員となってしまい、戦後の世界での立場が悪くなるのではないかと不安視しているようです。

 ここは中立を保っていたほうが賢明と、ロシア支援に及び腰になって来ています。それどころか、グルジアウズベキスタンなどは、NATOに加入できないか、地下で模索しているようです。

 このままロシアの衛星国がみんなNATO に加盟してしまえば、対立する相手がいなくなってしまいます。NATOイコール世界になって、世界対ロシア一国の構図になってしまいます。こうなればロシアの負けです。

 勿論、北朝鮮や中国は存在しますが、ロシアの崩壊は、中国、北朝鮮の連鎖崩壊を招く可能性もあります。ひょっとすると私が生きているうちに、社会主義国がすべてなくなる可能性もあります。

 いずれにしても、ロシアは孤立無援となり、経済破綻。経済制裁による貿易不振、食糧不足、機械部品不足など、あちこちで問題が噴出して来ます。ロシアの敗北と言うよりも、プーチンの立場が維持できるかどうか、怪しくなってきています。

 

 立場を変えて、ウクライナが、ロシア崩壊に至るまで、今の戦いを維持できるかどうか。ウクライナも相当に兵や、国の経済の消耗が激しくなってきています。小麦や、トウモロコシは出来ても、それを海外に輸出できる輸送手段がありません。輸送が出来なければ、ウクライナは収入を得ることが出来ません。

 と同時に、世界中、小麦が大きく不足して来ています。ヨーロッパでは既に切実な問題になっています。フランスパンも、スパゲッティーも、価格が上がっています。日本も同様です。

 そうなれば、ウクライナ侵攻が、日本の町のパンや、ラーメンにまで大きな影響を及ぼします。私の家の前のラーメン屋さん「山とき」さんは、「50円上げないとやって行けなくなった」と悩んでいます。50円くらいなんでもないだろう、と思うのは素人です。

 実は、今ラーメン屋さんが抱えている壁は、ラーメンが種類によっては1000円を超えてしまうことです。普通のラーメン(850円)にトッピングを乗せると確実に1000円を超えます。然し、1000円と言うのはかなり充実した定食の価格です。ラーメン一杯が定食を超えることは、死活問題なのです。今、山ときのお兄さんはいつも私の家の向かいでしゃがみこんで頭を抱えています。風が吹くと桶屋が儲かると言う例えで言えば、ウクライナが戦争すると山ときのお兄さんが苦しむと言う構図になるのです。他人ごとではありません。

続く