手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

好調アゴラカフェ

好調アゴラカフェ

 

 昨日(19日)は、朝食を済ませて9時に選挙に行きました。杉並区長と、杉並区議会議員選挙です。区議会議員はいったい誰に入れていいのかわかりません。

 一度家に戻って、デスクワーク。前田が18日に風邪になって、二日間休みです。胃腸炎だそうです。すると、踊りのお師匠さんも、風邪らしく、「月曜日は休む」、と連絡が入りました。流行っているのでしょうか。

 11時に、家を出て、12時日本橋アゴラカフェ着。今回のメインはカズカタヤマさんです。客席は30人ほど。知り合いの顔も何人か見かけます。そう言えば、このところ、アマチュアもプロも顔を見る機会が減りました。一年間マジック愛好家を見ることがないと言うのは寂しいものです。アゴラカフェが、愛好家の集いの場になることはいいことです。

 但し、愛好家ばかりを頼っていては、年間12回の公演はこなせません。この催しを通して、新たなお客様を集めなければいけません。現状に甘んじていてはいけません。結局、手順を作ったり、改良したり、新たなお客様を探したりと、日々自身を前に進めているマジシャンのみがこの先に生き残るのです。

 

 12時20分ころ、カズカタヤマ登場、クロースアップ開始。大分髪が白くなり、太ってきました。もうマジック界では立派な幹部です。演技も安定感があります。

 カード当てやカップ&ボールを演じました。カップ&ボールはフル手順です。5分かかります。カード4テーブル、カップ&ボールを3テーブルも演じました。気合の入れ方が違います。喋りはテンポがあって、うまさを感じます。この日初めて気づきましたが、関西弁が、少し標準語に近づいて、余り関西の癖を感じなくなりました。意識してそうしているのかどうかは知りませんが、話し方はかなり変わってきています。若い人のクロースアップとは明らかに完成度が違います。彼の存在は日本のマジック界では貴重と言えます。

 13時10分過ぎ、クロースアップが終わり、すぐに舞台がオープンして、カタヤマ登場。この間全く休みなし。シルクの簡単な演技とパラソルチェンジ、ミーナがお手伝い。

 そこからカードマニュピレーションを演じ、そのあと一本ロープ。このロープ手順が実にいい出来です。ロープの端の結び目が出たり消えたり、再度両端に移動したり、まるでロープマジックの集大成のような手順。無理なくかなり長い手順に作られています。これをお客様に飽きさせずに見せられると言うのは、芸に底力がある証拠です。

 そして。お客様に手伝ってもらってシルクにサインをしてもらったものが移動する演技。滞りなく進行して行きます。

 この後、ミーナの演技。ミーナは以前youtubeで演技を拝見しました。狐のお面をかぶって出て来て、撒き(蜘蛛の糸)を投げたり、傘を出したり、扇子を出したり。恰好や素材は和の世界ですが、演じ方は西洋マジックです。動きがいいのでついつい見続けてしまいます。

 始めの狐のお面は、大樹と被りますので、この社会で生きて行こうとするにはマイナスです。自身のファーストインプレッションをしっかり作り込むには、他人と違う世界が必要です。和の世界は、素材が限られていますので、後からやって来た人には個性が作りにくく、ハンデが大きいと言えます。でも、そこを越えないと生きては行けません。1年かけて修正を加えて行けばいい手順になるでしょう。

 再度カタヤマ登場、喋りのマジック。ここでミーナの片付けをカタヤマがするのが気になります。カタヤマが何でも器用にできてしまうため。彼がつなぎの司会者に見えます。もっとミーナが気を遣わなければいけません。カタヤマが光らない限り、この公演は存在しないのですから、彼のカリスマ性を100%演出して行かなければいけません。

 お客様を上げての似顔絵かきとカード当て。これは彼の得意芸です。似顔絵が似ているのが立派です。こうした看板芸をいくつも持っているところが芸の実力です。

 再度ミーナが出て来て6枚シルク。通常の結び解けを演じた後に、3枚のシルクが三菱のロゴのように真ん中でつながり、その形状のままでの結び目の移動。都合二つの結び方で結び目が移動します。これは私の師匠、松旭斎清子が得意で演じていた手順。50年ぶりに懐かしく見ました。これを松旭斎一門は90㎝のシルクで演じていました。90㎝の扱いと言うのが技術で、松旭斎一門の見せ場になります。ミーナも90㎝を習得されたらいいと思います。

 そのあとカタヤマの得意芸。シルクアクトからの旗出し。更に、これで終わらず、小さくなるトランプで終演。

 

 時刻はちょうど2時。私の前の席に、ザッキーさんが座っていて、ずっと演技を熱心に見ていました。実はこの日は峯ゼミだったのですが、私はパス。ザッキーさんは、終演後すぐに峯ゼミに行きました。

 終演後、カタヤマさんともしばらく話をしましたが、彼は、アゴラカフェのこの公演に意欲を燃やしています。ここを大切にして、マジックの拠点としましょう。子供も大人も集まって、日曜日の昼に見られる場と言うのはほかにはありません。

 これで、私、ザッキーさんと若手、カズカタヤマさんの三組のマジックショウを見たことになります。当然のことながら三つのスタイルは大きく違います。わたしとカズカタヤマさんのショウは、全くメインマジシャンの個性によってできているショウです。対して若手のショウはバラエティ形式になります。

 当初私の判断では、カズカタヤマのショウは安定していますから、まず大丈夫と考え、若手のショウのみ、少し不安を抱いていました。然し、見終わった後に感じたことは、どうしてどうして、内容的にも、雰囲気も、早々引けをとるものではありませんでした。これなら結構やって行ける。と安心しました。やはり人には思い切って任せてみるものです。

 さて、この形式で、更に第4週には7月からもう一組ののマジックショウが加わります。これでフルラインが出揃います。さてマジックショウが毎週日本橋で見られると言う企画がこの先功を奏するかどうか。無論、うまく行くことを願っているのは間違いありませんが、これは一時の人気を作るのではなく、この企画が息長く続いて行ってくれることを期待しています。先ずは幸先の良いスタートでした。

続く