膠着状態
ウクライナは、二月末の開戦当初は、ロシアに一方的に攻め込まれ、半月持つか、一か月持つかなどと危ぶまれていたものが、意外や意外、捨て身のゲリラ戦法で、ロシアの戦車をやっつけて、首都周辺のロシアの大群を押し戻しました。
そして、ゼレンスキーさんの、世界に向けた抜群のメッセージのお陰で、各国からの支援物資が届き、当初、武器供与を控えていた国が進んで武器を提供するようになり、映像で見てもわかるほど、ウクライナ軍が組織立ってきて、強い軍隊に変貌して行きました。更には、アメリカ、イギリスの、百戦錬磨の軍人が、陰でウクライナ兵を指導したり、実際現場で攻め方を教えたりして、確実にロシア軍に打撃を与えるようになりました。
ロシアからすれば、まさかまさかの連敗です。始めは膨大な戦車の数と、20万人の兵士を見せつければ、ウクライナ軍は恐れおののいて降伏すると思っていたのですが、たちまちのうちに、1万人、2万人と兵を失って行き、ロシアの指導部は顔面蒼白になって行きます。
こうして100日が過ぎ、ロシアも大反撃を開始し、なりふり構わずありったけの武器を駆使して、東部南部で大砲やミサイルを撃ちまくります。ウクライナ兵とウクライナ市民の損害は大きくなり、戦況は一進一退となります。
6月になると、世界中の人々は、ウクライナの戦争に目が慣れて来ます。テレビ局も視聴率が取れなくなったと見えて、軒並みテレビ局はウクライナニュースの順位が、二番、三番ネタに落ちて行きます。然し、現実には、初期の頃よりはるかに多くの人が連日亡くなっています。
ゼレンスキーさんとしてもここで決定的な勝利が欲しいところでしょう。然し、徐々にNATOも、アメリカも、積極的な協力を手控えるようになってきています。
これは恐らく床下で秘密の交渉が進んでいるのでしょう。イギリス、フランス、アメリカがロシアに対して、撤退する時期、占領する領土を交渉しているのです。ウクライナも、自国の領土からすべてロシア軍を追い出すまで戦うとは言っていますが、そうならないことは承知でしょう。
ウクライナにすれば、アメリカやNATOの意向を無視して戦いを継続することは出来ませんから、彼らの決めたルールに従うほか解決の道はありません。
一方ロシアは、決して今回の戦いを負けたとは思っていないでしょう。なぜならばロシアは1㎜たりとも領土を失ってはいないからです。今回の戦いはすべてウクライナ国内の戦争です。仮にロシアがウクライナ国内の領土を失ったとしてもロシアの負けにはならないのです。
最悪でもドローに持ち込めば、賠償金などは発生しません。と言って、ロシアもこの先大きく戦局を有利にする可能性はないのですから、休戦協定を模索していると思います。
先日、フランス、イタリア、ドイツ、ルーマニアの首脳が、ウクライナを訪れ、ウクライナに対して、NATO加盟を呼びかけました。元々、ロシアとの紛争は、ウクライナが9年前にNATO加盟を申請しようとしたことから問題になりました。ロシアはウクライナを威嚇するために、クリミア半島を占領しました。「ロシアの軛（くびき）から逃れようとすればこうなるぞ」。と威嚇したのです。ウクライナは沈黙し、NATO加盟案を引っ込めました。
然しその間に、NATO側と地下で交渉し、ウクライナ軍を少しずつ補強して、ロシアに負けない軍備を買いそろえていたのです。苦節十年、その甲斐あって今回のロシア軍の侵攻を阻止し、成果が出たわけです。
その上でフランス、ドイツなどが、NATO加入をちらつかせて来たことは、ウクライナにとっては大きな成果です。但し、これによってウクライナがいきなりNATOに加入できるものではありません。承認までには数年の時間を要するでしょう。
ウクライナをNATOに入れることは、NATOは本気でしょうか？。NATOは加盟国が一国でも他国から攻められたら、NATO全体で相手と戦うことになっています。この考えは、一歩間違えれば世界大戦を招くことになります。冷静に考えて、ウクライナの加盟は危険です。恐らくこれはヨーロッパ人特有のリップサービスでしょう。入れる、入れると言って、承認を10年も20年も遅らせる算段だと思います。つまり空約束です。
仮に空約束ではあっても、ロシアにすれば機嫌が悪いでしょう。どんどん自国の覇権がNATOに奪われて行くわけですから、もはや裸の王様です。プーチンさんにとっては悔しい結末です。然し、仕方ありません。戦いに負けるとはそうしたことなのです。
恐らくNATOは今ロシアが守っているウクライナの東地域と南部はロシアに譲る考えでしょう。そして賠償金は取れずと言う結末になるでしょう。今ロシアが賠償金を背負ったなら、ロシアはつぶれます。そのため、ロシアには実を与え、ウクライナには、NATO加盟と言う名誉を与えて、ここで幕引きを考えているのでしょう。
ロシアもウクライナもNATO諸国もこれ以上戦争が続けば、財政がひっ迫し、世界的な不況が来ることは見えています。このあたりが納め時なのでしょう。ウクライナとしては納得がゆかない結末です。
恐らくNATOはもう和平後の話し合いに入っていると思います。この先とは、すっかり破壊されたウクライナの復興を誰が支援するかと言う話です。無論、アメリカや、NATOが支援しなければどうにもなりませんが、ここで今回、わざわざ日本にNATOの会議に出席してくれと言って来たことは、NATOの下心が見えています。つまり金に困った時の日本です。
今回の戦いにおいて日本は何ら関係のない立場ですが、いざ金が必要となったら、必ず日本は引っ張り出されます。そして大して感謝もされないまま法外な復興資金をふんだくられるのです。ヨーロッパ人は、口先で得点を稼ぎ、負債は日本に背負わせます。人道支援はすべきですが、節度を考えたほうが良いでしょう。
よくコンパで、支払いの段になると人のいい先輩をおだて上げ、金を出させて、拍手喝采をし、その後の二次会には先輩を誘いもせずにみんないなくなってしまうのです。欧州諸国のやり方はナポレオンやビスマルクの時代から、少しも変わりません。ひたすら自国を有利に導くことにだけに執心します。1㎜たりとも人の事など考えてはいません。
今回はなぜかNATOに韓国も招かれています。国際舞台に顔を出すことの少ない韓国は、先進国に招かれたことだけで喜び、目いっぱい資金援助をするでしょう。でもお気を付けください。日本も韓国も、彼らから見たならATMなのです。言えば幾らでも金を引き出せる便利な機械なのです。人のいい先輩にならないよう、ATMにならないよう、要注意です。欧州の天地は複雑怪奇です。
続く
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