手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

スマホの威力

スマホの威力

 

 パラリンピック委員会が、北京大会に、ロシアと、ベラルーシの選手の参加を認めない裁定をしました。数日前に、参加を認めるけども、あくまで個人としての参加で、優勝しても国旗は掲げない、などと条件付き参加を認めていたのに、一転して内部で判断を覆したことになります。パラリンピック委員会の中でも判断に苦慮したのでしょう。

 今回のパラリンピック委員会の判断は、ウクライナの侵攻に対して、とてもいい効果を上げるだろうと思います。そもそもロシアは、人一倍、オリンピックの成果を気にする国であり、パラリンピック参加の前日になって、突然参加を取り消されるような不名誉があったなら、いかな何でもロシア国内の国民にも、ウクライナに対してしているロシアの行為が世界中の批判が集まっていることは明白に伝わるはずです。

 しかも、ロシアだけでなく、ベラルーシの選手も取り消しとなったことは、巧い判断です。ロシアの圧力に押されてやったこととはいえ、ベラルーシの行為もやはり侵攻に加担したことになります。

 このことは、パラリンピックを成功させたいと考えている中国に後味の悪い結果を残しています。オリンピック、パラリンピック開催中は、紛争中、戦争中であっても、休戦をして、オリンピックに参加する、と言うのは、第一に平和の祭典としてのオリンピック精神に反しています。ロシアはその基本理念を破ったことになります。同時に、中国の行為に泥を塗ったことになります。

 中国は、ロシアをかばって今回の侵攻を直接否定してこなかったのですが、パラリンピックがロシア、ベラルーシを参加取り消しにしたことで、弁護できない結果になっています。これは誠にうまい判断です。

 

 今回のウクライナ侵攻が、なかなかロシアの思い通りに進まない理由は、動画の投稿効果が大きいと思います。いま世界中で起こっていることが、瞬時に、スマホで動画を取って、そのままネットに流されます。この効果は戦車やミサイルを所有して戦争をするよりも大きな効果を上げています。

 プーチンさんが、「軍事施設を破壊しているが、ウクライナ国民には全く危害を与えていない」。などと言っても、現実に、市役所やアパートがミサイルで爆破され、そこからけが人がたくさん出てきた映像が配信されたなら、プーチンさんの言っていることが嘘であることが明白です。

 実際に戦場にいて、惨劇の動画を流した人たちの方が明らかに真実を語っているのです。今起こったことが世界中に配信されると言うことは、瞬時に、政治家も即断で対策を打つことが出来ます。動画を見た他国の市民も、全く同時に反応をネットに伝えられると言うのは、全く新しい戦争です。

 もしベトナム戦争時代やアフガンの戦争のときにスマホがあったなら、これらの戦いはもっともっと早くに解決していたはずです。

 ロシアの行為がすべてネットで公開され、世界中で批判の対象になっている現実に、ロシア政府としても強硬手段をためらわざるを得なくなっています。

 ウクライナ侵攻当初は、プーチンさんは、「場合によっては、核の使用も辞さない」。などと言っていましたが、現実には、核使用も、ミサイル使用も、思い通りにはならないのが現実です。ネットの普及は権力者の我儘が通らなくなっているのです。

 

 ウクライナの政府軍も、市民の義勇兵も、国を守るために連日勇敢に戦っているさまは世界中が感動をしています。EUの中でも武器の供与をためらっている国が、これからは積極的に武器を拠出するようになるでしょう。

 日本でもウクライナのために義勇兵を募ったら、70名が参加したいと申し出たと聞きます。それに対して日本政府は及び腰です。なぜでしょう。人が困っているのなら、支援したいと言う人がいても当然です。それを後押ししてやれないと言うのは、どういう理由で支援できないのですか。自衛隊を派遣するのではありません。義勇兵を送り込むのです。

 日本に亡命したいと望むウクライナ人を自衛隊機が迎えに行き、それと引き換えに義勇兵を送ればよいのではありませんか。いろいろ制約はあるとは思いますが、非常事態の行動ならば、何とかできる方法もあるでしょう。

 何にしても今、この時も戦争を続けているウクライナに対して、手をこまねいて支援をためらっている姿は決して良いとは言えません。もし日本が今、人道支援のために自衛隊機を派遣して、医者や医療機械、食料を持って行ったなら、ウクライナ人は大いに助かるでしょうし、ロシアの戦意は大きく失われることになります。直接自衛隊が戦わなくても、支援できることはたくさんあるはずです。

 

 プーチンさんは自国の軍事力を信じるあまり、ネットの威力を見誤ったのでしょう。ネットの素早い対応に、ロシア軍は追いついていないのです。その点、ウクライナの大統領のゼレンスキーさんの方が、画像の使い方ははるかに上手です。

 彼は自分の置かれている立場を常に語り続けていますし、諦めずに戦い続けている姿勢は世界中から賞賛を集めています。軍事力ではロシアと比べたら10対1だと言われているウクライナ軍ですが、日に何度もゼレンスキーさんが動画で励ましている姿勢が好感が持たれ、兵の士気も下がっていません。

 凄いことです。これでロシアが撤退することになれば、ゼレンスキーさんは現代の英雄になるでしょう。いや、そうあってほしいと思います。

 それにしてもプーチンさんは、これまで数十年ロシアのために活動してきた成果を、今回の侵攻で一遍に壊してしまいました。今回の侵攻さえなかったなら有能な政治家として歴史に残る人であったろうに、人生の最後の最後で大きなミスをしてしまいました。時代を見誤った政治家はこうして落ちて行くのだと言う恰好な見本となったのです。

続く