玉ひで公演中止
今月19日に予定していた玉ひで公演は中止することになりました。オミクロンの影響でお客様が集まらないことが原因です。誠に残念です。
3月以降は通常通り公演いたします。既に3月19日の公演をお申し込みのお客様が何人かいらっしゃいますが、ご安心ください。必ずいたします。
この2年間はコロナの被害(と言うよりも実際には風評被害)のお陰でほとんどの公演が失われています。この時期に、世間の皆様は、パーティを催すことがなく、ましてや、そのパーティーにマジシャンを呼ぶことをしません。そうなるといかな芸能人でも出演のチャンスは発生しません。
今から5年前でしたら、私は年間80回、蝶を飛ばしていました。蝶を一回飛ばすためには3枚の半紙を使います(破った半紙がつながる演技で2枚使い、蝶の手順で1枚使い、合計3枚使います)。すると年間で240枚、他にリハーサルや、練習もしますので、約300枚半紙を使います。
私は通常、半紙を一締め(1000枚)単位で買っていますので、1000枚の半紙を3年で消費します。然し、この2年間、半紙の消費は減り、およそ3分の一になりました。
私の書斎の左側には、蝶に関係する消え物(使うと無くなる物)を入れる引き出しがあります。一番上には半紙。二番目には伸びる紙の帯や、吹雪、撒き(滝)。三番目には無煙線香。四番目には蝋燭。五番目には化学薬品。仕事が忙しいときには引き出しの中身がどんどん消えて行きます。然し、コロナ禍では、一締めの半紙は二年間経っても半分も減っていません。
それでも、わずかながらも半紙が減ったのは、毎月一回、玉ひでの公演があるからです。そして私の自主公演が年間7~8本あります。プラス、イベントがあり、テレビ出演などもあります。そうした活動すべて合わせて、半紙は去年一年で150枚くらい消費しました。冷静に見て、これが私の年間に蝶を飛ばす最低ラインなのでしょう。
それでも私は、ほかの仕事をしないでも生きて行けますので、まだ恵まれていると言えるでしょう。コロナ禍で苦労しているのは私だけではなく、芸能に生きる人すべてが甚大な被害を受けているのですから。
芸能が弱い職業であることは重々承知していますが、それにしても弱過ぎます。じゃんけんなら、グーはパーには負けますが、チョキには勝てます。負けることはあっても勝てる相手があります。芸能は何に対しても勝てません。
じゃんけんをする仲間の中に入って、グー、チョキ、パーに混ざって指一本出すようなものです。指一本が何なのだかわかりません。指一本ではグーにもチョキにも勝てません。
コロナ駄目、不景気駄目、
昔、名古屋の大須演芸場の社長が、雨の降る日に空を見て、「こんな雨じゃぁ、お客は来んなぁ」。と、ぼやき、また、晴れている日には、「こんなに天気がいいんじゃぁ、みんな行楽地に行って、演芸場には来んだろうなぁ」。と言ってぼやいていました。私が、「そうならどんな天気ならお客さんが来るんですか」。と尋ねると、「そやなぁ、朝雨が降って、出かけようとしたお客さんが出ばなをくじかれて、昼から晴れて、晴れたならどこかに行こかと思ったが、遠出ができんから、演芸場でもいこかなんて言うときはお客さんが来るなぁ」。
と言ったので、私は思わず吹き出してしまいました。そんなうまい日が年間何日もあるわけがありません。そんな都合のいいことを考えているから、大須演芸場にお客さんが来ないのです。
それでも、去年は幸い国の支援や、杉並区の補助金などがあって、自主公演を開催することは出来ました。
それとても、補助金を受けながらも、観客は半分にしなければいけないとか、せっかくチラシを配布しても、感染を恐れて出歩かないお客様が多く、なかなか人が集まりません。かつてのような賑わいは望めません。
我々は常日頃、どうやって人をたくさん集めるか、と言うことに腐心します。ところが、今は、コロナ禍にあって「なるべく人を集めないように」。と言われます。
あからさまに人を集めるなとは言われませんが、そう言っているも同じで、補助金を頂き、支援されながらも、人を集めるなと言われては、マッチポンプと同じことです。片方でセーブされ、片方で補助金を垂れ流しています。
こんな状況が正しいわけはなく、全く無駄な活動を強いられています。
マジシャンの中にはネットで演技を配信している人もいます。ネットを利用することは今の時代に合致して、それなりの効果があると思います。然し、実演の芸能がネットで間に合うなら、初めから我々は会場費を支払って、スタッフを配して、リハーサルをして、公演などしないのです。
生の舞台の面白さを伝えたいからこそ公演をしているのです。映像の中の世界でいいなら、実演は死滅します。
実演の面白さは一瞬先に何が起こるか予測できないことです。どんな名人が出ても、万が一の失敗もあります。逆に予想もしなかった大感動が生まれることもあります。私自身も、「今日の舞台は人生で一番よく出来た舞台だった」。と舞台後に、楽屋でしみじみ感慨にふける時があります。何千回舞台に出ていても、満足できる舞台は生涯でほんの数回です。
その稀有な一回に遭遇するために、日ごろから舞台を続けているのです。同時に、ご覧になっているお客様も、その一回を自身の宝物とするために、舞台を見続けています。
そんな一回限りの舞台の面白さを伝えたいがために、毎回公演を続けています。これはビデオやDVDでは語れないのです。ましてやネットに演技を配信しても、それはセミの抜け殻のようなもので、抜け殻を指してセミであるとは言えません。
生の舞台の面白さは、臨場感にあります。出演しているタレントを見る面白さプラス。自身が座っている周囲の観客と感動を共にすることで、自身の感動も高められます。後になってあの時のショウの何が面白かったのか。と考えても、答えが浮かばないことが多々あります。
そうなのです。生の舞台の面白さは一回きりの面白さなのです。同じことを同じように出来ている演技を見ても、あの時の感動は二度と再現できないのです。あの舞台に感動したお客様と体験した、あの空気感はもう戻っては来ないのです。それゆえに生の舞台は価値があるのです。
と、私がいくら偉そうに書いても、舞台の好きなお客様なら百も承知でしょう。そうです、そうした感動を私は創り出したいのです。それが出来ない日々がもどかしいのです。あと半年、あと一年、その先には何とか光が見えてくることを願っています。
続く
明日はブログを休みます。