手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

大阪から東京セッションへ

大阪から東京セッションへ

 

 大阪、福井と舞台を終え、ようやくひと段落をしましたが、ほっとする間もなく、今週末12月5日(日)には東京の峯ゼミがあり、この間にも、来年1月8日9日開催の、東京ヤングマジシャンズセッションの申し込み、コンテストの参加者のビデオ審査など雑務がたくさんあります。

 いろいろやっているうちにヤングマジシャンズセッションはすぐにやって来ます。チケットは既に130席ほど売れています。2日間の公演で420席ですから三分の一ほどが出たことになります。いい流れです。

 

 大阪も、東京も、大学のマジッククラブや、社会人のマジック活動がコロナによって壊滅的な打撃を受けています。

 このまま何もしなければマジック愛好家の数が激減してしまいます。大学などはクラブ存続も危うくなっています。現実に、マジックにかかわる活動はどれも駄目です。

 多くのプロマジシャンは活動休止状態です。実質廃業している人も多いのではないでしょうか。仮に来年半ばに公演活動が出来るようになったとしても、その時、プロとして活動して行ける人は半減しているのではないかと思います。

 マジックショップは売れていません。コンベンションも活動休止状態です。コンベンションはコロナ以前から、そもそも高齢化が進んでいましたから、活動が再開されたとしても、この先は、大きく参加者を減らすことになるでしょう。コロナ以前に、これまで若い人を取り入れるための対策を取ってこなかったことが大きく響いています。

 高齢化は全国のマジッククラブでも深刻な問題です。マジッククラブの例会は少しずつ再開されているようですが、参加者の数は芳しくないようです。この先はよほどにリーダーシップを持った人が上手く運営して行かない限り、クラブの存続は難しいだろうと思います。

 

 そうした中で東京と大阪のマジックセッションが果たす役割は少なからず重要になってくると思います。先ずショウの内容を充実させて、レベルの高いマジックを維持して行かなければなりません。

 本来は、欧米や、韓国の優れたマジシャンも加えてショウの番組を作って行きたいのですが、恐らくこの先一年は海外マジシャンを招くことは不可能でしょう。

 そうなると、国内マジシャンの充実を第一に考えなければならないのですが、現実には、日本で実力のあるマジシャンはわずかです。少しでもセンスの好い、技量のある人が出て来たなら引っ張り上げて出演してもらいたいと考えています。

 然し、黙って人が出て来るのを待っていても時間がかかりますので、そこは狙って人を育てなければいけません。少なからず気になるマジシャンがいたなら、なるべく声をかけて引っ張り出したいと思います。我と思わん人は私に連絡をください。

 

 コンテストは、東京も大阪も、来年から始めます。コンテストを開催することで出演の場を提供することがまず第一です。然し、出る場を作ることが人を育てるわけではありません。

 フィードバックに時間をかけて、各演者に、「マジックとな何なのか」。「観客が何を求めているか」。を伝えることが大切だと考えています。自分が演じたいものイコール人が見たいものになっていないことが、マジックの世界が多くの観客を持っていない最大の原因なのですから。

 フィードバックを通して、基本的な考え方からマジックをする人たちに伝えて行かなければなりません。

 同時に、コンテスタントが、コンテストを通して仲間を作って、影響され合って学んで行く環境作りをしないといけません。。マジックを練習することも大切ですが、仲間を作る、お客様を作って行くことはもっと大切なことです。マジシャンとして成功するには、自分一人がマジックの技法を身に着けるだけではどうにもならないのです。飽くまでも芸能は客商売なのですから。

 

 そして峯ゼミです。幸い、この半年で、東京の峯ゼミは、参加者が、「学ぶことの大切さ」、を理解したようです。峯村健二さんのマジックの考え方はレベルがけた違いです。

 四つ玉を知り尽くした人が授業を受けても、知らないことがたくさん出て来ます。しかもその演じ方は細部まで計算されていて、曖昧さがありません。技法が一つ一つ科学されて、答えが出ているのです。

 氏の指導を見ていると、本当の日本のマジシャンの実力を知ります。今、日本の多くのアマチュアは韓国人を追いかけていますが、実は、韓国と日本のマジックレベルを比べたときに、韓国の基本的な知識や技術は明らかに薄手です。

 ごく一部の目新しい技法は認めても、基礎となる技術が薄いため、彼らの技法は汎用が効きません。韓国は極めて不安定な中での成功を手に入れたにすぎません。

 本来なら、やはり日本からでしか優れたマジシャンは出ないはずなのです。しかし現実にそうなっていないのはなぜか。それは日本人が日本の基礎知識を学ばずにわがままな演技をしているからなのです。

 峯ゼミは基礎知識ばかりを教えているわけではありません。むしろかなり難しい技法を教えていますが、それさえも基礎を土台として作られたものばかりです。

 東京の生徒さんは峯村氏の価値に気付いたようです。東京では来年2月からシルクの指導が始まります。申し込みは既にかなり集まっています。

 大阪では半周遅れて、やはり来年2月から、四つ玉の指導が始まります。参加すべきかどうか悩んでいる人がいるなら、是非とも参加して見て下さい。大きく人生が開けて行くこと請け合いです。

 芸事は自分一人で何とかしようとしても、どうにもなりません。自分だけで何かを考えていても同じことが頭をめぐるだけで、少しも進歩しません。まず自分が人に引き上げてもらわなければ、絶対に上手くはなりません。習うことは先人の知識を短時間にもらい受けることです。上達したかったら、有難くもらうべきです。

 

 セッションの舞台、コンテスト、峯ゼミ、この三つの活動が出来て、日本のマジック界は向上します。私は長いことこうした活動がしたかったのです。ようやく来年から私のやりたかったことが達成されます。さぁ、コロナに泣いてばかりいないで、前に向かって活動してゆきましょう。

続く