手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

大谷選手の時代

大谷選手の時代

 

 本当は今日(11月20日)、シトロエン一代記の3回目を書いて、シトロエンを終わらせようと考えていたのですが、昨日(11月19日)大谷翔平選手が、MVPを獲得したため、急遽内容を変えて、お届けします。シトロエン一代記はまた数日のうちに書きます。

 大谷翔平選手が、アメリカンリーグのMVP(年間最優秀選手)に選ばれるであろうことは、随分前から多くの関係者の間でささやかれていました。

 それゆえ、かくなりつるとは知りながら、いざ、発表されると、その実感はまたひとしおです。これは、日本人としての偉業ではなく、全ての野球選手の中での偉業と言えます。

 

 MVPと言うのは、アメリカンリーグナショナルリーグの両球団のチームの中から、それぞれ一名が選ばれます。その選出方法は、全米記者協会に所属する記者のうち30人による投票で、投票する記者は、名前を公表し、選手に与えた得点までも公表します。

 選ばれる選手は、優れた選手であることは勿論ですが、第一に、所属するチームに多大なる貢献をした、という実績を最も重視します。

 ことの発端は、1910(明治43)年に始まり、当初は優れた選手に自動車を一台プレゼントすると言うものだったのですが、翌年の1911年から今の形式になりました。

 つまり大谷選手は、110年に及ぶ歴史の中での優秀選手として選ばれたわけです。ちなみに、110年間の中で満票を取った選手は、19名で、全体の受賞者の約五分の一にも満たないのです。選ばれることすら至難な中での満票ですから、その功績は偉大です。

 過去には20年前にイチロー選手が受賞しています。日本人としては二人目の快挙です。

 この一年はアメリカのニュースを伝え聞いていると、全米で大谷熱が異常に盛り上がり、それに連れて、長らく低迷していた野球が、新聞や、テレビなどの話題に乗る機会が増えて来ました。

 観客動員も、はっきりと増加していて、特に大谷選手の絡む試合となると通常よりも二万人も多い観客動員を見せるようになりました。たった一人の選手の出現が二万人を集めてしまうのです。

 アメリカの球界としても、大谷選手の登場は待ちに待ったものでした。と言うのもアメリカの野球界は、フットボールや、バスケットボールの人気に押され、観客動員数も、テレビの視聴率も減少し続けています。このまま行ったなら、野球は今の球団も球場も維持することが難しくなると思われていたのです。

 ここらで何としてでもスターを作らなければならない、とは野球関係者もファンもみんなが考えていたことです。そこに現れたのが大谷選手です。アメリカ人の考え方として、これほどのチャンスを手に入れて、それをみすみす逃すようなことは考えられません。

 すべてのルールを書き換えてでも、大谷選手のやり良いように、球界が一丸となって大谷翔平と言う、大スターを育てて行かなければならないと理解しているのです。つまり、大谷選手の活動は、一球団の一選手を語っているのではなく、アメリカの野球界の浮沈が関わっているのです。

 

 土産売り場に置いてあるエンジェルスの赤いシャツは、17番の背番号だけは販売と同時に即完売です。相手球団の応援団までもが争って、大谷のシャツを買い求めます。どこの球団の観客席を見ても赤シャツ17番を着た子供が必ず映像に映ります。

 相手球団の応援をする子供たちが、エンジェルスのシャツを着ていることなどかつてあり得なかったのです。然し、それを誰も咎め立てできません。大谷フィーバーは止まらないのです。

 

 彼らはみんな大谷選手になりたいのです。白人の子供で、日本人をそこまで愛したことなど今までなかったでしょう。しかも、その両親までも、大谷選手の活躍を喜びます。

 なぜなら、大谷選手は人間として模範的な人物だからです。野球選手の中には、ホームランは打てても、薬物中道患者であったり、飲酒が元で暴力沙汰を起こしたり、子供のころ万引きをして家計を助けていたり、野球選手となって人気が出た後で、いきなり莫大な収入を得たことで、女性関係で乱れていたり、

 つまり、スポーツマンとして尊敬は出来ても、人間として模範的な生き方をして見せられない人もいたのです。それは野球選手に限らず、多くのスポーツ選手は、ハングリーな暮らしの裏返しでスポーツをしています。

 それは間違った考えではありません。然し、それゆえにアメリカではスポーツ選手を格下の生活者と見る人は多いのです。子供がスポーツ選手になりたいと言い出すと、半分は子供の夢を尊重しつつも、半分は早くその夢が覚めることを心の内で願う親は多かったのです。

 そうした中で突然出てきた大谷選手です。マウンドでのプレーの姿勢も素晴らしいですし、インタビューでの話し方も言葉を選んで、実に謙虚です。実際頭がいいのでしょう。

 身長も高く、顔立ちも少女漫画の主人公のようでさわやかです。その生活態度に暗い影がないのです。大きな車も買わないし、高級な衣装も買いません。ごく普通の生活をしています。そうした大谷選手に子供が憧れるなら、親は安心です。

 つまり大谷選手はアメリカ人の普通の生活をする家庭の中で安心して子供に見せられる野球選手なのです。

 

 全米野球ファンは来年の活躍に期待しています。恐らくこれからのアメリカの球界は、大谷の実績が原点となって、大谷を中心となって動き出すでしょう。

 但し、毎回申し上げますが、二刀流は危険です。今回MVP  を取ったのですから、これで一区切りとして、投手としての出番を減らして、自身の健康管理に注意した上で、打者に専念したほうがいいと思います。

 無理を重ね続けていると選手生命が早くに終わります。記録が出せなければ、ファンは簡単に離れて行きます。ここから先は何とか長い選手生命を送れるように、自己管理をして行った方がいいと思います。

 

明日はブログをお休みします。

 

今日の玉ひではお休みです。