手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

総理大臣

総理大臣

 

 明日(29日)総裁選挙が行われ、自民党の総裁が決まります。総裁はあくまで自民党の総裁であって、総理大臣ではありません。然し、日本の政治は、自由民主党議席数の過半数を占めていますので、自民党内で総裁に選ばれた議員は、国会内の総理大臣の選挙の際には、如何に他党の党首が立派な主義主張を展開したところで、圧倒的多数の自民党の総裁が自動的に日本の総理大臣に選出されます。

 日本で首相の国民投票による直接選挙はできないものか、とか大統領制度は作れないものかと言う人がありますが、それは、日本では不可能です。日本が天皇制を敷いている限り、大統領と言うものは存在し得ません。日本の天皇は、政治的にはまったく不関与ですが、依然として国の頂点にいることは事実なのです。

 こう言うと、「え、本当か」、と驚く人がいますが、例えば、外国の大使が来ると、皇居に参内して報告するのは、天皇が日本国の代表であるからです。また議会の開催に際して天皇が開催を宣言するのも、天皇が頂点であるからです。議会は天皇に変わって政治を執り行う組織と言うことなのです。

 首相も同じで、天皇に変わって政治を行う人が首相なのです。今でも王政を敷いている国では大統領は存在しません。実際の権力は持たなくても王様がいればその人が大統領だからです。イギリス然り、スゥエーデン然りです。

 首相とは別名宰相とも言い、皇帝や、王に変わって政治を執り行う人を宰相と言いました。プロイセン帝国の宰相でビスマルクと言う人がいましたが、鉄血宰相と呼ばれ歴史に残るほどの実力者だったのですが、皇帝の家臣ですから宰相なのです。

 ちなみにドイツには今も大統領がいます。しかしドイツの大統領はまったく政治的な権力を持ってはいません。まったく国際政治にも出て来ることはありません。飽くまで名誉職なのでしょう。実際にはメルケル首相が政治を仕切っています。

 今のドイツの大統領が何の用事があってドイツの大統領なのかはわかりませんが、プロイセン帝国の名残として、象徴として存在しているのでしょうか。

 

 首相が公選制になれないのは、王に変わって政治を執り行う人だからです。飽くまで任命権は王にあります。実際、戦前までの首相は天皇が任命していました。しかし戦後は民主主義の国になりましたから、首相は議会の選挙によって選ばれます。議会は多数決で決まりますので、多数の議員を占める政党の党首が首相になるわけです。議会によって首相は選ばれますが、それを天皇が追認して任命状を送っています。

 直接選挙ではありませんが、議員は国民が選んだわけですから、かなり民主的と言えます。然しです。然しながら、その自民党の総裁選挙が本当に民主的かと言えば、これまでも奇々怪々、謎多き選挙が繰り返されて、「えっ、なぜこの人が」、と思うような人が首相に選ばれています。つまり必ずしも国民が望む人が総理大臣に選ばれるわけではありません。

 実際、今の菅総理にしても、派閥の力学から選ばれたのであって、もし国民が直接選挙で首相を選んだなら、本当に菅さんを選んだかかどうかわかりません。

 いや、いい人であることは分かりますし、実際素晴らしい実績を残しましたが、国民が選ぶとなると、こうした地味な親父さんは選ばれないのではないかと思います。なかなかその良さが伝わりにくい人だろうと思います。

 今度の総裁選挙も、これまでの自民党の選び方からすると、各派閥の言うことをよく聞いて、調整役に回って政治を行うような岸田さんが一番票を集めそうに思いますが、どうも岸田さんでは物足りないと思っている人が多いようです。

 それは日本の政治がいたるところ金属疲労を起こしていて、そのまますんなり継承して運営したのではどこもかしこもうまく行かなくなってきているからだと思います。

 一般的な人気という点では河野太郎さんが人気がありますが、どうもこのところ、河野さんは総理になりたい思いが表に露出してしまい、何でも人の言うことを聞いてしまって、元々ご自身が持っていたポリシーを変えてしまう発言が目立ちます。

 政治は妥協の産物とはよく言いますが、それでも他派閥の実力者の言うことを何でもかでも聞いてしまっては、本当にしたいことが見えなくなってしまいます。これが吉と出るか凶と出るか、微妙なところだと思います。

 ぶれていないと言う点では高市さんは始めから全くぶれていません。靖国神社には参拝すると宣言していますし、憲法を改正して自衛隊国防軍にすると言うのも、尖閣諸島自衛隊を配備すると言うのも、当初から変わっていません。

 但し、そうした強気な発言にアレルギーを持っている人も多々いますので、国民がそこまでの変革を認めるかどうかが焦点です。

 ネットでは圧倒的に高市さんの人気が高く、ネットの中だけを見たなら次期首相は高市さんに決まりでしょう。ここで世の中の風が高市さんに吹くかどうか、かなりの大勝負だと思いますが、そうなったら大きく日本の保守政治の方向は変わるでしょう。

 

 元々自民党改憲を党の主題にしていた政党だったのですから、結党以来60年以上経ってその目的を達成させることになります。然し、自民党は自らの心の告白には臆病な政党です。

 国民がどう思っているのかをとても気にします。それゆえに60年も改憲をしなかったのです。ネットの思いと自民党の内部とはまた随分開きがあると思います。

 ましてや国民の考えはまた違うかもしれません。三者三様で、この先もまだ大きく変わる可能性があります。いずれにせよ、私ごとき何ら力のない、一介のマジシャンにとってはただ傍観するほかはありません。

 然し、絶対の主流になり得ないと思われていた、こてこてのタカ派高市さんのような人が、他の候補者と互角に戦うようになったと言うだけでも大きな進歩だと思います。総裁選挙は投票10分前まで票が動くと言います。投票箱はまさにパンドラの箱です。明日が楽しみです。

続く