手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

マジックマイスターなど

マジックマイスターなど

 

 マジックマイスター

 一昨日(4日)座・高円寺でマジックマイスターが開催されました。いつも出演される皆さんの参加が減り、随分メンバーが変わりましたが、若いマジシャンがたくさん出演されたため大変活気のある公演になりました。出演者が多いため簡単に感想を書きます。

 

 一部の司会はザッキーさん。喋りがこのところ冴えてきています。話している姿が育ちの良さを感じさせます。この先マジック界には貴重な司会者となるでしょう。

 一本目はサクさん。ウォンド、カードなど。ただ立っているだけでも雰囲気があって好印象。演技も工夫されていてとてもいい出来です。

 二本目は柳澤錦さんのロープ、シルク。シンプルな演技ながらまとまっていました。

 三本目は高木優希さん。白い四つ玉からカラーチェンジまで、きれいに手順がまとまっています。不思議さも何か所もあります。もう少しやり込んだら得意芸になるでしょう。

 四本目はU-sukeさん。田代茂さんの生徒さん。中学2年生ながら熱演。リングも、タンバリンもいい出来でした。

 五本目は、高橋正樹さん。奇術歴50年のベテランです。随分前にご当人が作られた「マジシャン」と言う音楽に乗ってカラオケマジック。楽しい演技でした。

 六本目は、戸崎拓也さん。いつも玉ひでで演じているコーンとボール。それにメキシカンロープ。手慣れています。でもそろそろ前後に変化が欲しいところです。

 七本目は早稲田康平さん。カードマニュピレーションはそつなくきれいにこなしています。そのあと喋りに入って、卵、レモン、ミカン、シルク出し。消して行くところはうまいものです。一部の取りにふさわしい演技。

 休憩

 二部、

 八本目は前田将太。グラス、羽根出し、テーブルクロス引き。グラス、羽根は気の効いたスライハンド。これを充実させたらいいアクトになると思います。そのあと出てきた素材でテーブルクロス引き。この工夫は良く出来ています。

 然し、ここで思いがけなくも無駄に長い喋りがだれました。セリフがつっかえる。笑いが滑る。拙さが露呈しています。もっと計算して話をしなければだめです。

 後半の司会はそのまま前田が致しました。

 九本目はザッキーさん。12本リング。喋りも上手く、リングもこなれていました。

 十本目はせとなさん。グラスとボールのコラボです。だんだんまとまってきました。でももう少し手順を大きくとらえて、芸能として見つめて欲しいところです。

 十一本目はスマイル藤山さん。富士から毎月習いに来ています。五色の砂。口上をしっかり覚えて古典の雰囲気をよく出して演じています。

 十二本目は藤山郁代さん。米と水、紙うどんの三段返しです。和服で口上をしっかり述べながらいい演技を見せてくれました。

 十三本目はカズカタヤマさん。コロナに罹って復帰、当人は瘦せたと言っていましたが、ちょうどいいです。元気で何よりです。いつものカードシルクのアクトと、お終いに小さくなるトランプ。マジックの原点ともいえるアクトをあえて演技のラスト見せるのはマジシャンの人生を凝縮しています。

 十四本目は田代茂さん。バーノンの五本リングを和服で演じました。これはこれでありでしょう。そのあと私の手順のお椀と玉、「アンパンどれ」の演技です。

 どうも少数のマジック関係者でこのお椀と玉を演じたい人がいるようです。私のセリフをそっくり演じたのは大阪の魔法の愛華さんと、私の弟子だけでしたので、これもまた珍しいと思います。無断使用するのでなくて、ちゃんと習ったのですから結構です。

 十五本目は私。二つ引き出しと蝶。さて蝶を演じる際に舞台上が異常に風の強いことに気付きました。いつもは空調を止めて演じるのですが、この日は舞台中強風が吹いています。

 あとで理由を聞くと、コロナの換気をする都合で空調は切れないのだそうです。それにしても、上から空気圧がかかって、蝶が高く飛びません。

 久々やりにくい舞台でした。仕方ありません。そんな日もあるのです。と、こうして18回目のマジックマイスターは終了しました。

 終了後、軽く焼鳥屋さんで一杯やって帰りました。もう少しいいところで呑みたかったのですが、どこもやっていません。朝の8時からずっと稽古を立ち会ったりして、少し疲れました。アルコールが入ると実に気持ちが良くなりました。

 

 パラリンピック終了

 昨晩(5日)。パラリンピックが終了しました。閉会式は素晴らしいショウでした。伝統芸のないのが寂しかったですが、やむを得ません。ブレイクダンスなどが出て派手でした。

 圧巻は、百人くらいの人がひな壇に座って、体は黒服、腕だけがそのまま出ていて、指揮者に合わせて腕でパフォーマンスを演じました。全員が奇麗に揃って、何気ない動きがとても美しく、感動的でした。お終いは腕で2024パリと描かれてしゃれていました。

 画像は同時にフランスのパリの中心街が映りました。背景にエッフェル塔が建っています。フランス人がたくさん集まって、日本の閉会式を見ています。そしてフランスの芸術家も広場でアクロバットを見せてくれます。

 画像がワイドになってパリの街並みが映し出されて、これで終わるかと言いきや、エッフェル塔の足の一本が不自然なデコレーションがしてあります。よく見ると、大きな義足になっています。

 「あぁ、そうか、これはパラリンピックだったんだ」。随分しゃれた演出です。と同時にとてもインパクトのある表現方法です。改めてフランス人のセンスに敬意を表したいと思いました。

 オリンピックも、パラリンピックも、東京で開催してよかったと思います。随分感動の場面を見せてもらいました。アスリートの皆さん、パラリンピック関係者の皆さん。いいものを見せてくれて深く感謝します。

続く