手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

緊急事態宣言延長は無意味

緊急事態宣言延長は無意味

 

 さて緊急事態宣言が効果を見ないため、またぞろ延長の可能性が濃厚になってきました。然し、延長は無意味ではありませんか。そもそも1年4か月の間で3度の緊急事態宣言と言うこと自体意味がなかったように思います。

 昨年二度の緊急事態宣言をした結果、よき方向に進み、何とか解決かと思った矢先に、イギリス型の変異ウイルスが大阪方面で繁殖し始めました。そこで、今年に至って三度目の緊急事態宣言がなされたわけです。然し、正直三度目は多くの国民はうんざりしていたと思います。二度の緊急事態宣言で効果がなければ、ロックダウンする以外なかったのではないかと思います。

 ただし、私はロックダウンも緊急事態宣言も反対です。なぜかを問われるまでもなく、時短制限や、開催中止は、強制も自粛も、社会崩壊を招くからです。現に倒産している企業や、廃業する芸能人は続出しています。芸能に関するならば、芸能人は勿論ですが、芸能をサポートする立場の職業がもう生活維持して行くことが不可能な状態になっています。

 芸能をサポートする職業と言うのは、芸能プロダクション、劇場、音響さん、照明さん、大道具さん、小道具さん、貸衣装屋さん、皆さんほぼ無収入になってしまっています。どれも芸能がなければ成り立たない職業であり、自力でショウを作り上げることのできない立場の人たちです。メインとなって仕事のできない人たちばかりですから、仕事が発生しなければ、たちまち生活が成り立たなくなって行きます。

 芸能の催しが出来ないと言うと、出演者にばかり光が当って、芸能人に支援金が支払われる場合は多々ありますが、実際苦しいのは、芸能人以上にその芸能を周辺で支えている職業なのです。

 例えば私一人が舞台に立ってショウをする場合ですら、出演者、音響、照明、舞台方、道具の運搬、衣装屋さん、劇場、マネージャー、とたくさんの人の協力があってショウが成り立っています。こうした人たちに何も保証をしなければ、芸能は崩壊してしまいます。

 

 三度の緊急事態宣言をして、さらに延長をすると言う行為は愚行です。実際、東京だけ緊急事態宣言をしても、みなさん埼玉や神奈川に遊びに行ってしまうのでは効果はありません。電車に乗って30分も行けば、遊び場はたくさんあります。そうなら誰も不要不急を守って家に閉じ籠る人などありません。

 人の善意に頼るのも、二度までなら了解するでしょうが、三度、四度となれば善意にも限りがあります。ここから先は善意に頼るのではなく、国民生活の一切を国が補償して、ロックダウンする以外ないと思います。

 そしてオリンピックを想定してコロナを封じ込めようとするなら、今からロックダウンをしなければ七月のオリンピックに間に合いません。オリンピックを絶対に開催したいのなら、緊急事態宣言の延長などしている場合ではないのです。

 

 このままでは最悪の状態に陥ってすべてが失われて行く可能性があります。最悪の状態と言うのは、国民が国の言うことを信じなくなった時です。こうしてだらだらと効果の薄い緊急事態宣言をし続けていること自体が、国の信頼を失いつつあります。これではコロナも退散出来ず、オリンピックの開催も難しくなるでしょう。

 世界の流れでいうなら、これまでロックダウンをしていた国々が今、ロックダウンを開放し、どんどん観光や飲食店が復活を始めています。そんな時に日本だけがまだうろうろ右に左に迷走しています。

 冷静に見たなら、今の日本の感染者数ならば、欧米と同様に、既に快方に向かっていると考えていい数のはずです。もともと日本の感染者数は欧米よりずっと少なかったのですから。ただ心配なのは大阪だけが依然と感染者が多いことでしょう。イギリス型のコロナウイルスが、この先猛威を奮うのではないかと心配する医師はたくさんいます。ここを重く見たなら、おいそれと緊急事態宣言を開放するとは言えないのでしょう。

 そうなるとこの先どうするかは私のような素人の判断では何の役にも立ちません。ただ少なくとも、このまま緊急事態宣言を延長するのは愚策だと思います。やるならロックダウン以外ないと思います。

 

 なんにしても、私の人生でも今が最悪の事態になっています。今までいろいろな苦難に直面して来て、その都度何とかしのいで来ましたが、今回のコロナに関してはどう工夫しても、よい方法が考えつきません。

 数百年前にペストが流行ったとき、二百年前にコレラが流行ったとき、百年前にスペイン風邪が流行ったとき、その時代に生きていた人はみんな悩んだはずです。こんな時こそ芸能に生きるものは、何か人に希望を与えなければ行けません。何か面白いことをして見せなければいけません。どうしたらいい、何をしたらいい。悩みは頭の中をめぐるばかりです。

続く