手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

オリンピックはどうなる

オリンピックはどうなる

 

オリンピック騒動

 さて、森さんがオリンピックの東京大会の会長を辞任したと思ったら、今度は川渕チェアマンが、「正規の手続きを踏んでいないから」と言う理由で不支持になりました。きっと一昨日から、川渕さんに各方面の関係者からたくさん電話が入ったのでしょう。みんなの勝手な言い分を聞いるうちに川渕さんもやる気をなくしたのでしょう。せっかく有能な人材がいながら、みんなでつぶしているのです。つまり、森さんと言う重しが取れたら、一斉に、みんなが勝手に動き出したのです。

 ネットでは「密室でことを決めるのは許せない」。と言っていますが、一見もっともな言いようですが、その実、日本人の本質を理解していません。この国は昔から密室でことを決めているのです。現実に総理大臣ですら密室の会議で決まっています。投票はつじつま合わせに過ぎません。投票の前には誰が総理大臣になるかは決まっているのですから。

 密室会議でことを決めて、その時に選ばれなかった人には別の役職を与えて納得してもらう。そうやって八方気を使って、まとめて行くのが日本式のやり方です。これを否定して騒いでいる人は、初めから選ばれる可能性のない人です。

 それでも、まとめ役がいなくなればみんなが勝手に動き出し、終止がつかなくなります。但し、今は密室であれ何であれ、すぐに適任者が決まって活動を止めないことのほうがオリンピックの開催には有益なはずです。日本人は一体自分たちをどうしたいのでしょうか。

 気の毒なのは川渕チェアマンです。二階に上がって梯子を引かれたと同じことです。馬鹿を見た川渕さんがオリンピック会長を断るのは当然です。日本はこんなことを繰り返していていいのでしょうか。

 

 我々は民主主義が最も優れた政治のあり方だと考えています。然し、民主主語は過去に何度も、起こっては消えを繰り返しています。民主主義の後に、帝政が生れたりもします。人は民主主義を経験しておきながらなぜ帝政を支持するのでしょうか。それは、民主主義が時として衆愚政治に陥るからです。

 人の話を聞くと言うことはいいことですし、多数決でものを決めることは一見正しく、平等な考えに思えますが、それは人が善意で、誠実に民主主義を行った場合のみ有効なのです。無責任な人たちが、根拠のない、我ままな自己主張をしたりすると、政府はその人たちの意見も聞かなければならず、彼らをなだめるために、無駄な補助金を出したりするようになります。

 それがいつしか、声高にものをいう人の理屈が通って、真実が曲げられて行きます。第二次世界大戦時のナチスを思い出してください。ドイツ人ほど頭のいい民族が、なぜナチスを支持して、民主主義から、帝政に逆戻りしたのですか。ナチスは遠い昔のことではありません。わずか90年前のことなのです。

 私の親父などは、如何にドイツ軍が強くてかっこよかったか、子供だった私に何度も語って聞かせてくれました。親父は子供のころさんざんにニュースなどでナチスの行進を見たのでしょう。親父にすれば帝政ドイツもヒトラーも憧れの存在だったのです。

 多数決が正しいと言うのは実は大変に危険なことなのです。例えば、裕福な人と貧しい人の数は、どっちが多いかと言うなら、圧倒的に貧しい人のほうが多いのです。その貧しい人が、みんなで「金よこせ」と叫べば、政府は金を出さざるを得なくなります。そうなると政府はいくら税金を集めても配る金のほうが多くなり、金が不足します。

 ローマ帝国の時代、ローマ市民の支持を得るために、帝国政府が連日コロセウムで猛獣と人との戦いをしていたのも、祝日が年の半分にまで膨れ上がったのも、市民をなだめて票を求めた結果です。

 それでもローマが拡大して、新しい領地からどんどん年貢が入って来る内は、政治の矛盾が見えなかったのですが、いざ領土が縮小を始めた時に、サービスが低下することでローマ市民が不満を言うようになります。政府は市民の不満をなだめるために、放漫な財政支出を繰り返します。結果としてこれがローマ帝国の滅亡につながります。

 これをローマのことだからと聞いていてはいけません。今の日本は、或いは先進国は、このままで大丈夫ですか。毎年税収以上の予算を組み、福祉や、年金や、保険に際限なく税金をつぎ込んで、しかも、まだ福祉を、年金をと言っている現状は、ローマ帝国のそれと同じではないのですか。

 さて、更に市民のわがままを許す危険な存在が生れました。ネットです。ネットで声高に叫べば、オリンピックの開催会長まで辞任させてしまいます。もう怖いものなしです。でも、よく考えてください、そうして力を持っ人たちがその先、何がしたいのですか。熱意あって仕事している人たちの些末な失敗を騒ぎ立てて、つぶしたとして、その先にどんな時代が来るか、お分かりですか。

 有能な人が、善意でことをして世間から攻め立てられれば、何もしないことのほうを選びます。熱意ある人、有能な人は、自然自然と今の世界から離れて、隠遁生活を送るようになります。衆愚政治とは、結局人から熱を奪い、無気力な世界を作ってしまうのです。以前私が書いたように、ローマ人が何となく目がトローンとしていて、覇気がなかったと歴史家が言っていたことと同じ、この先能力ある人が諦めるような時代に陥ってしまう可能性があります。そんな時代が世界中に訪れた時に、ネットはどんな力を持って、どんないい世界を作るのでしょうか。オリンピック騒動を見て、そんな事を感じました。

 

 

マジック指導 

 さて、今日は、午前中と午後とマジックを習いに来る生徒さんが来ます。今まで誰が来るのかを書いていましたが、名前を書くと、SNSツイッターなどで生徒さんを中傷をする人がいます。全く何の役に立たないことを向きになって非難する人がいるのです。かつてそうした人を愉快犯と言いましたが、どうもその延長の人が、ネットにはびこって、嫌がらせをしています。

 私はブログを善意で書いていますが、その善意が人に悪影響を与えるようなら、閉鎖しなければなりません。 誰もかれもが不可解な人たちではありませんが、なかなか善意を理解しない人がいることが危険です。書き手である私が注意して書かなければいけません。とにかく、今日一日は指導をします。

 

玉ひで神田明神

 来週20日(土)は、玉ひでの公演です。半年以上開催を続けたおかげで、毎月お客様の予約が絶えることがありません。有難いここと思っています。そして、22日(月)は、久々ですが神田明神の江戸っ子スタジオで、落語、曲芸を交え伝統芸能を開催します。詳細は東京イリュージョンの掲示板をご覧ください。

 私は、3月には入院をします。そのため、3月の玉ひで公演は私はお休みします。代わりに、大樹が公演します。若手はいつもの通り出演します。3月のチケットはもうかなり売れているようです。観覧ご希望の方はお早目にお申し込みください。

 

続く