手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ビゥレットトレイン(弾丸列車)3

 今日(17日)は人形町玉ひででの公演です。毎月一回若手マジシャンと一緒にショウをしています。ただ、いつもの演技をするだけではマンネリになってしまいますので、半分は内容を変えてご覧頂いています。今回は、袖卵と五色の砂を出します。

 「袖卵」は過去には随分される方がいらしたのですが、最近はあまり演じる方を見なくなりました。私自身は、若いころに覚えはしましたが、およそ舞台に掛けることはありませんでした。たまに自分の会で演じる程度のものでした。

 実際演じてみると、道中のハンドリングは面白いのですが、卵が一つずつ出るだけの手順で、どうにも盛り上がりに欠けます。5分程度かかる手順を実際演じてみると、どこに演技の重点を置いていいのか、ちょっと困ってしまうような演目です。

 その昔なら日がな一日のどかに手妻を見て楽しむお客様を相手に、演じるほうも、のどかに演じて、それでよしとされたのかもしれません。然し今の若い人が見たならあまり面白いものとは思わないかもしれません。そのため私は、もっぱら袋卵の方を良く演じていました。

 それが数年前、帰天斎正華師匠から帰天斎流の袖卵を習い、面白いと思いました。袖の表からも裏からも卵が出て来ます。いちいち裏と表を二回ずつ改める必要がない分スピーディーです。更に私なりに袖卵に改良を加えました。その上で演じてみると、結構面白い作品になったので、今では時々演じています。

 さて、その袖卵を昨日、久々に稽古をしました。やってみるとうまく行きません。結構難しいのです。このところの私自身の物忘れもあって、手順が止まること度々です。

 結局半日、袖卵に関わってしまいました。でもやっているうちに、「あぁ、いい手妻だなぁ」。と改めて思いました。全く演じないのは勿体ないなと思いました。そこで今日演じてみます。

 五色の砂は、大本は中国の奇術だと思います。19世紀ごろ西洋に渡り、西洋でも時々演じられています。日本にも江戸時代初期に入ってきたようで、よく演じられていました。私は口上を手直しして喋りながら演じています。この口上は、20代半ばに作ったもので、基本的にはそのころから変わっていません。

 砂を説明して行く前半が、話術の能力を必要とします。後半は、砂が出て来る面白さと、水の色変わりで変化を見せますので、マジック的にも受けのいい作品です。もっともっと頻繁に演じられていい作品だと思います。

 このほかに、柱抜き(サムタイ)金輪、蝶、を演じます。30日には、ヤングマジシャンズセッションがありますので、演技が重ならないよう、配慮しています。

 

ビゥレットトレイン(弾丸列車)3

 結局私は50年間新幹線に乗り続けています。新幹線が日本の経済に果たした役割は計り知れないくらい大きなものだと思います。古くは明治政府が、いの一番に手掛けた仕事は、郵便、電信、そして東京大阪間に鉄道を敷くことでした。

 

 東京、大阪、神戸間の600㎞がつながったのは明治22年です。当初は20時間かかりました。それでも歩くことを思えば大変に便利だったのです。新幹線ができる前の東京大阪間は、特急こだま号が走っていました(今のこだまとは全く違う列車です)。こだま号に乗って大阪に行くのに、約7時間かかりました。子供のころの絵本には、こだまが颯爽と走る絵が載っていました。これが当時の日本では最速の列車だったのです。

 今から考えると550kmの距離を7時間で移動すると言うのはずいぶん遅く感じますが、未だに世界の国々の大都市間を結んでいる列車と言うのは、これくらいの時間をかけて移動するのは普通です。

 東京大阪間の移動に7時間かかると言うのはビジネスに生かすには難しい時間です。往復14時間かけて、大阪に行き、そこで8時間用事をするのはかなり無理があります。往きか帰りのどちらかを夜行列車にしなければ無理でしょう。然し、夜行を使うと翌日の仕事に響きますから、結局一晩大阪に泊まって翌日帰るようなスケジュールになるのでしょう。かつては大阪出張も一泊させてくれたのでしょう。

 これが3時間になれば、多くのビジネスマンは日帰りで仕事ができます。実際吉本の芸人は新幹線が出来たことで、毎日のように、東京大阪間の新幹線に乗って、テレビやイベントの仕事をこなしています。私でも毎月数回新幹線を利用しています。

 新幹線が出来た当初、東京大阪間は3時間10分かかっていましたが、今は2時間30分で行けるようになりました。この2時間30分と言う時間はいろいろと便利です。マジックのアイディアを考えたり、手紙を書いたり、パソコンを出して企画書を書いたり、ブログを書いたり、このブログも多くは新幹線の中で書き溜めています。少し疲れると、焼売弁当を食べたり、コーヒーを呑んだりしています。何にしても軽いデスクワークができると言うのは幸いなことです。

 もちろん飛行機も利用しますが、東京から西に行くことを考えた場合。四国は飛行機を利用します。山陽線は、広島までは新幹線を使います。広島より西は飛行機を使います。九州は無論飛行機です。北は、大概新幹線を使います。八戸、青森は飛行機も使います。北海道は飛行機です。金沢はかつては飛行機を使いましたが、今は新幹線です。

 天一祭で毎年伺う福井は通常は、新幹線で米原まで行って、そこから特急に乗り換えます。この乗り換えがいつもせわしなく、道具を持っていると、階段の上がり降りに苦労します。これが数年のうちに金沢から福井まで延びるそうですが、新幹線でつながったらマジシャンにとっては大変便利です。早くそうなることを願っています。

 今現在でも、朝、東京を立って、昼前に福井に入り、天一祭を済ませて夕方6時くらいに福井を立ち、10時過ぎに東京に戻っていますから、新幹線が出来れば、往復で2時間くらいゆとりができるでしょう。早くそうなると有難いと思います。

ビゥレットトレイン終わり