手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

知ると知識は違います

 明日は踊りの浴衣浚い(ゆかたざらい=仮発表会)です。コロナの影響で、夏に催していたものが今になってしまいました。場所は、不忍通りふれあい館、(文京区、根津2-20-7)14時30分から開催です。入場無料です。素人さんのお浚い会ですから、無料は当然です。私は二番目の出演です。お暇でしたらお越しください。あまり期待をしないでください。

 

 10月3日は、大阪道頓堀、ZAZAでの大阪マジシャンズセッションです。峯村健二さん、黒川智紀さん、キタノ大地さん、私、前田、他、プロアマ一緒になっての公演です。これもコロナの影響で、春の催しが10月になってしまいました。何とか年に一回でもマジックの催しができるように奮闘しています。よろしかったらご支援ください。お申し込みは東京イリュージョンまで。

 10月30日の東京ヤングマジシャンズセッション。こちらは、伝々さん、峯村健二さん、私、前田、ほか学生の精鋭、またはOBが出演します。いいメンバーですのでこちらもご参加ください。

 10月の玉ひでは、17日です。親子丼を食べながら、若手のマジックショウを見ます。後半は私の公演です。ちなみに、11月は21日、12月は19日です。

いずれも東京イリュージョン、info@tokyoillusion.co.jp、5378-2882まで。

 

知ると知識は違います。

 この数年はクイズ番組に東京大学の学生や、京大の学生が多数出演して、クイズ番組を制覇して、テレビ局内では流行にさえなっています。回答者は相当に多くの本や雑誌を読んでいて、一度読んだ物は能にインプットされていて、全て記憶をしているのでしょう。全く驚くべき脳の容量です。私などは、一日5個か10個の記憶をしても、晩にはすべて綺麗に忘れ去っています。

 知っているということは何かと便利で、優れた才能だとは思いますが、その能力は認めた上で申し上げますが、知っているということは知識ではありません。知ると知識はどう違うのかと言うお話をします。

 

 実際、クイズ番組のようにあらかじめの答えから逆算した問題に対して、それに答える能力は、記憶力のいい人が勝るのはその通りですが、社会で生きて行くうえで、記憶力のいい、悪いは実はあまり重要な能力ではありません。

 日常に起こる問題は、答えのわからない難問が山積みです。それに対してどう解決するかに個人の能力が試されます。知識であるとか、経験であるとか、答えを見つけだす直観力であるとか、未知な分野から解決策を見出す様々な才能が求められるのです。

 そこで知識についてですが、知識がただ知っていることなら、識と言う文字は必要ありません。知っているということが学問になるのは、識があるからです。識とは何か。

識の文字は、言遍(ごんべん)に、音と矛(ほこ)です。似たような文字で職業の職は、耳遍に音と矛です。織物の織は糸遍に音と矛です。

 共通している音と矛は何を意味しているのかと言うと、縦横、つまり経緯(けいいはそもそも縦横の意味)です。職業の職のたて糸経は、(その道の歴史や未来、後輩の育成や、新作の開発など、歴史と将来を見据えた活動)を理解して行動すること。それに、緯は、(仲間とのつながり、商売の相手先との付き合い)、これが横糸です。それら両方を理解して活動することで職業が成り立っています。

 織物の織るも、同じで、たて糸と横糸を編んでゆくから、布地が生まれます。知識の識も同様です。知っているというだけでは知識になりません。知っていることから法則を見出して、未知なる問題から答えが出せてこそ知識なのです。

 

 例えば、山手線の東京駅の南側の次の駅は、有楽町です。東京の人なら誰でも知っています。でもこれは知識ではありません。生活上知っているだけなのです。なぜなら、東京の次が有楽町だと分かっても、有楽町の次がどこの駅かは、有楽町からは割り出せないでしょう。同様に、大阪の環状線の玉造の駅の次の駅はどこかと問われたら、東京の人は答えられないのです。すなわちこれは知識ではないのです。

 数学の数式は、ルールを理解すれば、はるか先まで計算ができます。数式のルール、これが知識の経緯なのです。物事を、単に知っているか否かだけなら、動物の多くはいろいろな経験から物事を知っています。人間はそこから経験を超えた予測を見出す能力があることです。

 音遍に矛は元々は「印す」と言う意味だそうです。印すとは何かというと、バッテンを意味します。昔の人は山歩きをしているときに、来た道を見失わないように、道の木々に印をします。その時の印と言うのは、バッテンのことです。なぜ人がバッテンを印すかと言うと、獣が木を傷つけるときは、さっと一筋引っ掻くだけです。器用な獣がいてバッテンをすると言うことはまずないのです。バッテンとは何か目的があってする行為なのです。すなわち人間の仕業です。

 バッテンを描くことで人間は目印を見出したわけです。このバッテンこそが後に経緯に発展し、知識になって行きます。

 

 私は東大生がクイズに出て、その知る能力で人気者になることは素晴らしいとは思いますが、見方によっては才能の無駄遣いだと思います。また多くの日本人が、東大生の知っている、とか、記憶力だけを誉めそやしてしまうことは極めて危険なことだと思います。こんなことで世の中が渡って行けるなら、東大生にとって社会はちょろいものです。

 然し、世界的に見ても日本の大学の学力が大きく下がっています。知っていることは立派でも、それが、知識につながっていなのではないか。ゆえに世界の評価が低いのではないかないかと、私はクイズ番組を見て一人で勘繰っています。

 

 マジックの世界を見ても、韓国や、台湾が力をつけてきていることは事実ですが、韓国も、台湾も、国際情勢如何でいともたやすく崩壊する可能性を秘めた国です。香港なども現実にこの先香港と言う自治国が残るかどうかも分かりません。その動向を決めるであろう中国は、アメリカと犬猿の仲です。この先アジアがどうなるのか。このことはFISMが、無事開催されるか否かと言う問題よりも大きく、我々の生活にも影響する大問題です。

 この先5年以内にアジアで局地戦争は起こるでしょうか。北朝鮮は破れかぶれな原子爆弾を発射するでしょうか。韓国はこの先経済が破綻したら国が維持できるでしょうか。香港の今の困窮を世界が助けてあげられますか。仮に香港が崩れた時に、台湾はどうなりますか。アメリカは本気で台湾を助けますか、中国と全面戦争をしますか、その時日本は黙って見ていますか。或いはアジア、中東などで大きな戦争に発展する可能性はあるのでしょうか。その時日本がどう対応したらいいのでしょうか。

 恐れ入りますが、クイズに出演している東大の学生さんにご意見をお伺いしたいところです。

続く