手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

近頃都にはやる物

 時は室町初期、建武の新政の頃、鎌倉幕府を倒した後醍醐天皇が直接政治を行うということで、日本中の国民が諸手を挙げて歓迎したのですが、その実態は、公家によるお手盛り功章ばかりが先行し、鎌倉以上の混乱が続き、こんなはずではなかったと、人の期待は見事に外れました。その頃、都に落首(らくしゅ 詠み人のわからない、世相批判)が町に貼られ、余りに銘文なので瞬く間に人々に語り継がれて今日までも伝えられています。かなりの長文なのですが、余りに面白いので初めの所だけここに述べます。

「此頃都にはやる物 夜討 強盗 謀綸旨(にせりんじ、嘘の天皇からの命令文)

召人(めしうど 雇われ人)早馬(火急の国元への連絡) 虚騒動(そらさわぎ 謀略の御家騒動)生頸(生首 晒された人の首)還俗(げんぞく 過ちを犯して坊主になった者が勝手に坊さんをやめる)自由出家(責任を逃れて勝手に坊さんになる)

俄大名(にわかだいみょう 勝手に大名になる)迷物(まよいもの 常識を誤った人)安堵 恩賞 虚戦(そらいくさ 戦に見せかけた謀りごと)

本領はなるる訴訟人(地元の政治そっちのけで領地争いばかりする武士)文書入りたる細葛(ほそつづら 自領である証拠の入った資料を入れたつづら)追従(ついしょう おせじ)ざん人(ひとをおとしめる)禅律僧(禅寺の訴訟を扱う役所ができたが、これが怪しい)下剋上する成出者(成りあがり者)」

 と、世の中の乱れを七五調の調子のよい言葉でつないでいます。これだけの文章が書ける人は、相当な知識人で、太田時連という官僚の作と言われています。太田時連さんには到底かないませんが、私も古の文章になぞらえて、ちかごろ都にはやる物を書き連ねて見ました。面白かったらお知らせください。

 

「近頃都にはやるもの コロナウイルス空騒ぎ マスクメーカー 消毒薬 ティッシュペーパーにトイレット ペーパーまとめて買い占めか 即席ラーメン レトルトカレー ネット用いてコメ販売 レンタルビデオに宅配便 俄YOUTUBERに俄ブロガー

  地方のパチンコ大当たり デリヘル連れ込みホテルは大盛況 

 不安をあおるテレビ局 感染者の数を示して完治者語らず 病院の実態知らない医学関係者 お陰で病院崩壊寸前 無責任なるコメンテーター 都知事の暴走非常事態宣言 逃げ腰総理に地方知事 金がないとは結論か 

 町は閑散閑古鳥 商店街はゴーストタウン 飲食店は倒産寸前 芸能人は飢餓状態 旅行会社は虫の息 飛行機会社は鳴かずに飛ばず 旅館ホテルはお化け屋敷に衣替え 夏になったら納涼大会で巻き返し

 観光地には人もなく 大型連休望み薄 補償の金は二転三転 出すなら今出せ早く出せ 早く出さなきゃ人が死ぬ コロナで助かり失業で死亡 どっちに行っても殺される

 助ける神も見当たらず 頼みの言葉はただ一つ そのうち何とかなるだろう