手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ディレクション、ミスディレクション

 マジックの技法で、ミスディレクションと言う心理的な技があります。これは本来の英語の意味とはかなりかけ離れた意味で使われている言葉で、マジックでは頻繁に使われる技法です。まず、ディレクションですが、これは本来の意味は方向を意味します。テレビ局にいる、ディレクターと言う人は、番組を制作するリーダーのことですが、ディレクターと言う言葉の意味は、方向を指示する人の意味です。

 航海をしていて、マストの上で、双眼鏡を持って遠くを眺めている人、あれがディレクターです。人よりも先の見える人、そこから発して、一つのプロジェクトを統括する人などをディレクターと言います。まずこのことをご記憶ください。

 次に、マジックのミスディレクションについてお話しします。ミスディレクションは、本来の意味は、ディレクターが立てた方針が間違っていたり、予想に反した方向に進んだ時がミスディレクションです。

 しかし、マジックの場合は、かなり意味合いが違います。意図して間違った方向を作り上げ、人の注意を別方向に集めているすきに、本来の目的、すなわち種を取って来たり、既に持っているものをどこかに処分して、観客が気付いたときには消えている。と言った結果を作り出すための心理誘導をミスディレクションと言います。

 ミスディレクションが技法として使われるようになったのは、おそらく明治の末頃からではないかと思います。当初、ヨーロッパやアメリカのマジシャンが使い始め、技法として使われ始めた当初は、かなり強烈な作用で観客が誘導されたため、多くのマジシャンがこぞって使いました。

 日本では明治の末年か、大正期に海外に渡った、松旭斎天二石田天海によって伝わりました。天海師はミスディレクションを「誘導策」と訳しました。直訳ではないにしろ、マジックの技法としては的を射ています。今でもミスディレクションは現役の技法として使われていますが、DVDの普及などで、単純なミスディレクションは、簡単に読まれてしまうため、強い効果は望めなくなってきています。

 私が子供の頃、病院に行くと、擦り傷は全部赤チンと言う薬を塗って直したものですが、今は病院から赤チンを見なくなりました。病原菌が強くなって、赤チンでは利かなくなったのでしょうか。どうもミスディレクションは、病院での赤チンの運命に似たものなのかもしれません。

 

 話があちこちに移って、私の言いたいことが曖昧になっています。何が言いたいのかと言うなら。私は、今回のコロナウイルスの問題は、マジックで言うミスディレクションなのではないかと勘繰っています。大して危険な病気でもなく、拡散する可能性に少ないウイルスであるにもかかわらず、これほど世間が大騒ぎして、世界全体が不況に突っ込んでゆくのが明らかなのに、なぜみんなして無謀な行為をするのか。

 それが何であるか、私にはわかりませんが、今、コロナウイルスで世界が大騒ぎの状況は、実はコロナウイルスを撃退するための活動が目的ではなく、もっと大きな問題のためのミスディレクションすなわち「誤誘導」なのかもしれません。そうだとしたなら、背景にある問題を早くに察知して、「危ないぞ、コロナに関わっているうちに、この先こんな風になるぞ」。と誰かが知らせる必要があります。

 どうも、毎日のテレビの報道を見ていて、「コロナウイルスが、これほど毎日、テレビ局が特別番組を作るほどの問題だろうか」。と。疑問を持ちます。加計問題や、お花見問題を隠すにしては、隠し方が大袈裟です。実はもっと人に言えない何かがあるのかもしれません。それも、世界中が、同様に大騒ぎをしているところを見ると、問題の根は世界的な大問題なのかもしれません。

 何にしても、マジシャンが手に持ったリンゴ一つを消すだけなら、45センチのハンカチ1枚あれば足りるはずですが、今回はりんご一つに10m各のハンカチを使っています。これならリンゴは消えますが、同時にマジシャンまで消えてしまいます。こんなに大袈裟にハンカチを使って一体何をするのだろうと、マジシャンはいぶかしみます。

 私はこれが第一次大戦の前夜と類似した、危険な状況にならないことを望みます。

 

 昨日、浅草麦とろで20人のお客様が集まりまして、私の手妻をご覧になりました。7時きっかりに20名がそろい、会が始まりました。お客様は目の前の手妻を喜んで見て下さり、食事も、麦とろさんがずいぶんサービスしてくださって、スズキの焼き物(スズキの塩焼きは、適度に脂が乗っていて、上々の魚でした)や。煮物、上げトロなど、たっぷりの食事で素晴らしい内容でした。

 ただし、麦とろさんもお客様がなかなか集まらないらしく、苦労されているようでした。コロナウイルスもそうですが、浅草は観光に来る、中国人や、韓国人が激減し、どこの土産物屋さんも、レストランも、青息吐息の状況です。これは、京都も、大阪も同じで、これまで活況を呈していた観光地がどこも閑散としています。

 

 こんな時にどうしたらいいか。ここを工夫するのが、ディレクターの才覚です。人が方向を見失った時、一人マストの上に立って、先を見つめるディレクターが必要です。

観光地は、今は外国人が来なくなったお陰で、どこも静寂が戻っています。今、神社仏閣に出かけると、ホテルでも新幹線でも、簡単に予約が取れますし、観光地は混雑することなくゆっくり見て回れます。じっくり見て回りたい人には大チャンスです。

 観光客が減ったなら、落ち着いてみられることを売りにしたらよいでしょう。京都でも浅草でも、今、来てくれるお客様を大切にもてなせば、きっと長いご贔屓になってくれます。いつ来るかわからない外国人ばかりを追っていても、また同じことが繰り返される可能性があります。もう一度、根の生えた落ち着いた商売に立ち返って考えたほうがよいのではないかと思います。

 

 私は、4月18日に、人形町玉ひでで、お食事と手妻のショウをします。また、神田明神エドッコスタジオで、4月10日、17日、24日とお食事付きで手妻のショウをします。更に4月25日には大阪で若手マジシャン10組集めてZAZAでマジックセッションと言うタイトルでショウをします。更に5月8日には東京の座高円寺で、同じくヤングマジシャンズセッションを催します。

 こんな時期に立て続けに公演をして大丈夫かと心配する仲間もありますが、私がやらなければ誰もしません。人がしてくれるのを期待して待っていても、一向に前に進みません。私の弟子や、一門、マジックに熱心な若手マジシャンが、わずかでもショウに関わって生きて行けるように、私が率先してマジシャンが出演する場を作って行かなければならないと考えています。心配をする必要はありません。私はマストの上に上って将来を見ています。安心をしてください。将来は明るいです。手妻師の言うことは間違いありません。