手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

アマチュアマジッククラブ3

 すみません、昨日は用事が多く、ブログが途中で、発信できませんでした。昨晩は、東京の料亭の超高級版の築地身新喜楽で日本中の新新聞社の新年会に出演いたしました。

この件はまた面白い話もあるので明日お話しします。

 私が何もブログを書いてもいないのに、読者が、300人以上も、チラチラ覗きに来たようです。有難いです。期待していただけることは光栄です。そこでアマチュアマジッククラブの続きを書きます。

 

 アマチュアマジッククラブの生態についていろいろ書きました。個人が私物化したクラブと言うのは発展がありません。会長が老化すれば、会員も老化し、やがて自然消滅してしまいます。しかし、だからと言ってもう駄目だと考えるのは間違いです。クラブを立て直すことはいくらでもできます。30人程度の組織なら、自分に協力してくれる有能な仲間が3人もいれば、楽々立て直すことはできるのです。

 実は、私も、1991年にSAMの日本組織を立ち上げて、閉鎖的な日本のマジッククラブに風穴を開けようと、日本中のアマチュアに声をかけて、700人の会員を集め、SAMのリージョン組織を立ち上げました。

 これは日本のアマチュア団体に新たな情報を送り、コンベンションの案内をし、日本各地の指導家を送り、開かれたマジック活動ができるよう配慮しました。SAMの設立は、日本のマジック界にとってとても大きな意義があったと思いますが、同時に問題をいくつか抱えてしまいました。

 SAMの組織の中に、旧勢力の会長がかなりの数、参加して来ていたのです。彼らは自分のしていることを認めてもらう意味で、SAMに参加してきました。我々は各地域の細かな情報は知りませんので、来るもの拒まずで、みんな会員にしました。しかしこれが後々、あまり交わってはいけない人を取り込んだりして、地域との軋轢を生みました。

 ある地方の会長は、SAMに所属して、自分一人コンベンションに参加して、その情報を会員には知らせません。毎回の機関紙は自分が読むだけで、会員に教えません。SAMへの加入も認めません。自分一人が道具を買い求め、レクチュアーを受けて、毎月の指導に使います。SAMの組織が、会長の指導の仕入れ先になっているのです。これでは家元の会長をより強固にしてしまっています。

 世の中のために良かれと思ってしたことでも、逆効果もありますし、うまく行かないこともあります。私はSAMを運営して、つくづく、マジックの社会を改革することの難しさを知りました。

 わたしは、古い組織を否定する気持ちもありません。老人たちからその既得権を奪えば、少なからぬ争いになります。依頼心の強い、会員と支配欲の強い会長は、ある意味、これでどこかでバランスがとれているのかもしれません。そうであるなら、私が関与して何かをすることはむしろ間違いなのかもしれません。ここに関与することに何か意味があるのか疑問にすら感じてしまいました。

 

 もちろん今の組織に不満な方は、新規にクラブを作ってもいいのです。若い仲間が30人も集まれば、すぐにでも組織はできます。ところが、多くの若い人は、ネットで既成のクラブや、コンベンションや、ショップを批判しますが、自らが行動に出ないのです。いくら今の組織を否定しても、次なる入れ物がなければ、多くの会員は困ります。代案がなければ何も進展しないのです。誰もあなたに奇術界を批判しろとは言っていないし、自分で組織を持たない人が周囲を悪く言っても、力とはならないのです。何かを成したいのなら、まず仲間を集め、日々、月々、仲間と一緒にマジック活動をすることです。話はそこから始まります。

 そうした人たちの中から私に協力を求める人も出てきます。 私はネットで周囲の悪口ばかり言っている人の話は一切聞きません。協力してくれと言っても行きません。私が気持ちを動かす動機は3つあります。

1、当人に責任感があるかないか。

2、一つの行動を長く続けているかどうか、

3、そこに良き仲間がいるかどうか。

 この三つを確認した上でない限り、私が協力することはありません。

 マジックの世界で何かを成したいなら、まず責任ある行動を示さない限り人は信用しません。こうしたことはマジックがうまいかどうかとは別次元の話です。人として、仲間を大切にし、地域社会に貢献し、マジック界に貢献する人は立派な人なのです。

そんな人なら、言われなくてもこちらから協力を申し出ます。

 前項でお話ししたとおり、家元になったクラブの会長も、もとは立派な人だったのです。しかしひとたび、クラブから利益をあげるシステムを作り出すと、マジック界の癌になってゆくのです。どうしようもない前近代的な親分子分の組織を作ります。

 

 さてこの話はまた明日にいたします。