手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

初踊り 初マジック

 昨日は新年会、カズ片山さん、ケン正木さん、北見翼さん、一門の和田奈月、石井裕、いろいろな仲間がやってきて、夜9時半にはねづっちさんが来ました。人数は5年前に三分の一程度でしたが、部屋のサイズが縮小した都合で、元々多くの人に声をかけられませんでしたから、ちょうどよい人数で、気の置けない仲間とじっくり酒を飲んで、食事をして、真(まこと)に楽しい一日でした。

 

 さて今日は、日本舞踊の下ざらいで根津に行きます。そのあと浅草に買い物に行って、夕方世田谷のタウンホールで催される、ハウスと言うタイトルの若手のショウを見に行きます。すなわち今日が、初踊り、初マジックです。いいですね、正月の松の内に舞踊や、マジックを楽しめるのは幸いです。

 特にハウスと言う企画のマジックショウは期待しています。鈴木大河さんや、岩根祐樹さんの演技を久しぶりに見ます。どんなふうに発展していったかが興味です。今回の演技を見ることで、FISMアジアの演技が見えて来るでしょう。

 

 そのFISMアジア大会ですが、今年は釜山での開催です。私は、この大会がうまく開催されるかどうかが心配です。今、日本と韓国の関係が悪化しています。韓国の誤った政治判断が、日本政府を怒らせています。韓国が政策を改めない限り、この先日本の経済制裁に発展しかねません。そうなると韓国の経済は最悪になり、韓国も苦し紛れに報復措置をとるようになるでしょう。関係はますます悪くなります。加えて、アメリカと韓国との関係も悪化しています。今以上関係が悪くなって、韓国国内の米軍撤退と言うようなことになれば、すぐにでも朝鮮戦争の勃発にもなりかねません。

 「まさかそんなことは」、と思う人があると思いますが、北朝鮮は今や食糧難、石油不足などで経済が切迫しています。毎月のように威嚇してくるミサイルは単なる脅しではないはずです。自国がいよいよどうにもならなくなればイチかバチかの勝負に出るはずです。その勝負時がいつかと言うなら、米軍が撤退したときです。米韓の関係悪化は必ず北朝鮮と韓国の戦争につながります。そうなってはFISMのアジア大会は開催不可能です。

 さらに香港の情勢が安定しません。中国が香港に軍隊を出動して、市民のデモを武力で制圧すれば国際問題に発展し、英米対中国の争いになるでしょう。「まさか、中国がそこまではしないだろう」。とは大方の見方ですが、実際ウイグルでは軍が地域を制圧しています。反対分子を全て投獄しています。中国は一度自分の領土にした国は、国内問題として、外部の国に意見を言わせません。すべて自国のやり方で問題を処理します。香港も例外視はしないはずです。そうなると香港国民は海外旅行もままならない状態になります。

 同様に、台湾も中国とにらみ合いを続けています。台湾がこの先、アメリカや日本寄りの行動をとれば、中国はすぐに制裁を加えるでしょう。直接戦争にはならなくても、経済的に大きな打撃になります。

 

 こんな状況の中で釜山のfISMがうまく行くかどうかは何とも言えません。悪くすれば開催不可能、あるいは、参加者を大きく減らす可能性は大きいと思います。

 こんな年には、むしろ、政治の安定している日本が最悪の状況を想定して、釜山が開催不可能になった時には善意の手を差し伸べて、日本で開催できるようにすべきです。

 開催すべきですと断言しましたが、言うは易く行うは難しです。実際には日本の国内のFISM代表組織がずいぶん体力を落としています。多くの組織がサークルのメンバーの高齢化などで人が少なくなってていたり、リーダーが不在であったりと、簡単にアジア大会を引き受けられる組織はないのではないかと思います。日本は10年も前から、リーダーの交代時期を誤ってしまいました。

 私は今年は多くの地域、あるいは多くの世界各地で、マジックの催しをして行くことに問題が生じると考えています。逆に考えて、今までのように何の問題もなく、毎年、あるいは三年に一回、マジックの大会が開催されてきたことのほうが奇跡だったのかもしれません。およそ世界中で戦争のなかった時期はなかったわけで、これからはいろいろな地域で紛争が起こって来ると思います。

 芸能芸術は、政治や経済が安定していなければ発展しません。衣食が満たされた上での芸能です。どんな不幸な時代でも、面白く楽しい世界を作って見せることが我々の仕事です。世の中がどんな最悪な状況になっても、一人一人の心の中に「世の中捨てたものじゃない」。という希望を提供することが芸術家のあるべき姿なのです。案外、今年こそがマジシャンにその真価を問われる年になるのかもしれません。