手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

マジック仕事始め

 さて今年もマジックの活動が始動します。私の場合は、毎年、一年間の舞台活動と指導が既に決まっています。舞台が、神田明神が10本、人形町玉ひでが12本、これは毎月一回出演しています。リサイタルや自主公演が6本。他にも、毎年出演している、九奇連や天一祭などがあり、その他に依頼を受けた舞台が既に10本ありますので、30数本はもう決まっています。

 それに指導が東京と大阪、名古屋、富士で毎月6日間、年間72本ありますので、舞台と合わせて110本の日程が決まっています。それに、これから飛び込みで来るパーティーや座敷、テレビの仕事の依頼が合計で30本以上はあるでしょうから、140本が年間の仕事になるわけです。これで私と家族、弟子が生活しています。

 決して安楽に生きているわけではありませんが、さりとて、明日からどうやって生きて行こうかと悩むこともありません。有難いことに、私はこれまでもずっと、日々生活してゆくことに苦労することはありませんでした。生活とは言っても、舞台に上がることと生活することが直結していると言う認識はありません。

 舞台は、私の得意芸と言われている従来の手妻、マジックを演じることで収入を得ているのですが、別段派手な売り込みをかけるわけでもなく、毎年必ず一定の仕事の依頼が来ます。それは全体の活動の中で四割程度の日数になります。そのほかに、舞台と同程度の日数で指導があります。この両方の活動が私の仕事のメインです。

 更に、新しい手妻、マジックを工夫して、それを自主公演や、リサイタルで発表することにもかなり時間を使っています。自主公演はほとんど収入にはなりません。然し、自分自身を前進させるためにはとても大切な活動なのです。

 いずれ別項で詳しくお話ししますが、多くのマジシャンは、一度作り上げた手順を変えることなく30年以上繰り返して活動しています。然し、それではいつか世の中の流れから遅れて行きます。普段からマイナーチェンジを繰り返していないと時代から取り残されてゆきます。更に5年、10年という節目には新しい手順を持たなければ必ず仕事は減ってゆきます。今は私の演技の定番となった水芸も、蝶のたはむれも、あるいは、傘手順も、瓜植術やおわんと玉、一里四方取り寄せなどなど、すべて自主公演を通して節目節目に発表していったものです。それら作品によってはとんでもない金額をかけて作ったものもありますが、そのどれもが私の財産として今も役に立っています。

 もし、自主公演がなかったなら、私はとっくの昔に消え去っていたでしょう。更に、自主公演は自身の創作活動に大きなインスピレーションを生み出します。自分の手順としては不向きなアイディアでも、生徒さんや弟子の手順つくりに役立てることができます。私が50数年かけて覚えたマジックの蓄積は、誰もがそう簡単に手に入れられるものではありません。それを自分自身の演技に生かし、また若い人やアマチュアの皆さんにもお分けすることが、私のマジック活動の一つです。多くの人が私を求めてくれる限りこの活動は続きます。こんなことが50数年繰り返されています。

 

 今年は、玉ひでと言う料理屋さんで、30人のお客様を集めて、お座敷で見る手妻を味わっていただこうと考えています。座敷でゆっくり食事をしてから、手妻を見るのですが、かなり近い所でじっくり手妻を見ると言うのは格別です。蝶のたはむれなども致します。昔のお大尽が座敷に芸人を呼んで、じっくりと見たい芸能を独占して楽しむ醍醐味を令和の時代に体感していただこうと言うわけです。

 めったにない機会ですので、お仲間お誘いの上お越しください。毎月第三土曜日に開催いたします。

 

 秋には芝居を取り入れたマジックショウを公演します。日向大祐さんと、その仲間が一緒になって、マジックと演劇のコラボになった公演です。台本はあらかたできていますが、まだまだこれから内容を膨らませて行きます。私と日向さんがいかにかかわるか、かなり変わった芝居ができると思います。内容が好評ならば、日本全国の市民会館で公演して回りたいと思います。まぁ、そうなったら大成功ですが、いかがなことになりますか、今年じっくり時間をかけて、煮詰めてゆきたいと思います。公演の際はぜひともお越しください。

 

 実は私は26日に日本舞踊の発表会をいたします。場所は新橋駅前、内幸町ホールです。入場無料ですが、観覧ご希望の方は事前に私の方にお申し込みください。13時開演で、私の出番は二番目です。演目は「旅奴(たびやっこ)」です。清元の粋な節による洒落た踊りです。ご興味の方は info@tokyoillusion.co.jpまで。