手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

天一祭終了

 昨日夕刻に天一祭が終了し、深夜11時に東京に戻りました。さすがに4日間東京を留守にすると少し疲れが溜まり ました。今日はゆっくり休みたいところですが、文化庁の書類が残っていて、今日が締め切り日ですから何とか仕上げなければいけません。

 

 昨日の天一祭は120人の参加でにぎわいました。出演者は、私と、前田将太、ジュンマキさん、土井崇雄さんの4人と、福井のプロマジシャンのサイキックKさん、岡田透さん、masayoさん、ゲストのDrレオンさんと、多彩なメンバーです。今回の天一賞受賞者はレオンさんです。芸歴と言い、知名度と言い、妥当な受賞です。

 レオンさんと初めて会ったのは彼がまだ大学生の頃です。今から34年前のことでした。レオン(当時は坂井弘幸)さんは、無論アマチュアマジシャンでした。当時私は、渋谷にマジックキャッスルと言うパブを立ち上げたいと言うオーナーからの依頼で、ステージマジシャン2人と、クロースアップマジシャン2人、計4人のマジシャンを探していました。マジシャンの人選だけでなく、店のデザインからシステムまで私に依頼が来たのです。

 この時クロースアップに推薦したのが、Drレオン(坂井)さん、と前田知洋さんでした。彼らは学生ですし、いまだクロースアップはお金にならない時代でしたが、その時に日給8千円で雇ったのですから、彼らは喜びました。

 店は東急本店の向かいにありました。しかしビルの二階にあったため、通行人にはわかりにくい店でした。そこで、前田さんが夕方になると、ダンシングステッキを持って道端に立ち、ステッキを振りながら道行く人にチラシを配りました。これはかなり効果があって、徐々にお客様が増えて行きました。

 店は一年続きましたが、後半はお客さんが減少し、結果、閉店しました。しかしこの一年は彼らにとってはいい修行になりました。みるみる腕を上げて、その後各地でクロースアップを見せるようになってゆきます。そして二人とも大学を卒業するとプロのクロースアップマジシャンになってゆきました。ここからクロースアップが収入を得る芸能になって行ったのですから、渋谷のマジックキャッスルはエポックメーキングな場所だったわけです。私にとっても良き思い出です。

 

 masayoさんは、今年IBMのコンベンションでグランプリを受賞しています。地元の新聞社がどこも大見出しで、カラー写真入りで書いてくれました。お陰で福井県ではちょっとした有名人です。その演技を、私は、FISM国内コンテストなどで何度か見ています。今回、客席でしみじみ見たら、スピードアップされていて、不思議な個所も増えていて、格段に内容がよくなっていました。ずいぶん練習の跡が見えます。世間の評価も高まっていますし、当人の顔つきにも張りが出てきました。いい流れです。これからきっと舞台活動も上向いてくるでしょう。

 

 さて、天一祭もせっかく上向きになってきましたが、福井市は今回、毎年いただいている10万円の補助金をあっさりカットしてしまいました。なんということでしょう。

 10万円の補助金が、今年はもろもろの都合で7万円になったとか、6万円になったと言うなら致し方ないとも思います。それがゼロと言うのはどういうことでしょうか。もし市の職員が、「今年は市の予算が足らないから」、と言って、給料がゼロになったなら、職員は仕方ないと言ってあきらめるでしょうか。到底あきらめきれる話にはならないでしょう。

 そうなら、市の職員の給料をゼロにしないで、毎年開催している天一祭の補助金をゼロにすると言うのはどういう理由でそうするのでしょうか。私は、来年早々福井市に出かけて、補助金を再開してもらい、、今まで以上の補助金がいただけるように交渉しようと考えています。これまで、天一を福井の観光の目玉としたいと言う福井県や市の要望に応えるべく、書籍や、テレビなどで福井県福井市を宣伝してきた者としては、福井市天一祭の補助金10万円をそっくりカットしたと言うことは、納得がゆきません。このため、私が福井に行くことはやぶさかではありません。私にできることなら何とか協力したいと思います。

 できることなら、天一祭は、今以上に大きくして、マジックショウとコンテストの二本立てにしたいと考えています。プロマジシャンの出演の場だけでなく、なるべく若い人たちに出演チャンスを作ってあげたいのです。そうでないとステージマジックはどんどん世界が小さくなってしまいます。私がまだ元気に活動できるうちに天一祭の形を作り上げておきたいと思います。このブログをお読みの読者諸氏も、どうぞご協力をお願いします。

 

 さて11月29日は東京、座高円寺でビッグセッションです。これも全く私の私費で開催している催しで、国も、杉並区からの支援も受けてはいません。来年には文化庁の芸術文化支援事業の協力を得たいと、今まさにその申し込みの書類を書いています。今日一日はそのための書類作成で身動きできません。でも今私がやらなければ、誰もこうした活動はしないでしょう。それなら私の仕事です。そのセッションの出演者は、

 

 片山幸宏さんは前回FISMの第3位の実力を備えています。つい最近の香港のマジックコンベンションでも、優勝したと聞いています。やっていることはどれも不思議です。これをやり込んで、雰囲気をより濃厚にしてゆけば、芸術的な演技に仕上がって行くでしょう。何とか、今以上の独自の世界が作り出せるように、周囲も支援したいと思います。

 原大樹(ひろき)さんは、10代でラスベガスのコンテストで優勝し、デビッドカッパーフィールドに可愛がられて、アメリカで知名度を上げました。スピード感のある演技で、多くの海外のクライアントと大きなイベントを手掛けています。もっともっと日本国内のマジック愛好家は彼に注目し、支援してあげなければいけません。日本と言う幅を超えた、けた違いに大きく、有能なマジシャンです。ぜひ生の原大樹さんの演技を見てください。

 アキットさんはこれまでストリートパフォーマンスで地道な活動を続けてきました。しかしその実、彼は多くのマジックを研究していて、そのレパートリーの広さ、演技の個性など、同年代のマジシャンのレベルをはるかに超えています。コンベンションなどに出演してこなかったために、マジック愛好家ら話題になることは少なかったのですが、このところ急激に人気が沸騰しています。多くの愛好家には初物のマジシャンを見ることになるかと思いますが、今のアキットさんを見ることは貴重な体験と言えます。ぜひご期待ください。

 さらに、私と、ナポレオンズマギー司郎、三組のショウをご覧いただきます。三組は45年来の仲間です。今回、ショウのオープニングに、それぞれが45年前に演じていた懐かしい演技を再現します。そして対談。二部になってそれぞれの今やっている演技を披露します。あまり変わり映えしないと思われるかもしれません。いやいや、大きく進化しています。芸は年月が経つと、ウイスキーやブランデーのごとく、濃厚で、芳醇な香りが立ってきます。これは5年10年の芸歴のマジシャンで出せる味わいでは有りません。どうぞ、昭和の三組、令和の三組をそれぞれお楽しみください。