手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

継続は力

 今日は天一祭です。今から9年前、私が「天一一代」の書籍を刊行するために、資料集めに福井を訪れて以来、多くの方々と縁ができて、毎年福井を尋ねることになり。その流れで、福井県立こども歴史文化資料館の笠松館長を知り合います。この資料館は子供を対象にして、福井の歴史文化を伝えるために10年前に作られたもので、子供を対象にすると言う意味で、通常の博物館とは展示の仕方が大きく違っています。子供に体験させたり、文章で教えるだけではなくて、紙芝居で語ったり、芸能を実演して見せたり、遊ばせたり、遊びつつも自然に知識がつくように工夫をしています。このあたりが笠松館長の苦心のしどころです。

 そのため、マジックショウの実演などは子供の興味を集めるにはもってこいの企画で、毎年、天一まつりが開催されると、それに合わせて資料館も企画を立てて天一関連の資料を展示して、一日、私が資料館のマジックショウに出演しています。別の週には地元有志のマジックショウや、マジック教室も行っています。

 実際に、この資料館には天一の書やポスター、写真などが数多く残っていて、県立博物館と並んで、天一関係の資料が最も充実した博物館です。

 

 さて、そこで昨日は二時からマジックショウが催されました。資料館のホールは100人を超える親子連れで満員です。出演者は私の弟子の前田将太、大阪教室のジュンマキさん、土井崇雄さん、そして私の4名が手妻を演じました。間に地元のロイヤル山口さんが飛び入りで披露されました。かつては藤山大樹も弟子の頃は、毎年ここで、私の手伝いの合間に覚えて間もないマジックを披露していました。いづれにしても、マジックの実演を見るチャンスの少ない福井の子供たちには人気で、みんな楽しみに集まってきます。これを見ていた子供たちの中から次の時代のマジシャンが生まれるかもしれません。そう思うと決していい加減な舞台は出来ません。一回一回が人の心に残るような真剣な演技をしなければならないと思います。

 

 夜は料理屋に行って福井の魚を食べました。まずはせいご蟹です。せいごと言うのはズワイ蟹のメスの蟹のことで、オスとは違てとても小さな体ですが、抜群の味わいで、地元では大人気です。蟹味噌、身、卵、足、と、四種類の違った味が楽しめて、蟹好きにはたまりません。蟹味噌の海藻の香りを知ってしまうと病みつきになります。

 次に坪鯛の醤油麹焼き。鯛の身を濃い目の醤油たれで味付けして焼いたもので、この時期の脂の乗った坪鯛は別格の巧さでした。

 ブリの刺身、まずブリの大トロを食しました。見るからに脂が乗っています、しかし、マグロの大トロよりも脂がくどくなく、味が深く、高級感が漂います。そのあとブリの通常の刺身をいただきましたが、弾力のある身に、やさしい脂の乗り具合が酒好きにはたまらない魚です。

 そしてのどぐろの塩焼き。この10年で東京の人にこの味を知られたために、のどぐろの価値は上がりっぱなしで、今では高級魚です。高いと知りつつもこれを食べないと福井で魚を食べた実感がわきません。味は鯛の身よりも脂が乗っていて、金目鯛に似ています。身は箸で触るとほろほろほぐれます。白身ではありますが、たっぷり脂が乗っています。皮についた塩をひとかけ身に乗せて、一緒に口に運ぶと塩味と脂のうまみが合わさって極上の味わいです。あぁ、晩秋の福井はいい。

 ブリの兜焼きは、たっぷり身がついていて、みんなでむしゃぶりつきました。

 仕上げはおろしそば。福井では最もポピュラーなそば料理です。皿につゆも、蕎麦も、大根おろしも一緒に盛って、それをかき混ぜて食べます。わさびを使わず、大根の辛味で食べますが、これは消化にもよく、またさっぱりしているため蕎麦好きは何杯でも食べたくなります。

 こうして一通り福井の名物を食べると、福井に来たことを体で実感し、満足感に浸れます。何のかんのと言っても、食べたいものを食べて、好きなマジックをして生きて行けるのですから幸せ者と思わなければいけません。

 

 今日は朝は少しゆっくりして、午前中に天一祭の開催される繊維会館に入ります。出演者は、ドクターレオンさん、地元のマジシャンで、今年IBM大会のグランプリを取ったまさよさん、そらさん、サイキックKさん、そして昨日のメンバー4人です。チケットは完売ですが、席を増やしたため多少の追加はできるようです。初めは50人くらいの観客を対象に公演していたのですが、ようやくお客様が定着してきました。何事も継続は力です。午後から開始しますので、興味ありましたらお越しください。