手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

水芸をします

水芸をします

 

 コロナによって何度も開催延期され、今回もまた延期になりそうな状況でしたが、今日、めでたく水芸を開催する運びになりました。

 場所は、埼玉県蕨(わらび)市、くるるという劇場です。とても小さな劇場ですが、そこで会館主催の市民劇場を開催します。

 コロナ以来、水芸のような大仕事はまったく動きません。私のところでは年間5回6回の水芸の依頼がないと、事務所そのものが維持出来ません。この1年4か月は厳しい日々でした。先月30日に久々道具を出して、奈月さんと、みゆきさんとで水芸の稽古をしました。

 私は手順を忘れることはありませんが、女性陣は少し忘れています。セットも入念なチェックをしないと、本番にミスが出そうで心配です。それでもけいこができることでみんなが張り切っています。

 せっかくの催しですが、お客様を半分にしての開催です。入場制限をすることがいいことかどうか。私は意味があるとは思えません。そもそも、コロナをそこまで過大に考える必要があるかどうか。怪訝(けげん)に思います。

 日本全国の劇場、文化会館、市民会館の関係者は一連のコロナ禍でみんな苦労しています。数日前に、東京の寄席の席亭(経営者)が集まって、今回の自粛要請に対して、「自粛をしない」旨声明を出しました。「古典芸能は必要があるから今日まで続いてきたわけで、不要不急の催しではない」。と明確に伝えました。

 私は久々、席亭さんの存在の偉大さを再確認し、席亭の皆さんに拍手を送りました。今まで世間では、芸能をどうでもいい活動のようにとらえていたきらいがあり、政治家や、マスコミの言う、「不要不急の活動は控えるように」。と言う宣言に対して、真っ先に対象となるのが芸能だったように思います。演芸界自体の表立って否定しないため、「やはり不要不急の対象か」。と思われていたのではないかと思います。それに対してきっちり物を言ったことは立派でした。「あぁ、寄席といえども、いざというときには自分の立場を語ることは大切だ」。と思いました。

 そう思っていた矢先に、その発表の二日後に、「やっぱり休業する」。と、言いだしました。明らかに何かの影響が及んで、裏で取引があったのではないかと勘繰られるような展開でした。これもまた演芸の世界らしい結末か、と思いました。何とも弱い業界ですから、簡単に篭絡されてしまいます。

 

 然し、東京大阪と言った特定の地域だけ自粛要請して、それでコロナが封じ込められるでしょうか。東京の自粛は、埼玉県や神奈川県に買い物客や、観光客が拡散するだけです。本当にコロナを封じ込めたければロックダウンをする以外方法はありません。

 ただしロックダウンをしたなら、国民の生活を保障しなければいけません。そこで税金の投入をせずに、「自粛」と言う名で、国民の善意に頼っていては、いつまでたってもコロナははびこります。抜本的に解決しないと結局は何をしても徒労に終わります。

 とりあえずこれから劇場に行きます。

続く